業界分析 〜ビール上位4社〜
ビール業界ランキング
1 アサヒ
2 キリン
3 サントリー
4 サッポロ
業界特徴〜前提条件〜 → 「苦しい状況は続く」マイナス
①少子高齢化
社会的要因 飲む絶対量の減少
②消費増税傾向の煽りをもろに食らう
日々の生活に直結していればしている程、削られる要素としてあげられやすい酒類
③コロナウイルスによる売上減退(一時的)
これは今後長い目ではなく目先の話に限りますが、巣篭もり需要で家庭内消費は増加傾向にあるものの外食産業向けが著しく減少による縮小化
「今後どうしていくべきか」の展望
国内・・・ イノベーション商品を生み出す(難易度高)
海外・・・ 資金が重要。
→日本の飲食メーカーは海外戦略が弱い。プレイヤー(企業数)が多すぎて世界に出て個別企業で戦える規模ではない。
これは悪循環で、
①企業細分化 → ②利益が配分化される → ③世界のトップ5企業との売上、利益の差がありすぎて、海外(全世界)での甘い蜜を吸うことが困難。
現段階で世界でもプレゼンスのある日本の食品メーカーは、
「味の素」「キッコーマン」「ヤマサ」等の調味料メーカーが強い。
その背景は、
戦争の頃、草などをも食していた日本人はお腹を壊すため火を通す必要があり、その際に調味料を必要とした。戦争後、国内で調味料産業は比較的早く立て直しが成功したため、いち早く世界へと進出することができたため。
(調味料業界上位のキューピーは、マヨネーズがフランスからきたもので、日本人への浸透が遅く、世界進出も遅れたため海外は相対的には厳しい)
このような業界のマクロな前提条件と今後の予測を踏まえて、業界内上位各社について分析していく。
分析手法として有効な考え方は、”縦と横”で考えること。
縦・・・過去から現在の成り立ちから、将来どうなるかを推測していく
横・・・業界内の競合他社に比べて、どのような特徴があるのかをみる
→結果、その企業の業界内での特徴が見え、今後どのようになるかの想像ができる。また、特徴がわかることで、業界内1位の企業以外の志望動機も明確に主張することができるようになる。
それでは見ていきましょう。
1 アサヒ
特徴
◻︎男女比が飲料メーカーにしてはおかしい「ザ・男社会」ざっくり8対2
◻︎「酒類」への依存度が9割程度と非常に高い
→1人あたりの飲む絶対量が男性の方が多い → ビールにおいては1位
トピック
◻︎カルピス買収
社風として”男社会”の色があったが、カルピスは”男”とは言い切れない。これはなんのメッセージ性だったのだろうか。
「酒類(ビール)」への依存度を減らして分散したいという意図の現れだったのではないかと予測。他、主要飲料は三ツ矢サイダーあたりしかないため。
歴史
従来
社長・・・銀行出身者で社外取締役等が多数、名を連ねていた
現在
社長・・・社内で育った叩き上げの社員が社長に。
社内に大学を設置・・・将来の社内教育に積極的。
社内大学の出身者(有志)で、50人程も、有能な経営層候補を確保しているとの話も。→人材教育に長けているか。
今後の展望 ・・・
ジュース(飲料)で勝負する可能性もあるが、ここはキリンの得意な庭
海外比率も10%程度で、海外進出も厳しか(サントリーが先手)
過去の実績
アサヒスーパードライを作り、世の中に”男の仕事終わりにカンパイの一杯”といえば「ビール」を定着させた。
今後のアイデア
ビールのように、新たな”常識”の定着を産むような、男社会ならではのアイデアが出てくると、インパクトがある。
2 キリン
特徴 女性が働くならココ!
◻︎女性の尊重
◻︎消費者目線の商品開発力
トピック
◻︎オフィス移転
中央区新川→中野区の下町へ移転 ”消費者の目線で商品開発”の機運を感じる(しかもその後売上増加)
※さらに新オフィスでは、会議スペース等を縮小し、フリースペースなどを増やし、”何気ない会話から発想が生まれる”仕組みが整備されている。
→アイデア商品「発泡酒”のどごし生”は圧倒的1位」
◻︎女性の働きやすさと活躍
過去、戦争時代「男は働き、女は家内」
1982年この状況を改善すべく、男女雇用機会均等法が執行された。
しかしその前から唯一、”女性尊重”を推進していた企業。
その一例として、「女性育児制度」などを世で初めて実施したが、これは当時不発に終わっている。当時は、”社員の理解がまだない中で、制度だけが先歩きしてしまっていた”という状態。
この反省を活かし、
2007年、女性が働きやすいプロジェクトを実施
女性の離職率改善を図り、原因としては「産後の居場所がない」ということをあげ、
①育児休暇を短くした (元々の3年から短縮)→長く離れるほど戻りづらいことの改善を図る
②女性の直上司の研修を充実させた →若手がキャリアプランを描きやすい
”女性には重い仕事を回さない”などはなく、”平等”を推進。
→結果、女性の離職率が低いことに現れている。
また、働きやすさの現れは「有給消化率」からも垣間見える。
大手企業であれば10日もあれば普通だが、16日とかある。
沢山働くことが美とされる日本において、女性の働きやすさが見える。
女性の活躍が見える商品実績
①ノンアルコールビール(キリンフリー)
2002年、道路交通法強化で飲酒運転に関して罰金が厳しくなった。
お酒を飲みたがる男性を止める役目は女性にも。女性目線で世の中で初となる、ノンアルコールビールがキリンから発売。
②午後の紅茶
男からは出ない発想。
3 サントリー
特徴
日本を代表する一族経営
世界進出に期待
◻︎トピック
根強い家族経営 (他でいうと、出光・大塚製薬なども)
現在、社長5代目(1〜4代が一族:4代社長が今の会長)
▽創業者 ・・・鳥井信治郎
明治32年、大阪市”鳥井商店”ブドウ酒から創業した。
京都郊外の山崎で日本初の「ウイスキー工場」を設立。
昭和4年、国内初のウイスキー販売、一気に日本中にウイスキーを広めた。
▽2代目 佐治敬三(鳥井の次男を婿に出した)
ウイスキーで名を博して凄いのに息子を婿に出した。
ここで推測できるのは「相手の家柄の方が凄いはず(苗字を変えるほど)」
→佐治家:東京大学総長の家柄に嫁いだ
ウイスキーで儲かって得た資金を使って、”ビール業”へ進出
この時、医薬品部門にも進出している。数年前にそれを第一三共へ売却した
→その資金で世界に出ようとした。
2代目社長は文化人としても有名(この背景は東大の家柄が影響しているのか)
サントリー美術館を造った。
▽3代目 鳥井信一郎(創業者の長男の息子)在任1990〜2001年
この代でウイスキーの売上激減
・ビールで人気需要↓↓(ビールは他企業の方が上だった)
・医療品開発費
↓
赤字で潰れる寸前といってもいい状態にまで一時は減退
ここに起死回生の一手が
缶コーヒー「BOSS」の発売 (他:なっちゃん、伊右衛門、デカビタC等も)
酒もやるけど、とりあえず飲料ジュースでヒットを生みまくった
▽4代目 佐治信忠
・とにかくハイスピードでグローバル化(医療品も販売)
・上場して軍資金大量獲得
”上場式に社長欠席” … 辞める予兆
この時、鳥井一族の人が社長の子会社「サントリー食品」の社長へ。
一族の人間が45歳と若いため、一時実力者を一度据え、6代目で一族経営に戻すだろう
→ローソンの代表取締役経験者が5代目へ
”やってみなはれ精神”
それぞれの代の社長が何か功績を残してバトンタッチしてきた
これがローソンの社長経験者でどうなるか
この5代目社長は合理的で、ローソンをグイグイ上げてきた人
今後
ビール市場はコンビニ業界が非常に重要で外せない。
PB(プライベート・ブランド)で、スーパーはほぼない。メインターゲットはコンビニになるだろう。
各社、コンビニのオファー断れないレベルに地位が上がってきているため、ビールはコンビニが重要。
M&A
ローソン時代、99ショップ等を買収した人。M&Aなど得意なんだろう。
三菱商事(世界)からローソン(国内)に出向した人。
そこのエースだったこの人の抜擢は合理的な判断。
製薬メーカーのグラクソスミスの買収(約2000億円)
ジュースで良い商品を持っている
ビーム社の買収(約1.6兆円)→これは上場資金がぶっ飛ぶレベル
洋酒で良い商品を持っている
→世界進出の意気込み。「お金で時間を買った」意向の表れ
ビール業界は、嗜好品の一種でもある為景気や社会情勢の影響も受けやすい。また少子高齢化でのマイナス要因もある為、今後企業の特色ごとに、どういった戦略で動いていくかが見ものである。