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小6 見た目ほどは聞こえない楽器

私は身長が158cmだが、これは小学校五年生からまったく変わっていない。
子供の頃はほかの子よりだいぶ背が高く、何でも大きいものをやらせられた。

運動会の行進に出る鼓笛隊で、私は希望もしていないのに鉄琴(ベルリラとかグロッケン)を弾くことになった。鉄琴といっても歩きながら弾くマーチング用のもので、ベルトを腰に巻いて、そのベルトの穴に鉄琴の軸を旗のように差して左手で支えながら上を向いて右手のバチで弾くというものだ。

体が大きいからそれになるのなら、先頭でバトンを振る指揮者をやりたかったのだが。

鉄琴は腰のベルトで支えられているとはいっても、歩きながら弾くのは結構大変だ。ずっと上を向いていなければいけないから、まっすぐ歩くのも難しい。鉄琴の音は澄んできれいだが、たくさんの小太鼓やリコーダー、大太鼓、シンバルの音と一緒になるとほとんど聞こえない。間違っていてもわからない。要するに、マーチングの構成上、見た目がいいということなのだろう。

六年生になったら鉄琴から解放されたが、仲間と一緒にやりたかった小太鼓ではなく、今度はトップグループの後に続く、第二グループの指揮者だった。

遠い先頭を行くトップの指揮者のバトンを見ながら、動きを合わせなくてはいけなかった。バトンも曲の間はずっと斜め上下に動かさなくてはならず、疲れてくると動きが小さくなって先生から怒られる。おそらく先生はやったことはないのだ。小学生は先生の言われるままに一生懸命やるから、何十年もたって、こんな風に愚痴をこぼされることになることを先生たちは覚悟してほしい。

先日、友人と子どもの頃の話をした。友人といっても私より四十歳も若い。だからこども時代もかなり違う。彼女も幼いころから背が高かったそうで、今は167cmある。 

私が鉄琴の話をしたら

「鉄琴ならいいですよ!」という。

「え? 何だったの?」

「私なんか、大太鼓ですよ!」

「え? 大太鼓もベルトで体に固定するの?」

「そうですよ!」

「えー!あんな大きなものを・・・そ、それは大変!」

一瞬の間があいて、二人して大笑いしてしまった。

大きい体を勝手に使わないでほしいものだ。

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