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南フランスに魅せられて。
昨晩はリヨンを少し回って就寝。時差ボケのせいか夜中3-4時に一度目が覚めた。すると外から若者の荒れた声がする。リヨンは昨年の暴動でも被害が出ていたから夜中出歩くのは少し危険なのかもしれない。二度寝して6時に起床。今日は南仏に行くため日本の新幹線に当たるTGV(train à grande vitesse)に乗る。朝7時前というのに外は真っ暗で驚いた。フランスの秋や冬は、日の出が遅く8時頃だったと思い出す。昨晩の余韻があり、再び散歩。こんな贅沢な散歩に決して飽きることはない。バス停が破損されていて数ヶ月前の暴動の傷跡と思われる。
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リヨン・パールデュー駅に着いた。人の出入りが多いことから相変わらず人混みが凄いが東京よりはマシ。TGVが来るまで駅構内にあるRelayで本や雑誌に目を向ける。Le mondeやLe Pointなど実際の紙媒体を見たのはいつぶりだろう。新宿三丁目の紀伊國屋にも全く足を運んでいなかった。どのメディアも表紙を飾るのはイスラム過激派やテロ問題。中東情勢によりフランス北部の高校で卒業生が教師を殺害した。そのことでテロ警戒レベルはMAX。留学していた8-9年前に起きたLe 13 novembreと同じ状況だった。この旅行と被るのは必然なのか偶然なのか。
時間が来たのでTGVに乗って南仏へ向かう。目的地はエクサンプロバンス(エクス)。初めて訪れる街だ。以前から気になっていて、フランス人が老後に住みたい街として人気だ。大学もあり、日本人留学生も一定数は居ると思われる。二階建ての窓際の席にしたのはTGVの旅を楽しみたかったから。心を無にして、ひたすら風景を眺めるのも悪くない。
iPadでNetflixを開いてみた。フランスのNetflixに切り替わるのでフランスのドラマや映画が日本より断然品揃いが良い。パラパラ見ていると前から見たかった"DEUX MOI"があった(邦題:パリのどこかであなたと)。フランソワ・シビルやピエール・ニネなど今フランスで大人気の若手俳優が出ている作品。夢中になって見ていたら、電車は途中下車駅のアビニョンに到着。世界遺産が多く残るこの街にも行ってみたい。次回時間ある時にまた来ようと思った。
エクスに到着し、バス停まで向かう。TGVのある駅から市街地までは遠いためバスを使うのが一般的だ。事前に調べた通りにバス停まで行き、バスを発見。乗ろうとしたら出発寸前だったようで少し怒られた。交通カードも作り、無事乗車した。市街地まで体感15分くらいだったと思う。到着後、少し歩くとエクスの有名な噴水が出迎えた。街並みも良く、暖色の建物が一面に広がって心地良い。朝ご飯は視界に直ぐ入った店に行く。恐らく観光客慣れしているためか店員の態度も良かった(フランス語で話しかけたからなのかもしれない)。テラスで食べると雰囲気もあって一層美味しく感じる。近くでマルシェも開かれていて惣菜や野菜、花、蜂蜜など色とりどりの物が売られていた。マルシェで家族やお世話になっている方へマルセイユ石鹸を買った。
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エクスにはセザンヌの絵が展示されている有名な美術館、そしてセザンヌのアトリエに行くことが目的だった。美術館巡りが好きになったのも学生時代のフランス留学がきっかけ。事前に予約を済ませておいたのでスムーズだった(セザンヌのアトリエは当日券で入るのは無理だろう)。アトリエは市街地より離れたところにあり約30分歩く、いや登ったという表現が正しい。平坦な道から途中坂道に変わったため。エクスはリヨンよりも南に位置するため日中は暑く、この坂道で若干汗ばんだ。着いたら人が列を作って待っていた。時間になり、中に入ってアトリエに案内された。もうそこは美術館で何度も見た静止画の果物や家具があって感動が止まらなかった。窓から溢れ出る木漏れ日も素晴らしい。アトリエを楽しんだ後は美術館へ向かう。今度は市街地の南なので真逆の方向。念願の美術館に到着。独特なセザンヌの絵を鑑賞を楽しんでいたらモネの絵を発見した。今まで見てきたモネの絵と印象が異なったので撮影。この色合いは自分の好みだった。
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エクスは人も優しくて、街並みは綺麗でとても気に入った。フランスに永住したくはないけど、ここなら住めるかもしれないと思った。高揚感も束の間、一日中歩き回ったので流石に疲労が溜まった。南仏と言えど夕方になると寒くなるので体調管理も難しい。バスに乗って、TGVの駅まで行く。少し小腹が減ったのでPAULでマカロンとコーヒーを買った。東京にもあるが現地で食べる方が断然美味しい。駅からはセザンヌでお馴染みのサントヴィクトワールの山が見えて、なんと額縁が設置されている。なんて洒落た演出なんだと感心した。エクスは想像以上に良かったので絶対にまた訪れたい。温暖な気候から街並み、人の全てが良かった南仏が心のオアシスなのかもしれない。
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