2025年早春エッセイ【2】 初秋、畔柳支部長の棚場を訪れて:日本小品盆栽協会東京支部
それは9月になったというのにまだ蒸し暑い日でした。
都内某所の駅を降り、川沿いを歩くと橋のたもとに見覚えのある人物が手を挙げていました。
2024年9月21日、22日の2日間に渡って開催される小品盆栽フェスティバル(日本小品盆栽協会東京支部展)の展示会に恐れ多くも初出品することになった私は、盆栽の調子を崩さないか戦々恐々としていました。
そんな時、悪い予感が的中し出品する予定のアオツヅラフジが暑さにやられてしまいどうしようかと困っていたところ、急遽、畔柳支部長に代役の木を用意していただける運びとなりました。
そこで畔柳さんのお宅までお邪魔することになったのです。
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畔柳さんの棚場は車庫の上に木材を組み合わせて作られています。
「急だから気をつけてね。」
細い階段を登ると4畳ほどの広さがありました。
なんと階段からなにまで全てお手製だそう。これも盆栽にかける思いなのでしょうか。
棚場の上はなにも遮るものがなく、西日が強く当たるのがお悩みなのだそうで、西側には真柏や松など光を好むもの、反対には寒冷紗の下に雑木や草が所狭しと並べられています。
畔柳さんは挿し木や実生で素材を増やすのが得意なご様子で、苗床には小さなもみじやイチイなどが顔を覗かせていました。
冷たいジュースをご馳走になり、さっそく支部展に出品する木の相談へ移りました。
調子を崩してしまったアオツヅラフジは実は入会して間もない頃に畔柳さんから頂いたもので、当時の兄弟木であるアオツヅラフジを何本か用意してくださっていたことは驚きでした。
この木は立ち上がりがいいけどツルが短い、こっちの木は実なりがいいけどツルが長すぎる…などと説明を受け、自分でもあれこれ思案しているうちに身体中汗だくに。(当時気温33度)
やっと木が決まり、鉢や高飾もお借りし、更にはお土産のサンザシやフウチソウまで頂いた私の袋はパンパンに。
不測の事態で訪問させていただくことになったとはいえ、畔柳さんの盆栽に対する愛を感じながらお宅を後にしたのでした。
最初こそまだ盆栽を始めて日の浅い私が盆栽の展示会に出るなんて....と思っていましたが、東京支部の皆さんの手ほどきもあり、無事に東京支部展を終えることができました。
この場をお借りして感謝申し上げます。
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異常気象が叫ばれる昨今、園芸をする方々はいかに夏の酷暑を乗り切るか悩みが尽きないと思います。
他の方々の栽培風景を見るとそのヒントが見つかるかもしれませんね。
遠かったね、とねぎらってくれた畔柳氏部長。
畔柳支部長の棚場を訪れ、盆栽をお迎えする以上に得られるものがあったな、と秋の入道雲を見上げながら思うのでした。
(擬)
2025年早春エッセイ INDEX
■ 深刻な気候の異変
■ 初秋、畔柳支部長の棚場を訪れて
■ 秋の親睦会 青梅周辺の盆栽園巡り
■ 新年の盆栽への思い