リーダーシップとセレブリティ
BTSが国連で演説して、アメリカでインタビューされて、Global Citizen's Live でパフォーマンスして、と怒涛のように時間が過ぎた。国連の演説は5年生になる娘に学校にやや遅刻させてもライブで見せた。彼女の好きな歌手たちが、彼女と同じような東洋人が、若くて国連というところで堂々と語ると言うところを見せたかったのだ。この世界には色々な人がいて色々なことが可能であると感じてくれればいいな、と思った。それはバイデン大統領の就任式を上の娘と彼女の友人たち(いずれも移民の子供たち)と見た時のような感覚で、私は別にバイデン大統領支持者ではないけれど、カマラ=ハリスと言う女性初でマイノリティの副大統領誕生を彼女たちの目の当たりにしたかったのだ。
唐突なのだけれど私はU2と言うバンドが好き。彼らの曲は恋愛ものからスピリチュアルなもの等色々あるのだけれど政治的なものもある。"Sunday Bloody Sunday" というのはアイルランド出身である彼らが1972年にイギリス軍による北アイルランドの民間人が殺された事件のことを歌っているし、Pride (in the name of love)ではマーティン=ルーサー=キングJr.牧師の暗殺のことを、またWalk On ではミャンマーのアウン=サン=スーチー氏のことを歌っている。ボーカリストのボノとその妻のアリーは長年にわたってアフリカの貧困問題にも取り組んでいて、One Campaign と言う貧困対策を行うアドヴォカシーを始めた。今回UNのTwitterをフォローしていたらふとOne Campaign と言うのが出てきてU2のことを思ったわけです。彼らもSDGの達成を支持しているらしい。
ミュージシャンが政治に関わるなんて、と言う声もあるのかもしれない。でも影響力を持つ人たちがその影響を自分の信じるもののために良い方向で使って何が悪い、と思う。リーダーシップを一言で言うと影響力だ。逆に言えば影響力を持つ人はリーダーと言える。と言うことは自分はリーダーじゃないと思っていても誰かに影響力を持つ人は皆リーダーなのだ。例えば親は例外なく子供にとってリーダー。とてつもなく大きな影響力を持つ人気のあるミュージシャンがその影響力を使ってこの世界を良い方向に変えていこうとリーダーシップを発揮するのは良いことだと思う。そのメッセージが彼らがまず音楽を通して伝えていたメッセージと一貫したものであったときに、説得力のあるものとして私たちは受け止めることができる。U2のメッセージは常に弱い人、抑圧された人の立場、尊厳を守るものだった。彼らもまたBand Aid, Live Aid と言う飢餓救済のコンサートに参加している。
政治的なものに関わらないで済むと言うのは平和で恵まれた国であると言うことなのかもしれない。アイルランドと言うイギリスから常に抑圧されてきた国出身の彼らにとっては政治と生活は分けてられないものなのではないだろうか。生活の中に政治的なものが常にあると言うか・・・。娘たちが以前やっていたアイリッシュダンスは手を使わず、腕は常に体の横に添わせている。それはアイルランドの文化をイギリスが禁止した時に、窓の外からみて踊っていることがわからないようにするためだった、と言う説がある。
韓国も政治的な国なんじゃないかな、と思う。近代史を見ても大統領の暗殺、軍政、光州事件、もちろん北朝鮮との関係等、私が思い出す限りでもこれだけあるのだから、韓国の人にはもっとあるだろう。政治的にならざる終えないというか。。まあ実際はわかりませんが。でもBTSの『Ma City』という曲ではジェイホープ(光州出身)が光州事件のことを歌っている。アメリカのインタビューでそのことに触れられた時に、「自分たちの歴史の一部だと思うので」と答えていた。そういう国で生まれ育った彼らがリーダーシップを発揮して政治的なメッセージを語るのは私にとっては不思議じゃない。
U2のもう一つ好きなところは彼ら四人が高校の時からずっと一緒でこの四人以外のU2は考えられないと言うところだ。 音楽のスタイルは少しずつ変化させてもこの四人は45年間ずっと一緒だった。BTSもそうなるといいな、と思う。音楽のスタイルは変化しても基本的なメッセージとメンバーの関係がずっと一緒で、影響力を持ち続けてくれたらいいな。