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「癌」ってジツは怖くなかったという話Part2

精密検査の日。血液検査、尿検査、MRI、内視鏡検査、そして待つ。ひたすら待つ。とにかく待つ。飽くまで待つ。飽き果てるまで待つ。ただでさえ病院が苦手&ラーメン屋で並ぶことさえ躊躇するほど”待つ”という行為が嫌いな僕ですがこの日ばかりは…


「病院で待たされるくらいなら藤丸で並んでいる方が百倍マシだった。」

「いやむしろあれは幸せな時間だったんだ。」

という事に気づいてしまった僕はとりあえず検査が終わって何か美味しいものを食べに行こうというモチベーションだけで何とか検査と待ち時間を乗り切り、いよいよ診察室へ。




担当医「また詳しいことは検査結果を待ってからになりますが、まずは胃の腫瘍の状態からご説明させていただきます。」


と、画像を見ながら腫瘍の大きさや状態の説明を受ける。大きさは7cm程度で粘膜層を通り越して筋層まで到達し深く浸潤している状態らしい。ただ手術をすれば根治は見込める状態だということでした。

「やっぱりなぁ…」嫌な予感だけは何故かあたるんですよね。
まぁでも手術すれば治るならまだいいか。入院は嫌だけど。とほんの少しだけ安堵したのも束の間、担当医が一瞬顔を曇らせながら説明を続ける。


担当医「次にお腹の張りのことなんですが…」


「他にも何かあるんですか???」

担当医「お腹の張りは腹腔内に水が溜まっていることが原因で胃の腫瘍と関連があるかどうかを再度検査してみる必要があります。」


背筋がゾッとした瞬間でした。もしかしたら胃がんの可能性もあるだろなと事前にネットで調べておいたのである程度知識はあったのですが、そこでは胃がんで腹水が溜まるなんて情報は確かなかったよな…

それって転移してる可能性もあるってことなんですか?

先生のお話だとその腫瘍が良性なのか悪性のものなのか、腹水の影響が腹膜炎からくるものなのか、悪性だった場合転移から来るものなのかは病理検査の結果を待って、それによりまた検査をしてみないとわからない。とのこと。とりあえず次回の予約を済ませてモヤモヤしたまま病院を後に。

さっきまで「帰りにうまいもの爆食いしてやる!」とイキがっていたのが嘘のように、ショックで食欲は消え失せていた。悲壮感満載で帰宅しPeeちゃんに事の顛末を話しました。スーパーポジティブで僕自身に何か不安があっても「大丈夫大丈夫!何とかなるよ!」といつも勇気づけてくれる明るいPeeちゃんを想定していましたが…そのPeeちゃんですら絶句している様子を見て


「あ、俺マジで死ぬかも」



と感じてしまった。
彼女のリアクションを見た瞬間、現実という刃を突きつけられたような、絶望ってこういう事なのかって感情が芽生えたことを今でもはっきりと覚えています。それから何度かの検査を受け遂に…

ジャッジメントデイ。




余命宣告。


結論は「胃がんから腹膜へ転移」。胃にできた腫瘍は悪性であり、癌細胞が腹膜にばら撒かれたように散らばった状態でした。ステージ4。ある程度覚悟はしてきたつもりでしたが医者からの告知を受けると自分でも信じられないくらいに動揺し、何も考えが及ばない状態に。今どうしたい?って聞かれたとしたら、とりあえずPeeちゃんに会いたい。「私も一緒に行くよ」って言ってくれたのに強がって「大丈夫、どうせ大したことないから一人で行くよ」って言ってしまったことを死ぬほど後悔しました。


「あとどれくらい生きられますか?」


との問いに医師は、このままだと持って半年。でも抗がん剤など積極的に治療を行なっていけば2年以上生存している患者さんもいらっしゃいます。ご家族とも話し合ってBooさんの望む治療方針を決めていきましょう、と。
いやいや、、、治療もなんも、腹膜に転移したら5年生存率は5%未満って書いてあったよ。事前に調べて俺知ってんだから。

病院を出て、しばらく呆然と立ち尽くす。


嗚呼、俺死ぬのか。



生きられないっていうリアル。懸念が確信に変わった。

Peeちゃんになんて言おう。子供達になんて言おう。
俺やっと家族ができて心から望んできた幸せを手に入れたのになぁ。
マジかよ…何で俺が…ふざけんなよ…
当時の心境をどう説明していいかよくわかりませんが


①絶望➡︎②ちょっと開きお直ってみよう➡︎③色々後悔➡︎④泣く➡︎①に戻る。


これの繰り返しだったように思います笑。
②でもう一人の自分が「死ぬ前にちょっとポジティブに考えてみる?」って言ってくるんですけど現実の方が圧倒的に勝って「お前ふざけんなよ」と前向きBooちゃんあえなく揉み消されるっていう思考ルーティンが三日くらい続いたような記憶があります。

気がつけば外は暗くなりかけてました。

「そろそろ帰らなきゃ。」

この日は電車とバスを乗り継いで病院まで来ていたので、バスを待っている間にPeeちゃんに今日の出来事をどう伝えようか考えていました。ありのままに伝えるしかないんだけど、Peeちゃんの悲しむ顔を見て、自分が自暴自棄になってしまう姿しか想像ができず、それを見た子供達がどう思うんだろとかそんなことばかりが頭を駆け巡る。どうやってバスを降りたか、どうやって電車に乗ったかなんて全く覚えてなくて、気が付いたら家の最寄り駅に着いてました。多分車内ではなかなか酷い顔してたんだろなぁ。見慣れた風景を見てると少し気分が落ち着いてきたような。一回伸びをしてみる。

ふと駅のロータリーに車で迎えに来てくれたPeeちゃんと子供たちの姿が。


「おかえりっ‼︎‼︎」



車に歩みを進めると三人の明るい笑顔が待ってました。
車に乗り込むと早速マシンガンのように今日学校であったことを夢中で話し始める子供たちはとりあえず自分たちの話を聞いて欲しくて気落ちしてる暇など与えてくれない笑
あ、そうだ、今日も野球の練習しないとな。
あ、そうだった、今日アリエルの絵を描いてあげる約束だったな。

おいおい俺もうすぐ死ぬんだぜ?なのになんでこんなに幸せなんだ?

あ、そうか。これが家族か。
そうだ、俺一人じゃないんだった。



続く。



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