ジンさんと森進一さんとウィリー=ネルソン

と言う三題噺みたいなタイトルになってしまったけれど・・・。ジンさんの"Yours"とても良くて何回も続けて聞いている。こんなに何回もリピートして同じ曲を聴くことは滅多にないのでファンと言うことを差し引いてもすごく好きな歌なんだな。

以前からジンさんの歌に心が動かされていた。まず最初に聞いてとても心を動かされた”Truth Untold."。 最初は曲を書いたスティーヴ=青木がすごいのか?と思ったけれど何回も聞くうちに三人目に歌うジンくんのところで心の中で何かが訴えかけられているような気がした。もちろんヴォーカルラインは皆好きだし上手だと思うけれど、ジンさんのところでは何というか感情が揺れるのだ。韓国語はわからないし、歌詞の意味もわからずに聞いていたのにもかかわらず、だ。そして訳された歌詞を読んだときに泣いてしまった。同じように彼の歌、"Awake"を聞いた時もそうだった。当時仕事上での悩みを抱えていて、もう辞めようかなーと思っていたのもあって、この曲には泣かされた。"Abyss"では何というか「凄み」のようなものを感じた。そしてこの"Yours"...。ドラマ、”Jirisan"は5話目までしか見ていないのだけれど、この曲を聞くと何となく主人公二人を思って泣ける・・・。そしてジンさんの音域が広いせいで、男女主人公両方の感情がこの歌にはこもっているように思う。

以前に作家の林真理子さんがエッセイで森進一さんの歌が上手で、特に彼の日本語がとても綺麗で、言葉を聞いていると情景が浮かんでくると言うような事を書いてらした。私はジンさんの韓国語もそうなのではないかと思っている。私は昔から音が綺麗だと感じる言語があって、知っている限りではスペイン語が一番綺麗だと感じる。でも韓国語は正直に言ってそんな風に感じたことはなかった。でもジンさんが歌うと韓国語の音がとても綺麗に聞こえるのだ。(私は特に彼の歌うときのSの音が好き。激音のSかな?とても綺麗だと思う。マニアックですみません。)韓国語を母国語としている人にはどう聞こえるのだろうか?特にヘッドフォンで聞くとますます綺麗だな、と感じる。

超新米牧師だった時に"Preaching with Presence"と言う講座に送り込まれたことがあった。講師の人は神学校の説教学の教授ではなくて、政治家や歌手などにスピーチやプレゼンテーションを教える人だった。そこで教えられたのは説教する時は自分自身がPresentでなければ、ということだ。それはテクニックではなくてどうやって自分をさらけだすのか、と言うことだった。自分のその時感じている感情や考えや思い一切を、全てを持って聞く人に伝える、ということだった。練習でメッセージをさせられた時も途中で泣き出してしまいそうになった人には、「泣くのを止めようとしないで、押し出しなさい!」とその講師は言っていた。 実際に説明するのは難しいのだけれど、政治家のスピーチを聞くとよくわかる。アメリカの最近の政治家でいうとオバマ前大統領が圧倒的に上手だった。ちょうどこの講座に出席していた時彼が大統領候補で選挙運動している時だったので他の候補の演説を聞く機会がその後もあったのだけれど、サラ=ペイリン副大統領候補の演説を聞いたときに、Presentでないというのはこういうことか!と腑に落ちた。彼女は淀みなく演説していたのだけれど、どこかで頭の引き出しから事実や統計を出そうとしている、暗記したことを思い出そうとしているというのが伝わってしまったのだ。そしてそれがわかったのは自分が説教するときにそうだったから。間違えないようにしよう、上手くやろう、という意識が先立ってしまい自分の内側にまず意識が行ってしまっていたのだった。教会の人々の前に考えや心をさらけだすという、言ってみればベクトルの向きが外にではなくて内に向かっていたのだった。

その講師の方は普段テネシー州のナッシュヴィルを拠点にしていることもあり、カントリー歌手を教えることが多い、とのことだった。そして彼女がいうには一番presentであるのが上手なのはウィリー=ネルソンらしい。「彼は人気のガース=ブルックスに比べて歌は上手くないけれど、自分の全てを出してステージするのはガースより圧倒的に上手。ガースは歌は上手だけれど、自意識が強すぎて自分をさらけだすのが今ひとつなの。」と言っていた。(ガース=ブルックスファンの方がいたらすみません。)私はジンさんはpresentであることがとても上手だと思う。もちろん歌唱力もあるし(すごく努力して練習していると思うし)彼の声も好きだけれど歌うときに自分が感じている感情や自分が描いている歌の世界をさらけだして歌うことが上手だから聞いている人の心を動かせるのだと思う。普段彼が表にほとんど出さない努力や、考えや感情が歌にはそのまま出すことが出来るのかも。以前読んだインタヴューで「自分が歌うことによって観客と感情を共感できるということがわかるようになった。」とご本人も言ってたけれど、本当にその通りなのだ。だから私は彼の歌によって心が動かされるのだと思う。それはもしかしたら役者になりたくてそのために大学に行った、ということと関係があるのかもしれない。あるミュージカルディレクターが彼がミュージカルをやるところを見てみたい、と言っていたけれどわかるなー。私も見てみたい。

アイドルでもアーティストでも肩書きはどうでもいい!というのが大スターとなったBTSだけれど、こうしてジンさんの歌を聞くと彼は素晴らしい「歌手」だな、と思う。さ、また"Yours"聴いちゃおう。



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