小5 青い鳥はどこにいるの
小学校五年生の時、同級生の女の子から舞台『青い鳥』のチケットをもらった。その時までその子が児童劇団に入っていることは知らなかった。
公演は有楽町の劇場だったと思うが、私は品川の祖父の家に行き慣れていたので、電車で行くのはどうってことなかった。チケットはほかの子ももらったが、東京に子供だけで行くなんて無理、と思っていて見に行くことは諦めていた。
「私は東京の電車が分かるから一緒に行こうよ」と言ってみんなを誘い、親には黙って六人で行くことになった。
千葉の津田沼駅から総武線に乗って秋葉原まで行き、そこから山手線に乗り換えて有楽町で降りた。
『青い鳥』の公演には十分間に合った。劇団の子どもたちは皆堂々として、大人のようにしっかりと役を演じていた。私の友達が何役かは忘れてしまったが、学校で見るのとはまるっきり違って立派な役者さんだった。
私はすっかりお話の世界に引き込まれていた。話がいよいよ後半に差し掛かるころ、一緒に行った友達たちがそわそわしてきた。
「そろそろ帰らないと遅くなっちゃうよ」
「えー?まだ話は終わっていないよ」
「でも、お母さんに言ってこなかったから、遅くなると心配する」
「そうだよ、もう帰らなくちゃ」
「帰ろう、帰ろう」
ということで、みんなの意見が多数を占め、途中で帰ることになった。
せっかくいいところなのになあ、と思ったが仕方ない。
電車の中でも
「遅いって探してないかな?」
「誰かの家に電話してるかもしれない」
「怒られたらどうしよう」とみんなひやひやしていた。
家に帰ると母がひどく怒っていた。
「こんなに遅くまで、どこに行ってたの?」
「有楽町で『青い鳥』の公演見てきた」
「え?一人で?」
「ううん、友達と六人で」
「みんなも何も言わないで行ったの?」
「うん、だって言ったらダメって言われるから」
「当たり前でしょ!」
「でも、みんな遅くなるからって最後まで観れなかった」
「何言ってんの、まったくもう!」
翌日、学校で会うと、みんな家でコテンパンに怒られたそうだ。連れて行った私が悪いのだが、親たちはきっと私を相当な不良と判断したに違いない。
『青い鳥』に出た友達は、私たちが大勢で見に行ったことをとても喜んでくれた。でも、途中で帰ったことは知らないので、『青い鳥』のお話には触れないでおいた。
それにしても、最後までちゃんと見たかったなあ。
青い鳥はどこにいたのかな。