靴擦ればかりの人生でも
用事があって、小6の娘と東京に行った。
ちょっとちゃんとした格好をしないといけない用事だったので、娘はいつもの運動靴ではなく、紐とかマジックテープのないシンプルな黒い靴で行く。
履き慣れない上に、サイズが少し大きく、とくに右足はしょっちゅう脱げる。
100円ショップで中敷きを買って入れたが、今度は中敷きがずれてかかとから顔を出す。
その度に、片足立ちをして、ピョンピョンしながら中敷きを直す娘。
ふらつく体勢。
転げる靴。
何度目だったか、転げた靴を履き直しながら、コンビニの前で、娘が言った。
「生きづらいわ~」
それは本当にあっけらかんとした口調で、苛立ちも悲哀も込められてなくて、だからこそ、なんだか私ははっとしてしまった。
白い服を着てるときに限って、カレーやケチャップや醤油をこぼす。
人や物にすぐぶつかる。
緊張すると不機嫌な顔になり誤解されてしまう。
自分が合ってるのに、自信がなくて他の人の真似をして間違う。
仲がよい友達でも、その子にとっての一番は自分じゃないから、「何か」の際に選ばれない。
何か大きなトラブルを抱えているわけではない。
号泣するほど辛いことがあったわけではない。
むしろ他の人からすると、「そのくらいのこと」と言われるような躓き。
でもそんな小さな躓きが重なると、なんだか生きるのがつらく感じる。
他の人は、同じ靴を履いていても靴擦れなんてせずに、スイスイ目的地に向けて歩いてるのに。
生きづらさって、そういう感じかも。
できれば靴擦れしないような人生に憧れるし、娘にもそんな人生を歩んでほしい。
だけど、それは難しい。
きっとこれからもたくさん、痛い思いをするだろう。
娘にぴったりの靴は用意してあげられない。
だからせめて、「嫌になっちゃうなあ」というぼやきを責めずに聞いて、また履き直すのを見守っていようと思う。
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