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小品盆栽、東京支部講師陣の楽しみ方 (04-後編)

中編からのつづき)

ーー小さな盆栽には特別な思いがありますか? 思い出や逸話などあればお聞かせください。
常山さん(常山敬氏)に小さな箱飾を作ってもらったときにね、梶山さん(※前編に注記有)が「お前には飾れないだろう。これは石飾り(の飾)だ」って言うんだよ。それで梶山さんに石を持ってきてもらったの。同じ大きさで10コ。たまり、遠山、軍艦みたいなのとかね。梶山さん、集めるの大変だったと思うよ。みんないいよ。みんな素敵。よし、これは(バラして)使おうと。
それで「私は石は飾りません。盆栽を飾ります!」って宣言して…この飾に合うような盆栽を作らないといけない、と。それが今の私になった。
今回もたまりを使ってるよ。10コの石のうちでいちばん気に入ってる。
今回の飾りは、私の「原点」なんだよね。

第48回 東京支部展「小品盆栽フェスティバル」土屋氏の席飾り。たまりはセキレイ一対の水飲み場か遊び場か…この飾りにも常山氏の飾が使われている。土屋氏いわく、梶山氏は「負けず嫌いの目利き」、常山氏は「今でも私の先生と思ってる」。さらなる逸話が面白いがそれは別の機会に。

【大事にしていること】

ーー盆栽趣味を続けていく上で、大事にしていることは何ですか?
人とのつながりだね。それは大事にしたほうがいい。ひとりじゃ、やっぱりひとりよがりでね。いい個性もあれば悪い個性もあるでしょう。やっぱり人の話を聞いたりしてね。

【夢と思い出と】

ーーご自身の小品盆栽の「夢」を教えてください。
やっぱりね、この会(日本小品盆栽協会)を長く続けていってもらいたいっていうことだね。それが一番。私はね、それを先輩に言われてきたの。潰すんじゃねえぞ、なんてさ。笑。

ーー思い出の木などあれば教えてください。
今ちょっと崩れちゃったけど、真柏。いちばん最初に買った木です。皐月をやってた頃買ったんだよ。大きくないよ。ちっちゃいよ。(スマホを操作しながら)あったあった。これです。思い出の50年ものの真柏。今でもあるよ。今年手を入れたらいいものになると思う。

スマホの中に収められた、思い出の50年ものの真柏。「こうして写真を撮っておくと残るからいいよね」と土屋氏。たくさんの盆樹がスマホに収められている。

ーー最後に、ここだけのおトク情報があれば、お聞かせください。
そうねぇ…「自分が気に入ったものが見つかったら、借金してでも買う」ってことだね。笑。
それはね、いい木とかそういうんじゃないよ。好きだったりさ。で、それを枯らさずに育てる。それが重要。飾るためにいろいろ調べなきゃならないでしょう? 木の性質とか、どこに生えてるかとかさ、それが重要なのです。
私たちの大きさの木はね、肥料と水ですよ。水かけを忘れないことと肥料をやらないと弱っちゃうからね。

ほらこれ見て。小さな鉢の中で、理解して一花しか咲かせないミセバヤ。いとおしくなっちゃう。


支部展搬入後、インタビューに応じてくださった土屋さん。たくさんの楽しい逸話とアドバイスは長年講師を務めておられるからでしょうか。超小盆栽の画像ひしめくスマホは、きっと牧野博士も目を細めて眺めることでしょう。いずれまた、掲載しきれなかった諸先輩方とのお話などもご紹介したいものです。(鉢制作のお話も!)

土屋さん、ご回答ありがとうございました。


<人物注記>
■常山 敬氏:日本小品盆栽協会東京支部所属。緑水会、盆栽清香会(賛助)会員。盆栽家であると同時に、飾や添配を手掛けた匠人であった。本職は宮大工師。その作品は梶山園・梶山富蔵氏の著書にも登場する。

(編・蛍)

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