片岡義男が好き #1

高校生の頃、少しませた同級生が、今読んでいるのは、「マーマレードの朝」と言っていた。その頃のわたしは、ミステリーに夢中だっだので、聞き流していた。「ボビーに首ったけ」「スローなブギにしてくれ」、次々にでてくるタイトル、興味をそそられる。いつか、読もう、そう思っていた。

ほどなく、大学生になり、友人のパーティに誘われて行ったら、2人の男の子にデートに誘われた。そのひとりから勧められたのが、「彼のオートバイ、彼女の島」だった。きっかけになり、それからは、角川文庫の赤い背表紙をたくさん読んだ。

共通の話題があれば、話も弾み、デートも楽しかった。車でドライブをして、パスタを食べて、というような青春のデートだった。彼は、音楽の趣味もよく、紳士的で、「彼氏」というには理想的な人だった。

少しして、もうひとりの男の子から電話があり、会うことにした。その電話が、とても、面白かった。いいことがあったから、デートに誘っても、いい答えが聞けそうだと思って、って。彼は、車がなく、デートはよく歩いた。慣れないハイヒールで、足が痛くなることも度々あった。

こうして、2人のボーイフレンドとデートをして、時が経ち、クリスマスが近づいた頃、後からデートを始めた彼と正式に付き合うことになっていた。背の高い彼は、スノッブで、お洒落な男の子で、タバコを吸っていた。わたしも、真似をした。長い髪をかきあげて、煙をふっと、細く吐き出し、マティーニを飲む、そんなデートに夢中になり、青春時代を過ごした。

別れは、わたしが社会人になり、彼はまだ学生を続けていたとき、彼がわたしの友だちを好きになったことで、突然、やってきた。お別れの言葉は、単刀直入に、「好きな人ができて、それは、彼女だ」。明確、明瞭な言葉に、涙も出ず、「うん、じゃぁね」と。でも、翌日、会社に行ったら職場の女性に、「今日、綺麗ね」と言われたのを、今でも、覚えている。

片岡義男の小説の女性たちは、みな、ハンサムで、だから、好きなのだと思う。今や、小説に出てくる女性たちよりお姉さんになってしまった、わたし。車に乗っていて、「メインテーマ」が流れてきたら、無性に、角川文庫の赤い背表紙を読みたくなった。

いま、読みたいのは、「B面の最初の曲」

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