大嫌い大嫌い大嫌い大好き
「大キライ 大キライ 大キライ 大スキ Ah」といえば、モーニング娘。の「サマーナイトタウン」である。
残念ながらモーニング娘。の話ではない。
今日も今日とて3markets[ ](スリーマーケッツ)の話をする。
スリマの曲に「大嫌い大嫌い大嫌い大好き」というのがある。
もちろんモーニング娘。「サマーナイトタウン」の歌詞のもじりだ。
娘。の曲の発売は1998年で、元ネタでは90年代のツンデレの女の子のセリフだが、2013年にリリースされたスリマの「大嫌い大嫌い大嫌い大好き」の語り手は男性っぽい。
いや、2020年代に性別の話は無粋だからやめておこう。
他人に対して、嫌いだけど好きというアンビヴァレントな感情は、性別を問わずに普遍的なものだ。
男性が感情を表現することが社会的に抑圧されてきたために「サマーナイトタウン」は女性の歌になったのだ。
実のところ「大嫌い大嫌い大嫌い大好き」の歌詞は、「サマーナイトタウン」とはまったく関係がない。
タイトルだけの言葉遊びだ。
スリマはよくこういったタイトルだけのパロディをおこなっている。
たとえば、2018年のアルバム『君の心臓になりたい』は、映画化もされた住野よるの2015年の小説『君の膵臓を食べたい』のタイトルのもじりだ。
もちろんアルバムと小説の内容は無関係だ。
ところで、カザマタカフミが愛猫を抱えたこのアルバムの写真に見覚えがないだろうか。
GOMES THE HITMANの2001年のシングル『饒舌スタッカート』のジャケットデザインに構図がそっくりではないか。
タイトルがパロディならデザインもパロディである。
このような例はいくらでも見つかる。
2017年のアルバム『それでもバンドが続くなら』のタイトルは、アルバムのプロデュースをしてくれた 篠塚将行のバンド「それでも世界が続くなら」のもじりである。公認パロディだ。
ちなみにこのアルバムの最初の曲のタイトルは「レモンx」だが、これは米津玄師の大ヒット曲「Lemon」とは関係がない。「レモンx」は2017年、「Lemon」は2018年でスリマのほうが早い。
しかし、2曲目の「僕はセックスができない」のタイトルは、山田詠美の1993年の小説『ぼくは勉強ができない』を想起させる。
また、2011年のEP『それでもボクは暗くない』のタイトルは、2007年の映画『それでもボクはやってない』のもじりだろう。映画のストーリーは電車痴漢で捕まった男が冤罪を主張して裁判を戦うというものだが、内容が暗いという以外はスリマのEPとは無関係だ。
2011年の結成9周年ライブ「きっと君はこない」のタイトルは、山下達郎の大ヒット曲「クリスマス・イブ」の歌詞からそのまま借用している。このライブは「きっと君は見ない」のタイトルでDVDにもなっている。反語的用法だ。つまり、「きっと君はこない」→来て、「きっと君は見ない」→「見て」、と解釈できる。最近も2021年のワンマンライブのタイトルが「もう誰もこない」だった。テレビドラマ『もう誰も愛さない』のもじりかもしれない。いろんな意味でこりない。
DVDといえば2013年の『祐一、スリマやめるってよ』のタイトルは、当時のドラマー横田祐一のバンド脱退とかけたものだが、2012年の映画『桐島、部活やめるってよ』のもじりだった。DVDに収録されたライブは2012年のアルバム『何も聞こえない』リリースツアーのファイナルだが、アルバムタイトルは、徳永英明「壊れかけのRadio」の冒頭の歌詞からと思う。アルバム名に合わせたツアータイトル「耳をすませば」もジブリ? いろんな意味でギリギリ。後に祐一をモデルにした「裏セブンスター」という曲の歌詞で「ふざけたタイトルのDVD 私は全然笑えなかった」とネタにしている。
2013年頃からカザマタカフミはTHEハブ人間の名義でソロ・プロジェクトをスタートした。毒しか吐かないからハブられるヘビという意味で、ヘビの着ぐるみでライブを行うものだが、プロジェクト名は下北沢のギターバンド「THEラブ人間」のもじりである。THEラブ人間の曲「これはもう青春じゃないか」をもじって、「これはもう限界じゃないか」という曲も作っている。
これはもうオヤジギャグじゃないか。
でも、そんなスリマが、大スキ Ah
以下、追記。
2020年のスタジオ・ライブの2枚組CDのタイトル『先生、ライブがしたいです。』は、漫画『SLUM DUNK』の名言「先生、バスケがしたいです」から。
2015年のツアーファイナルライブのタイトル「とびだせ ゆううつの森」は、3DSのゲーム『とびだせ どうぶつの森』から。
2019年のアルバム『さよならスーサイド』所収の「フリーターのすべて」はフジファブリックの名曲「若者のすべて」から? 同じく「漫画とゲームと猫」や「部屋と花粉と私」は平松愛理「部屋とYシャツと私」を彷彿とさせる。「みんなのうた」はNHKの歌番組。「さよならスーサイド」はわからないけど、初音ミク「さよならスーヴェニア」という曲はあった。
2006年のシングル「上京ハブストーリー」のタイトルは、1991年のテレビドラマ「東京ラブストーリー」から。ラブはハブに変える。
2008年のシングル「ぼくらはみんな死んでいる」のタイトルは童謡「手のひらを太陽に」の歌詞「ぼくらはみんな生きている」から。生きるは死ぬに変える。
2010年に3ヶ月連続リリースしたシングルのシリーズタイトル「着信ナシ」は、ホラー映画シリーズの「着信アリ」から。アリはナシに変える。
2006年のアルバム「さよなら、大嫌いな人。」のタイトルは、2000年の花*花 の シングル「さよなら 大好きな人」から。好きは嫌いに変える。否定形にするとスリマのタイトルになりがち。そんなスリマが大スキ→
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