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無頼街 Welcome Back!

Twitterだとネタバレが憚られるので、戯曲もパンフレットも未確認ですが初見の衝動のままの感想を書き留めておきます。

BURAIGUY IS BACK!

2年待ちました。待った甲斐があったし、この輝きのために2年があったのだと思いました。命をかけて生きてきた時間が、舞台上でいのちとして輝くのだと。

口出し屋・草臥というお役

神州無頼街全幕通して私が唯一泣いたのが、二幕で草臥が次郎長親方を口説き、歌舞き、歌い踊るシーンでした。シーンそのものの素晴らしさも去ることながら、大好きな宮野真守さんがこんなにもいきいきと輝けるお役を当て書きしてもらったこと、圧倒的なパワーで舞台上を支配していることが嬉しくて嬉しくて、涙が出ました。

宮野さんは芝居をしても歌っても踊ってもボケてもツッコんでも、贔屓目ながら何をやっても軽々と商業クオリティを出す人ですがその本質は“歌舞くこと”にあるのだと思っています。好き勝手に振舞って、自分を見せること。そういうとき宮野さんは一番楽しそうだし、そういうとき一番面白くしてくれると私たちも知っています。

そういう“宮野真守そのもの”が、無頼街の、草臥にはありました。ファンが「マモライだった」と感じるのは、何も歌や踊が多いからだけではなく、宮野さんそのものを見ていると感じるからではないかと思います。

座長としての福士蒼汰さん

テレビドラマを見ないので映像は髑髏城の円盤を見たくらいで、福士さんを生でも初めて拝見しました。あれだけうるさい芝居の新感線と、あれだけうるさい芝居の宮野さんが似合うのは分かりきっていたので、それをバディに据えた主演がどうなるのかがとても気になっていました。

映像での経験が長い役者さんは舞台でも細やかな芝居が特徴的で、表情までよく見える時は素晴らしいのですが、後方席から裸眼で、となると舞台中心の役者さんには負けることが多いと感じます(当然のことですが)。しかし無頼街ではむしろ、遠目には見えない細やかな芝居で永流の内面を見せ、一見は淡々としているがよく目を凝らせば内に秘めたものが見える、と演出されているように感じました。

また福士さんの殺陣の素晴らしさは言うまでもありません(早乙女流を感じさせつつも棍術に近い動きが新鮮でした)が長身と声の良さも活かして宮野さんと張り合っており、喋りすぎるきらいのある宮野さんよりも一言一言を重く発することで役柄としても良いバランスになっていました。

身堂夫妻の衝撃

高嶋政宏さんがすごいことは知っていました。
松雪泰子さんがすごいことも知っていました。
それが新感線で、まさかコテコテのロマンスをやるなんて……!!

私は宮野さん福士さんの仲の良さにばかりフォーカスされるインタビューその他を見ながらいつも「無頼街ってロマンスなの……?」と言ってきたのですが、なんと本当にラブロマンスでした。一点の曇りもない愛。あれだけの実力を持ったお二人だからこそ、いのうえさんが散々"変態"と呼んだ愛を、いっそ純真なほどに表現できるのだと思います。率直に言えば主人公二人よりも刺さりました。戯曲を読むのが楽しみです。

永流と草臥の関係性

バディもので二人の関係性が物語の主軸になるのですが、あまり最初の時点での関係性が描かれないので結果的に関係が深まった感が薄いのが残念でした。耳が早い草臥が永流の顔と名前くらいは知っている、という最低限の情報は与えられていますし、最初の関係性もなにも興味ないし、というのもある意味男同士の関係性らしい気はしますが。いがみ合えとは言いませんが、草臥もとい宮野さんは基本的に他人に興味があるタイプなので永流がもう少し突き放しても良いのではないかと思います。

棺桶屋のお銑

新感線の男たちはとにかく生き急ぎ、すぐに死で何かしらを贖おうとするので反面、女たちは生きることに執着しています。今回の無頼街では麗波はそれに当てはまらず、身堂揚羽は自分が生きるのに精一杯のため、男たちを見送る女として棺桶屋のお銑がいます。彼女は武器をとって戦ったりはせず、ただ棺桶をつくっています。死地に向かう男たちを止めもせず、帰りを待ちもせず、ただ弔ってやります。ここに新感線の描く“女”というものの強かさが詰まっているように感じました。とても美しかったです。

白い衣装

二幕で永流と草臥が白い衣装に変わるのがいかにも「死装束」という感じがして震えながら見ていたのですが、結末を見てみると「白無垢」、つまり2人がこれから共に生きていくということであり、生まれ変わったということなのだと思います。青と紫の帯の色を交換する形になっていることも含めて、揃いの赤い衣装で殺しあって死んだ身堂夫妻との対比でもあり、最後に赤ん坊を拾うことでそれを明確にしていました。

草臥のお着替え係

次郎長親分の子分で居合の??と呼ばれていた方(槍の大政、居合の小政かな)が舞台上での草臥の着替えを手伝ってくださって、かつらを丁寧に整えて下さるのでありがとうございます……と思いながら見ています。 ありがとうございます。

清水次郎長親方

次郎長親方の河原正嗣さんは、ぶっ飛んだ人ばかりの無頼街の世界の中でただひとり地に足着いたというか、地に深く根を張ったようなどっしりとしたお芝居でまったく圧巻でした。おまけに見栄を切っても見事に決まる。惚れ惚れします。

凶介や揚羽、風天千之介さんについても書きたいのですが、日を越えてしまいそうなのでとりあえずここまでにします。

これからこの舞台がどう深まっていくのか、本当に楽しみです。私は欲深いので最後まで1日も1人も欠けずに完走して何なら追加公演もあって配信も円盤もゲキシネもありますように!!と願います。


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