見出し画像

5歳 じゃがいもフライはおいしいよ

品川に住んでいた時、揚げ物を食べたいときはお肉屋さんに買いに行った。
お肉屋さんにはハムや肉のほか、ポテトサラダやコロッケやメンチなどのフライも売っていた。

その中でも、私の一番の好物はじゃがいものフライだった。茹でたじゃがいもを大きく切り分けて、小麦粉をまぶしてから卵液につけてパン粉をつけて揚げるというものだ。
じゃがいもコロッケではなく、言葉の通りじゃがいものフライだ。揚げたてのアツアツがたまらなく美味しいが、そうタイミング良くはいかない。
まあ、少しぐらい冷めても、とってもおいしいのだ。

昔は電子レンジもなく、温め直すということができなかったので、
「ちょうど、もうすぐ揚がるよ」なんて言われたら、大喜びだった。

アツアツのじゃがいもフライを経木(薄い木の板)に包んで、経木ひもで結んで薄いピンクの紙に包んでくれる。買い物には手提げカゴを持って行ったから、それに入れればつぶれる心配はなかった。
それに、揚げたての熱い包みを子供が手に持って歩くのは危なかった。
手提げカゴは赤や青のカラフルなビニールで編まれていて、底が平らで結構たくさん入った。子供用のカゴも売っていて、お母さんごっこをするには必需品だった。

そのカゴをもって「今日はサンマが安かったのよ~」とか、
「今なら肉屋さんで揚げたてのコロッケあるわよ」とか言って遊んだ。

夕方の商店街は毎日の食材を求める人でいっぱいだった。
なにしろ、冷蔵庫がなくてその日に食べる食材をその日に買いに行くのだから、お肉屋にはいつも長い列ができていた。

魚屋さんも新鮮な魚をその日のうちに売ってしまいたいから、掛け声とともに、経木に書いた値段を時間と共に書き換えていく。魚屋さんのお金は上からゴムでぶら下がった大きなカゴに入れていた。カゴをグィーンと引っ張り、そこにお金を入れたりお釣りを出したりしていた。

夕飯の時に、前日の余ったご飯を食べるときがある。その時は、蒸し器に入れてしばらく蒸さなければならない。母はついでに硬くなった食パンなども入れた。

「ご飯粒のついたパンを食べたことがある」なんて言ったら、年齢がわかってしまいますよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?