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居心地いいのですみつきました

 いまに始まったことではないが、本来なら日本に棲息していないはずのヘビやカメ、ワニなどが住宅地や市街地などで発見されて騒ぎになったことがある。飼い主が捨てたり、みずから逃げ出したりしたペットだ。

 この類いのニュースで私が覚えている最初のものは、平成7年12月に大阪で発見されたセアカゴケグモだった。このクモはオーストラリア産と推測されていた。
 当時はまだこういった事件は珍しく、それに加えてセアカゴケグモなどという、何やらおぞましげな名前のクモだったこともあり、しばらく世の中の話題になっていた。
 このクモはその報道より1年から2年程度前に、大阪以外でも数か所で発見されていた。私はこれら一連のニュースをある雑文のタネにしたため、能天気なのに珍しく覚えていた。

 ところで、偶然だとは思うが、大阪のそれと同年同月に、神奈川県横浜市でハイイロゴケグモというのが見つかった。南アメリカに棲息するというこのクモはセアカゴケグモの近縁種だそうだが、申し合わせたわけでもあるまいに、妙なタイミングだ。

 外国の動植物が日本へ入る〝手段〟は、ほとんどが船舶の貨物にまぎれこんでの〝密入国〟だという。前述のクモもそうらしい。
 船舶といえば、船体に付着してそのまま日本へ来て、その後海底に落ちて繁殖する貝類もいる。
 また、生物に限らず、海藻なども船舶のバラストタンク内に海水と一緒に紛れ込み、日本で排水されて居つくものもいる。バラストタンクというのは、船舶の喫水や傾斜を調整するための、船体内に設けられた水槽で、ここに海水を出し入れする。

 しかし、なかには人為で入国させたものもある。食用として移入したウシガエルや、その餌用としたアメリカザリガニ、狩猟目的のコジュケイほかたくさん。それらがそのまま自然界にすみついてしまう。つまり帰化するというわけだ。

 動物ではほかにタイワンザルやコウライキジ、悪名高き嫌われ者のゴキブリなどもいる。ちなみに、ゴキブリが帰化したのは江戸時代だそうだ。で、これまでに帰化した動物はおよそ260種ほどという。

 植物の代表的なものをいくつかあげてみると、ヒメジョオン、ハルジオン、ブタクサ、オオマツヨイグサ、名が体をあらわしているセイヨウタンポポやセイタカアワダチソウ、セイヨウヒルガオなどがある。

 ここにあげた帰化動植物はほんの一例だ。私もこうして知ったかぶりをしているが、この記事を書くにあたって調べたからわかったのであって、これほど存在していたとは知らなかった。驚きだ。

 帰化した動植物は、どういうわけかたいてい繁殖力が旺盛で、日本の在来種が駆逐されることが少なくない。各地で繁茂している前述のセイタカアワダチソウはアメリカのアラバマ州の州花だが、繁殖力が強いばかりか、他の植物に有害な物質を根から出して迫害する。まったくたちが悪い。

 釣りの愛好家が放ったと言われるブラックバスやブルーギルが、自治体などが躍起になって駆除に努めているのを尻目に、あっちこっちの湖沼で繁殖しつづけているのはよく知られている。
 日本とは気候風土の異なる国の爬虫類やクモが、日本の住宅地でたむろするなどは、自然の摂理から逸脱していて不自然で、個人的には好ましい状況とは思えない。

 ところで、帰化には逆のケースがある。つまり、日本から外国へ進出(侵出?)し、しっかりと居ついてしまったものも多いのだ。具体的な動植物名までは調べることができなかったが、海を隔てての〝海外交流〟は、なかなか奥が深くて悩ましい問題だ。
 日本へ来たり、日本から行ったりしたものたちは、住めば都などと思っているかもしれないけれど。

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