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ミャンマー内戦⑩ロヒンギャはアラカンで存続の危機に直面している


ロヒンギャ各団体、緊急の国際人道支援を要請する。

共同声明

  • 2016年から2017年にかけての大量虐殺的攻撃の後、アラカン州またはラカイン州に残された60万人のロヒンギャのうち、元の家に残っているのは3分の1に過ぎないとわれわれは推定している。

  • 何万人ものロヒンギャがブティダウンとマウンドーの町で国内避難民となっている。

  • ブティダウンのダウンタウンに住むロヒンギャは、アラカ軍(AA)により5月18日午前10時までに町を離れるよう命じられた。ブティダウンのダウンタウンでは戦闘は起きていなかった。5月17日深夜、AA兵士は頭上から発砲して人々を家から追い出し、略奪と放火を行った。女性、子ども、高齢者を含む数千人のロヒンギャが、命からがら避難を余儀なくされた。われわれは、AAが行った残虐行為をすべて非難する。

  • 避難したロヒンギャには食料も住居もない。飢餓、清潔な水と医療の欠如により、死者の数はまもなく増えるだろう。国際的な人道支援が緊急に必要だ。

ロヒンギャ各団体は、本日、国際社会に対して、アラカ統一同盟(ULA)/アラカ軍(AA)による、ラカイン州のロヒンギャコミュニティに対する大規模な強制移住と人権侵害をやめさせ、国際人道法を守るよう、直ちに圧力をかけるよう求める。

国際社会はまた、ULA/AAに対し、その支配下にあるラカイン州のロヒンギャを含むすべてのコミュニティに、安全かつ無制限に国際人道支援を提供するよう、強力に関与しなければならない。

国軍が、占領している地域からの人道支援物資の輸送を制限している中、われわれはバングラデシュ政府に対し、国軍支配下にないラカイン州北部へ人道支援助物資を安全に輸送できるよう、国境を開放することを求める。国際ドナー、国連機関、NGOは、この人道的ライフラインの開放を可能にするために、バングラデシュ政府およびULA/AAと協力しなければならない。

われわれは、人権高等弁務官事務所、ミャンマー情勢に関する国連特別報告者、およびミャンマー独立調査メカニズム(IIMM)に対し、現在の危機に関する調査を直ちに開始し、何が起きているのかを公に報告するとともに、人権侵害の責任者の責任を追及するため、将来の訴追のための証拠を収集することを求める。

われわれはイギリス政府に対し、国連安全保障理事会を緊急に招集し、現在の危機について協議するとともに、AAに対し、ロヒンギャに対する集団強制移住と人権侵害を終わらせるよう求める。

ラカイン州情勢に関する最近の国連安全保障理事会の会合で、現在の危機を防ごうとする機会が失われたことに、われわれは依然として失望している。安保理メンバーは、ロヒンギャを保護するために国際司法裁判所が命じた暫定措置に対する国軍の継続的な違反に対処することができなかった。同様に、AAに対し、国際法を遵守するよう求めることもできなかった。

われわれは、ラカイン州が国軍支配から最終的に解放され、平和的共存、効果的な行政、経済発展のために協力するための、ラカイン州のすべての民族・宗教コミュニティを含んだ対話プロセスを提案する。

またしても何十万人ものロヒンギャが命からがら逃げている。またしても国際社会は何が起こりうるかを警告されながら、行動を起こさなかった。今は、何が起きているのか明確でないとか、状況がいかに複雑であるかとか言って、逃げ隠れている時ではない。われわれは以前も経験した。今こそ大胆な行動が必要なのだ。

ブティダウンの現状

5月17日の朝、ブティダウンの町の南にあるロヒンギャの村ザZabbar Fara (Tat Yar) で、AAと国軍との間で激しい戦闘が起こった。数人のロヒンギャ市民が死傷し、他の者は安全のためにブティダウンのダウンタウンに逃れた。

AAは、すべてのロヒンギャに対し、5月18日午前10時までにブティダウンのダウンタウンから立ち去るよう命令を下した。何万人ものロヒンギャ国内避難民がブティダウンのダウンタウンに避難していたのにも関わらず。

ロヒンギャの住民や国内避難民は、他に行くところがないため、町を離れることを拒否した。期限が切れる前に、AA兵士が町を包囲した。目撃者によると、彼らは頭上から発砲して人々を家から追い出し、略奪してから火を放ったという。 ロヒンギャは逃げ惑い、何時間もかけて近くの水田に避難することを余儀なくされた。その後、彼らはAAの指示にしたがって、AA支配下のHpon Nyo Leikその他の村に向かった。

ブティダウンのダウンタウンへの放火および攻撃の数日前にも、AAはロヒンギャの国内避難民が避難していたブティダウンの高校や病院を砲撃したり、無人爆撃機を使って攻撃したりして、死傷者を出したと報告されている。ブティダウンの住民によると、国軍兵士やその代理人、ロヒンギャ強制徴兵兵は、このような攻撃が行われる前に、すでにマウンドーに撤退していたという。

また、ブティダウンへの放火および攻撃に先立つ数日から数週間の間に、AAがブティダウンでロヒンギャ市民を大量に殺害し、大量に拉致し、放火攻撃し、多数の村を強制移住させたという、信憑性のある(しかしまだ検証されていない)報告もある。このような残虐な犯罪は、Tat Min Chaung、Kyauk Phyu Taung、Let Wei Dat Pyin Shay、Nga Kyin Tauk、Htan Shauk Khan、Pyar Pin Yin、Ywet Nyo Taung、Kun Daing、Da Pyu Chaungの各村落で行われたとされている。

分断統治戦略

国軍はラカイン州で数十年来の分断統治戦略を採用し、壊滅的な効果を上げている。2月以降、国軍はシットウェとキャーウクフーの収容所、ブティダウンとマウンドーの村から数千人のロヒンギャ男性を強制的に徴兵した。国軍がロヒンギャのコミュニティに対して移動の自由を制限しているため、ロヒンギャがこのような命令から逃げたり、回避したりすることは極めて困難である。ロヒンギャの強制徴兵兵はAAとの戦闘に駆り出され、国軍は彼らを大砲の餌にしている。すでに数百人が殺害されたと見られている。地元メディアの報道によると、ロヒンギャの徴兵兵は現在、国軍によってマウンドーやタンドウェでのAAとの戦闘に利用されている。またAAも、数は少ないが、ブティダウン、マウンドー、ミンビャなどのタウンシップでロヒンギャを強制的に徴兵している。

同時に、国軍はシットウェとブティダウンのロヒンギャ・コミュニティに対し、AAを糾弾するために組織的な抗議行動に参加するよう強要してきた。国軍はこれをプロパガンダに利用し、(ラカイン族の)ロヒンギャに対する民族的・宗教的憎悪と暴力を扇動している。

さらに国軍は、アラカン・ロヒンギャ軍(ARSA)、ロヒンギャ連帯組織(RSO)と協力している。これらの組織の兵士は、AAとの戦闘で国軍とともに戦っているとされている。さらに懸念されるのは、これらの組織がバングラデシュのキャンプからロヒンギャ難民を拉致し、国軍とともに戦うためにマウンドーに人身売買しているという信頼できる報告である。われわれは再度ARSA、ARA、RSOを完全に拒否する。これらの組織は、ロヒンギャのコミュニティを代表するものでも、代表して行動するものでもない。われわれは彼らの行動を明確に非難する。

4月には、国軍がロヒンギャの徴兵兵やARSAのメンバーとともに、ブティダウンのラカイン族の家屋に放火を行ったという報告があった。5月にはマウンドーでも同様の報告があった。われわれはこのような犯罪を心から非難する。彼らの言動はロヒンギャのコミュニティを代表するものではない。私たちは、このような攻撃で家や持ち物を失う痛みを十分すぎるほど理解しており、このような犯罪の犠牲となったラカイン族の人々と完全に連帯している。

このような背景の中、AAによるロヒンギャに対する国際法違反や戦争犯罪と思われる行為は激しさを増し、レトリックも明らかに変化している。ULA/AAの指導部は、ロヒンギャを「ベンガル人」と繰り返し呼び、ロヒンギャはバングラデシュから来た部外者であり、「イスラム過激派」であることを示唆する蔑称として用いている。

すべての武装組織は国際法を遵守すべき

国際人道法は、国内武力紛争の全当事者に対し、民間人および民間施設への危害を最小化するための予防措置をとることを求めている。締約国は、兵士と民間人、また軍事施設と学校や病院などの民間施設を区別しなければならない。民間人に対する報復攻撃は、他の紛争当事者の行動如何にかかわらず、いかなる状況においても禁止されている。民間人および民間施設に対する攻撃および略奪は禁止されており、戦争犯罪となる可能性がある。民間人の強制退去は、重大な危険から民間人を保護するため、または軍事的に重大な理由のある場合など、例外的な状況においてのみ正当化される。

ULA/AAへの提言

ロヒンギャ各団体は、AAに対し、ロヒンギャコミュニティの人権侵害と集団強制移住を直ちにやめるよう求める。われわれは、ロヒンギャ市民を保護し、現在の危機を解決するために、ULA/AAとの緊急対話を求める。

われわれは、ULA/AA指導部に対し、国軍が仕掛ける分割統治ゲームの罠にはまり、ラカイン州の人々を互いに対立させようとしないよう求める。それによって利益を得るのは国軍だけだ。

自由なラカイン州が大規模な人権侵害で始まれば、世界の目には永遠に汚点として映るだろう。ラカインなど各民族がビルマ族に支配されたり虐待されたりすることを望まないように、ラカイン州のロヒンギャを含む民族的・宗教的少数派もラカイン族に支配されたり虐待されたりすることを望んでいない。

ロヒンギャは、国軍支配下ではなく、アラカンで対等に暮らしたいのだ。われわれは、ロヒンギャの尊厳とアイデンティティーの尊重に根ざした平等な条件で、ラカイン族や他の多様な民族・宗教のコミュニティと平和的に共存してともに暮らしたいのだ。われわれが望むのは、分断状態ではなく、テーブルの席なのだ。

背景

2017年のロヒンギャ虐殺の生存者約60万人がラカイン州に残っている。推定26万人のロヒンギャがブティダウンに住んでいる。約14万人のロヒンギャがシットウェ、パウタウ、ミーボン、キャウクピュなどの沿岸部の町の収容所に閉じ込められている。数万人のロヒンギャがマウンドーにおり、他のコミュニティはラテダウン、キョクトー、ミンビャ、ムラクウに集中している。

2023年10月27日、アラカ軍(AA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)タアン民族解放軍からなる3兄弟同盟は、シャン州北部で国軍に対する1027作戦を開始した。この同盟はすぐに国軍に対して勝利を収め、国内の他の地域でも同様の作戦を鼓舞したとされている。11月13日、AAはラカイン州に目を向け、ラカイン族とロヒンギャのコミュニティがサイクロン・モカからの復興に苦闘している最中にもかかわらず、国軍への攻撃を開始した。AAは、この地域を完全に掌握するまで戦闘を止めないと繰り返し表明している。

ラカイン州における紛争のすべての当事者は、国際人道法に日常的に違反している。ロヒンギャ、ラカイン族、そしてムロ族やカマン族といった他の民族コミュニティは大きな被害を受けている。 国軍の空爆や砲撃により、何百人もの市民が犠牲になっている。

AAは、ラカイン州の17のタウンシップのうち、パウクタウ、ミンビャ、キャウクタウ、ムラク・ウ、ミーボン・ポンナギュン、ラムリー、ラテダウン、そして最近ではラカイン州北部のブティダウン・タウンシップの9つのタウンシップと、バングラデシュと国境を接するマウンドーの北部を占領した。現在、ラカイン州南部のタンドウェと北部のマウンドーで激しい戦闘が続いている。

ブティダウンとマウンドーは軍事化が進んでいる。ブティダウンには国軍の大隊の基地がロヒンギャの村の近くにあり、マウンドーには国境警備隊の前哨基地がロヒンギャの村の隣にある。ロヒンギャの村々は、AAが大砲による攻撃を開始し、国軍が空爆を行ったため、戦場と化している。

AAがブティダウンを占領したため、マウンドーでも今後数日から数週間のうちに戦闘がさらに激化する可能性が高い。地元メディアの報道によると、国軍はここ数日、軽歩兵師団(LID)22から500人の部隊をマウンドーに追加配備したという。2019年に紛争が発生した際、LID22はラカイン族とロヒンギャのコミュニティに対する戦争犯罪で告発された。

国軍による計画的な通信遮断のため、ラカイン州からの情報発信は遅れている。ラカイン州北部の大部分ではインターネットアクセスと携帯電話ネットワークがほぼ遮断されており、残虐犯罪のリスクが高まっている。バングラデシュのSimカードを持つロヒンギャとは、断続的で散発的な通信が可能なこともあるが、一般に接続状態は非常に悪い。

署名

  • Arakan Rohingya Development Association – Australia

  • Arakan Rohingya National Organisation (ARNO)

  • Arakan Rohingya Union (ARU)

  • Australian Burmese Rohingya Organization

  • British Rohingya Community UK

  • Burmese Rohingya Association in Japan (BRAJ)

  • Burmese Rohingya Association in Queensland- Australia (BRAQA)

  • Burmese Rohingya Association of North America (BRANA)

  • Burmese Rohingya Community in Denmark (BRCD)

  • Burmese Rohingya Community Netherlands (BRCNL)

  • Burmese Rohingya Organisation UK (BROUK)

  • Burmeses Rohingya Community of Georgia, Atlanta (BRCG)

  • Canadian Burmese Rohingya Organisation

  • European Rohingya Council (ERC)

  • Free Rohingya Coalition (FRC)

  • Los Angeles Rohingya Association

  • Rohingya Action Ireland

  • Rohingya American Council (RAC)

  • Rohingya Association of Canada

  • Rohingya Centre Canada

  • Rohingya Community in Japan (RCJ)

  • Rohingya Community in Norway (RCN)

  • Rohingya Human Rights Initiative

  • Rohingya Human Rights Network

  • Rohingya Organisation Norway (RON)

  • Rohingya Women Development Network-RWDN

  • RW Welfare Society (RWWS)

  • Swedish Rohingya Association (SRA)

参考


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