
わざわざ映画館で映画を観ることで得られる、エモーショナルな感情!

映画館に映画を観に行くこと、配信ではなく舞台やステージに行くこと、実際に行って見ることって面倒だけど贅沢で、やはりいいなあ、と思ってしまう。自宅徒歩3分のところに映画館や劇場があるのに、なかなか行けていない。出待ちをしているヒトたちを見かけると自宅立地を有効活用しないといけないんじゃないか、とちょっと焦る。
たまには動かないと。いつもテレビで観ている「孤独のグルメ」、劇場版を観に行ってきました。
いつもは家でつれあいとあーだこーだ言いながらドラマ版「孤独のグルメ」を観ていて、それはそれで楽しい。知っている場所だと盛り上がるし。ライトな楽しみ方もいいものだ。
それにくらべると、映画館では静かに観ていなければならないので、やや緊張する。トイレに行ったりスマホで調べたりもできないという不便さはある。それでも画面の迫力があり、尺が長いのでストーリーが充実していて作りも贅沢、主題歌や出演陣、スタッフやロケ場所などあちこちに楽しみがある。なにより作品への没頭度が違うんだろうなあと思う。これが配信になって家で観るときは、多分集中力が映画館に比べて薄くなるのだろう、あちこち行ったり、ながら見をするに違いない。全身で集中して感じられる環境に自分を置くのも、贅沢なものだ。
「孤独のグルメ 劇場版」、ザ・クロマニヨンズの主題歌も楽しみだった。松重豊さんと甲本ヒロトさんが下北沢の珉亭バイト仲間だというのは世代的には有名な話なので「わーヒロトが主題歌つくったんだ~友情~!」とぐっと盛り上がっていたのだ。
ネタバレしないように注意しながらではあるが、いくつかポイントを紹介すると、ユ・ジェミョンが出演しているのもツボ。「梨泰院クラス」のチャン・テヒを覚えているかたは同一人物とは思えないのではないか。さすが超ベテラン、このあたりも熱くなる。(やっぱりうまい!)と静かに笑う。
そしてまったく個人的な部分で恐縮なのだが、オダギリジョーさんが店主を演じる店「さんせりて」フランス語で真心とかそんな意味だったと思いますが、ここが元職場の激近所で。店に行くところで「おや?」とは思ったものの、最初のかなり荒れた店内シーンではいつもの店内とはかけ離れているので「あれ、ここって…?」と、ぐっと引き込まれてしまった。映画の内容にもリンクした韓国系料理店なので(遠まわし)すぐつながった。もちろん店名は違っている。エンドロールには実際の店名は入っていた。
確かに以前、井之頭五郎さん来てるねーなんて話はしていたっけ。あれは仕事でだったのかと思ってたけど。映画ではその店の周辺も出てきて、通っていた会社もチラチラ映るし、よく通りぬけていた狭い道、オリジナルの焼き印を作ってもらった和菓子屋、35年前から行きつけだったうなぎやの看板、最近できた老舗洋菓子店の新店舗、道端の柳の木など、退職したばかりのものにとってはセンチメンタルな、メランコリックな、じんとくる風景が流れて、エモ感情が膨らんでしまった。いっしょに行ったつれあいも同じ会社に勤めていたので、無言でひじを突き合うことしばし。でも映画館だからこそまだクールでいられたのかも。家ならたぶんふたりして大騒ぎだったに違いない。
退職してからまだひと月もたっていないけど、遠い遠い昔の思い出を掘り起こされたような感覚が残る。久しぶりに、あの店で出している韓国のポピュラーな某スープ、食べたくなった。そういえば自分でもずいぶん作ってない。
映画館で作品に没頭すること、やはりいいよね。