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Official髭男dism『ミックスナッツ』MVで描かれるスワンプマンな家族

また素晴らしい曲が出ましたね。今回はMVについて考察していきます。


スワンプマン

1987年にアメリカの哲学者デヴィッドソンが提唱した「スワンプマン」という思考実験があります。

山に出かけた男が雷に打たれて死んでしまう。このとき、すぐそばの沼にも雷が落ち、沼との化学変化によって男と全く同じ記憶・形状の生物ができた。この生物をスワンプマン(沼男)と呼ぼう。スワンプマンは、原子レベルで死んだ男と同一の存在であり、死んだ男と全く同じように、生活し始めた。このとき、スワンプマンと死んだ男は何が違うのだろうか?

スワンプマンの問題は、<私>とは何者なのか、<私>であり続けるためには何が必要なのか、という人のアイデンティティを問いかけています。


場面1:雷が落ちて両親が消え、再び現れる

さて、『ミックスナッツ』のMVでは、娘・父・母という3人の家族が描かれます。これは、当然『SPY×FAMILY』の家族構成を意識しているのだと思います。

不気味な館に雷が落ちて、両親が消えてしまう場面から始まります。

しばらくすると、両親が再び登場します。

考察1:両親はスワンプマンか?

この描写がスワンプマンを表現しているのだと考えると、後半に登場した両親は、雷が落ちたことによって消えてしまった両親と同一なのか?という問いが生まれます。
つまり娘にとって「自分の両親は本物の家族なのか?」「本物の家族とは何か?」という『SPY×FAMILY』の核となるメッセージに繋がります。
娘は「自分は本当に家族の一員なのか?」という疑問を抱いており、その不安や恐怖を取り払ってくれるのがこのMVや歌詞であると考えられます。


場面2:館の深層にあった時限爆弾

娘は両親を見失って戸惑います。そして館を彷徨った末に、「CAUTION」で閉ざされていた部屋に飛び込みます。

そこにあったのは、赤い線と青い線で繋がれた時限爆弾でした。

それを見た娘は逃げ出しますが、その後で両親が同じ部屋に現れ、赤い線を切ります。

すると両親と娘は再び出会い、3人で明るくて楽しい髭男ライブを聞くことができたのです(こんな間近で見られるなんて、羨ましい)。

考察2:家族とは何か?

娘と両親が再会できたのは、父親が時限爆弾の赤い線を切ったからでした。娘が「自分の家族は本物か?」という不安を抱えているなら、その不安要素としてまず考えられるのは「自分と両親との間に血縁関係があるか?」ということかと思います。『ミックスナッツ』サビの歌詞「隠し事だらけ 継ぎ接ぎだらけのHome, you know?」や『SPY×FAMILY』のストーリーを踏まえると、娘と両親の間には血縁関係は無いが、継ぎ接ぎだとしてもそこはHomeである、という強烈なメッセージが浮かび上がってきます。
このことから、赤い線は「娘と両親は血縁関係がある」、青い線は「娘と両親は血縁関係がない」ということを表すと考えられます。両親が赤い線を切ったことにより、時計と爆弾は青い線(非血縁関係)だけで繋がります。しかし、青い線だけで繋がっていたとしても、スワンプマンだったとしても、娘と両親はまた集まり、笑い合うことができるのです。

では「CAUTION」の部屋は何を表しているのでしょうか?
娘にとっての不安要因の核である時限爆弾が置かれていたこと、娘が彷徨った末に辿り着いた場所であることを踏まえると、「CAUTION」の部屋は娘の心の深層を表すと考えられます。


『ミックスナッツ』とは何だったのか

最後に、『ミックスナッツ』とは何だったのでしょうか?
MVの最後で髭男から娘に渡されたプレゼントは時限爆弾であり、その正体はミックスナッツでした。ここまで考えてきたMVからの考察を踏まえると、髭男からのメッセージは、家族にはどんなあり方があってもいいということに集約され、それはつまり、

「ここに僕がいて あなたが居る この真実だけでもう 胃がもたれてゆく」

ということになるでしょう。


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