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小品盆栽、東京支部講師陣の楽しみ方 (04-前編)

コロナ禍時期を経、家で小さな桜盆栽を愛でることから始まって盆栽に興味を持つ方も増えたのだとか。
植物と素敵な出会いをして、仲間と出会って、楽しく盆栽を愛好し続けてほしい。初心者から経験者まで楽しみ方は人それぞれです。

ということで、東京支部例会で講師を務める盆栽愛好家それぞれの盆栽の楽しみ方などについてお伺いしてみました。
これが正解!それは間違い!という話ではありません。個を尊重し、楽しんでいただければ幸いです。


講師インタビュー 第四回目は会計監事・相談役の土屋憲三氏です。
土屋氏は東京支部で長年役員・講師を勤め、本部事務局長を長期担うなど、小品盆栽協会そのものの維持発展にも発奮されてきました。緑水会所属、盆栽清香会賛助会員としても活動され、また、盆栽鉢作家(落款:琢柿)でもいらっしゃいます。
「そのまま槙野万太郎(2023年朝ドラ主人公・植物学者の牧野富太郎がモデル)だった」そんな少年が大人になって・・・?
さあ、伺ってまいりましょう。

第四回 土屋 憲三 氏

東京支部 会計監事・相談役
盆栽歴:約50年 東京支部歴:創立2年目より在籍

【入り口は皐月盆栽だった】

ーー盆栽に興味を持ったきっかけを教えてください
幼少期から植物は身近でした。食料難の時代に、私の母は花を畑いっぱいに作っていたからねぇ。母は花が好きだったのです。
少年時代の修学旅行で出会った牧野植物図鑑に夢中で。旅のお土産に図鑑を買う私を友人は「お前変なやつだなぁ!」と笑っていたものです。朝ドラの主人公・槙野万太郎、あれはまんま私です。

ーーそんな少年が大人になり、本格的に盆栽と出会ったのは?
テレビで皐月(さつき)を見て! その頃は皐月ブームだったから、皐月に興味を持って本屋さんに行ったのです。そうしたら、すぐそばに是好さん(中村是好氏)の本があった。もっとおもしろいものを見つけちゃったの。笑。それで両方買って帰って、年に一度開催する盆栽展示会を見に行って。それが伊勢丹でやっていた名品展(※注1)の第1回目。1日いたからよく覚えてるよ。
皐月もデパートでいっぱい買ったけど2年ぐらいでやめちゃった。皐月より盆栽が面白くなっちゃったんだね。

ーー展示会場に1日! ご自身が展示されるようになったのはいつ頃からですか?
実際飾ったのは13回目から。飾るにはお道具がないし、長老に10年早いよと言われました。
そもそも、長老の家に行って話をして。これは大変な会かもしれないな、と思ってすぐに入会することはしなかった。ほら、偉い人たちがいっぱいでしょう?
鉢がないから是好さんの本を見ながら茶碗に穴を開けてね。穴の開け方まで書いてあったんですよ。でもそれじゃ物足りなくなるよね。
種木もその辺の植木屋さんとは全然違う。だからもう2回目の頃には入会してた。入ったらやっぱり便利で。入ってからはもういろいろ試しましたよ。そして先のとおり10年後に飾りました。

ーー盆栽最初の一鉢は何でしたか?
皐月。花が綺麗でしょう? 最初の一鉢が大きくてこれはでかくて大変だと。次に小さいのを買って…それはだいぶ長いこと持っていました。実際いい感じになってね。
こーんなでっかい株(両手を肩幅ほどに広げつつ)をね、全部ばらして品物を作ったり。
皐月は簡単ですよ。梶山さん(梶山富蔵氏)なんかもやってたけど、商売にならないってやめちゃった。

本年(2024年)1月に開催された「第50回 全国小品盆栽名品展」より、50回分の案内状の掲示。そうそうたる盆栽家の盆樹が並ぶ。土屋氏の盆樹は第30回開催時の案内状を飾った。(於:東京 上野グリーンクラブ)

【環境と盆栽の楽しみ】

ーー棚場の環境を教えてください
今はベランダ。前にビルが建ってて。12時になると上から直射日光が当たる。日照が細くなっちゃってこっちよけてこっちよけて…って持って歩いてます。
以前は屋上でやってたからそんなこと考えたこともなかったけどね。屋上の前は一軒家。庭に棚上げして。佳境、田舎だったから環境はいいよね。

ーー小品盆栽で、今もっとも興味を持っていることは何ですか?
より小さくすることにハマってる。極小盆栽。超小盆栽。世界一。盆栽を初めて見る人にも「世界一ちっちゃい盆栽を作ってるんだよ」って説明しています。

ーー土屋さん流の「盆栽の楽しみ方」とは? 育てる、飾る、など楽しみがあると思いますが?
楽しみは「作る」方だな! ただ、私にとって飾りっていうのは頭の中。自分一人で見ていたらもったいないんじゃないか、みなさんに見てもらわないと、と。だから、家にお客さんなんか来たときにさ、ちゃんとこうセットして置いておいたんだよ。そうしたらその人、それにびっくりしちゃってさ。本来の話が進まなくなっちゃった。フフフ。笑。
あとはね、友達を作ってまた「教える」ことだよ。

ーー小品盆栽で苦労する点をお聞かせください
ちっちゃいから水かけの苦労。5回だよ、夏は。今は3回。日陰に置く時間が多くなったからね。

当サイトのメイン画像としてあしらわれた盆栽は土屋氏のもの。このカットは別アングルから捉えた貴重な1枚。左から極姫ばら、真柏、草、梅もどき、もみじ。どれも極小サイズの盆栽だ。


次へ続きます


※注1:第一回全国小品盆栽名品展 昭和47年 主催は日本小品盆栽会(現日本小品盆栽協会)。新宿伊勢丹百貨店で開催された。

<人物注記>
■中村是好 氏:東京アマチュア小品盆栽愛好会(後に日本小品盆栽会に改称)副会長・会長を20年超歴任。緑水会幹事。俳優・盆栽家。平成元年没。
■梶山富蔵 氏:日本小品盆栽協会にて相談役などを務める。盆栽専門店・梶山園(埼玉県川口市と銀座松屋屋上店舗)経営。緑水会幹事。平成25年没。

<盆栽会注記>
■緑水会:昭和46年設立の小品盆栽と小品水石の愛好家有志会。年に一度東京銀座三越デパートでの陳列会を開催。席飾りに小品盆栽と水石を取り入れて飾ることを主眼とした独特の愛好会であった。毎回定例会に通われたという土屋氏いわく、「この会で私の人生を形成されたかもしれない」。
■盆栽清香会:島崎武治氏を初代会長に昭和38年発足。研究・交換会を前身として小品盆栽の会に改組されたのは昭和60年頃。東京中野 新井薬師 梅照院にて開催された展示会は74回に及んだ。


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