「死ね」という歌詞のある楽曲
「死ね」などとSNSに書いたりYouTubeでしゃべったりするとアカウントがBANされるらしい。
しかし、フィクションとしての芸術作品ならまあまあ平気らしい。
今をときめく"あいみょん"のデビューシングル「貴方解剖純愛歌 ~死ね~」は、「死ね。 私を好きじゃないのならば」という過激な歌詞で話題になった。とはいえテレビやラジオでは放送自粛の憂き目にもあったから、使わないに越したことはないのだろう。
ロックバンドの場合は過激な言動が逆に勲章になったりもするので、「死ねよ佐藤おまえのために」と繰り返す、"神聖かまってちゃん"のファーストシングル「夕方のピアノ」のような例もある。この場合でも4000枚限定生産で、なおかつメジャーレーベルと契約していながらインディーズレーベルからのリリースとなるなど、相当気を遣われていた様子がうかがえる。
「死ね」という直接的な攻撃性は、若者の破壊衝動を満たすから云々というもっともらしい解説はともかく、そういう暴力的な気持ちを解消させてくれる歌はあってもいい。意地悪くいえば、話題性を必要とする新人のデビュー曲にはもってこいだ。
新人でもないのに、ずっと「しねしね」と連呼する曲をさらりとアルバムに入れてしまうロックバンドもある。いつもファンサービスを忘れない"忘れらんねえよ"の「氏ね氏ね氏ね」という曲は、わずか2分の中で80回も「しね」と叫んでいる。単なる攻撃性の発露ではなく、内省もする傑作だ。
忘れらんねえよが意識していたかどうかはわからないが「死ね」の連呼には前例がある。
1972年の特撮番組『愛の戦士レインボーマン』の敵組織「死ね死ね団」のテーマ曲、その名も「死ね死ね団のテーマ」だ。やはり2分の曲の中で100回も「死ね」と連呼している。フィクションの劇中歌で、なおかつ「黄色いサルめをやっつけろ」と自虐性があるから許されたのだろうか。昭和がおおらかな時代だっただけかもしれない。
"3markets [ ]"(スリーマーケッツ)は、YouTubeチャンネルのプロフィールに「たとえ思ってても言えないこと きっと言わない方が誰にとってもいいこと それを歌詞にする性格の悪い人間たちがいるバンド」と自己紹介しているので、もちろん「死ね」という歌詞があるだろうと思って探してみたが、すぐには見つからなかった。スリマの歌詞に出てくるのは「死にたい」であって「死ね」ではなかった。
「死にたい」は別にスリマの専売特許ではない。
"アーバンギャルド"も「水玉病」で「死にたい 消えたい 消えてなくなりたい」と歌っている。
スリマの「人生詰んだ」にもあるが、「死にたい」は今の状況や感情に対する表明であって、本当は「助けて」のメッセージなんだろう。
助けてあげたいけど、助け方がわからない。
そんなときに、あなたの気持ちに寄り添える歌や小説があればいいのにと思う。