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64歳 植物が好きになるお年頃
若い頃は、年配の人たちが花や家庭菜園に興味を示すのを不思議に思っていたが、いざ自分がその年齢になると、何故か同じように植物に気持ちがひきつけられる。
とは言っても我が家は平屋の借家で、車を停めるスペースはあるが庭はない。それに東も南も建物に囲まれて、一日中ほとんど日が当たらない。
玄関前のスペースなら朝方の太陽が少しは当たりそうだと思い、植木鉢で楽しむことにした。ホームセンターで直径40cmほどの植木鉢を2個と季節の花をいくつか買って寄せ植えした。殺風景だった玄関が一気に明るくなった。道を曲がるとすぐに我が家の花が目に飛び込んでくる。私の帰りを待ちわびていたかのような嬉しい気分にさせてくれる。
花によっては、あっという間に終わってしまうものもあるが、思いがけずに何か月も咲いてくれる花もあり、そんな花はどこで終わらせようか(捨てるか)迷ってしまう。
秋になると、植木鉢の土を入れ替えて、春に咲かせるチューリップの球根を植える。花を見るまでは大分先だが寒さにも強く手間もかからないので、私のような初心者にはとても扱いやすい。肥料のことなども袋に書いてあるので困ることはない。以前は値段が安くてたくさん入っている球根を選んでいたが、芽が出てから花が終わるまでたっぷりと楽しませてくれるチューリップにあまりケチケチしないことにした。
家の中でも植物を楽しみたいが、土の入った植木鉢は肥料や水やりが難しく、これまでいくつもダメにしてしまった。ある時、観葉植物が伸びすぎてハサミで切った後、捨てるのがもったいなく一輪挿しに入れておいた。すると知らないうちに根っこがたくさん生えて、今も元気に伸び続けている。仕事場からもらってきた観葉植物の切れ端も水に入れてみたところ、見事に根を出してくれた。こんな簡単な方法なら私にもできると次々と水にさした。
今、玄関の外には色のある花、中に入ると緑の観葉植物が迎えてくれる。緑がある生活は気持ちがいい。
それにしても、なぜ年を取ると植物が好きになるのだろう。
自然のものは多種多様で楽しい、予想通りになる、世話の仕方で成長が変わる、とかいろいろあるが、特に、「静か」「裏切らない」「反抗しない」この辺りが大きな人気の理由ではないかと思うのだが。