【読書録】ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと
著 小山田 育 | 渡邊 デルーカ 瞳
ニューヨークで過ごしてきた彼女たちだからこそ伝えられる、ブランディングの考え方と進め方。
マーケターの書いた難しいブランディング書籍より気軽に、デザーナーの書いたブランディング書籍より実践的に読んでもらえるようにつくりました。
まさにこの通りの書籍だったように思う。ブランディングのブの字も知らないような私ですら、実践してみたくなった。
ニューヨークの視点から見た日本のデザイン事情
「デザインする」とは、クライアントを理解し、課題の解決方法を可視化して、伝わるかたちに落とし込んでいくことだと著者は綴っている。
日本のデザイン事務所では、“見た目の良いもの”をつくっている、つくらざるを得ないところが多くあり、デザイン観として固まってしまっているこの考え方から抜け出す必要があるという。
日本人の不得意とするものは“伝えること”であり、根本的な考え方が英語圏のディレクターとは違っていることに驚いた。
例えばメールひとつとっても、日本では行間や空気を読んでもらうことを念頭に作成するのに対し、英語圏のものは伝わらなかったら責任は発信者側にあるというスタンス。具体的な内容をシンプルに文面に落とし込む。
請求書メールだと、支払日や振込先、急いでくれといった一言まで添える場合もあるらしい。
日本人との違いは「伝えようと努力する姿勢」だ。という言葉は、わたし自身にも深く響いた。
今後仕事をしていく上でも心に留めておかないといけない一言だと感じた。
伝える人に嘘をつかない
ブランディングで大切なのは、一貫性。
消費者や関わる人たちが触れ合うどのポイントにおいても、同じ世界観で同じメッセージを伝えなければならない。
実践編でも詳しく語られているが、ブランディング対象が世の中に与えるものや、何を大切に考えているかの軸が定まっていないと、その上に積み重ねるデザインもグラグラになってしまう。
ブランディングは私の中で、見た目のイメージを整えるイメージが強かったが、本書ではその前段階のDNA(そのブランドの決定において全てを立ち返る指針)が重要視されていて、固めなければならない要素も多い。
一番初めに出てくるのはターゲットだった。普段から仕事柄、広告のターゲットを意識して過ごしているわたしは、改めて伝えるためのターゲティングの大切さを感じた。
この本片手にブランディングをしてみたい
本書の半分は実践的な話だ。
ブランディングに際して重要な「ブランドシステム」。その中に包括される「ブランドDNA」と「ビジュアル・アイデンティティ」の決め方から注意点までが細かく書かれている。
一から順に追っていったら私にもできるんじゃないかと思うくらい簡潔に、要点を抑えて書いてくれている。
大半の日本人がブランディングを理解できていないのなら、きっとこの知識を実践できる場も多いはず。
アンテナを張って日々過ごしていきたい。