それでは、威風堂々
『相棒』というテレビドラマシリーズがある。
いわゆる窓際族的な立場の警察官2人が毎回難事件を解決する、(大抵は)一話完結型のドラマである。たまにスペシャルや映画をやっていたりする。
ドラマの内容の詳しい説明・解釈はファンの皆様方にお任せするが、作中で印象的な場面にエルガー作曲の行進曲「威風堂々」第1番が流れるのである。
話は変わるが、大学の入学式において、入場の際に「威風堂々」が流れた。大学の管弦楽団による演奏だったのだが、高校時代弦楽部に所属しており、チェロを弾いていた身としては(私の演奏はゴーシュの約5億倍下手だったのだが)、これがまた何というかあまり上手くなかったわけで。
じゃあお前は弾けるのかよと言われれば何とも言えないのだが、第1志望の大学についひと月ほど前に不合格になってこの大学に入学したことと、当日の嵐のような悪天候も相俟って、これから先の大学生活に言いようの無い不安を覚える「威風堂々」だと思った記憶がある。
時は流れ卒業式。
4年間何だかんだ言いつつも波乱万丈七転八倒、望むと望まざるとに拘わらず大いに経験値の上がることとなった時間を過ごし、再び入学式と同じホールに立った。(ちなみにその楽団には所属しなかった)
今度は「威風堂々」が学長とかのなんかエラい人の入場の際に流れ、4年間で経験者が入学したのか練習を見直したのか、かなりマシになった「威風堂々」を聴くことができた。
所用により卒業式を最後の方で抜け出す必要があり、こっそりホールの通用口を通り抜けようとした時に、退場の際の「威風堂々」が流れ始めた。
ホールの通用口を、卒業式関係者の流れに逆らって出口に向かう私の耳に届く「威風堂々」。学問の府を去らねばならぬ寂寞、新たな世界に向かう不安、そしてその先にあるともないともわからない希かな望み。何となく『相棒』の一場面、それも「威風堂々」が流れる一場面を頭の隅で思い出した。(ほら、あの、ちょっとカッコつけたいお年頃なわけでして、「相棒っぽくね?」とかって思っちゃったわけですよ)
この3月末で私は退職する。つまりは今日が最後の出勤ということだ。
これから先のことは何も考えていないといえば嘘になるが、何も定まっていないというのは事実である。
成功するか、失敗するか。自分を節制するか、自堕落な生活を送るか。這い上がるか、野垂れ死ぬか。全てが自分次第のギャンブルである。ただ、普通のギャンブルと異なるのは勝率が自らに委ねられていることだろう。ま、胴元が「運命」の時点でどう転がるかわからないものなのだけれども。
もう「威風堂々」を演奏してくれる楽団はいない。
自分の周りには共に旅立つ友もいない。
この先の人生をどう生きるか、ただそれのみを、己の命を掛け金にして考えながら独り歩いていくのみである。
https://m.youtube.com/watch?v=4gHCWMKSoZ4
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現在無職。文章を書いたり、何か面白そうなアイデアを出したりして、誰かの人生が豊かになれば良いなと思っている。