移動の記録／別所温泉と別所線（22年6月）
別所線はかつて上田丸子電鉄（今の東急グループ上田交通）が経営していましたが、東急電鉄との関係は、昭和33年（1958年）に、長野県青木村出身で、東急電鉄の創始者である五島慶太氏が買収し、傘下にしたことから始まります。
上田丸子電鉄は当時、別所線を含む5路線を運航していましたが、モータリゼーションとともに廃線となり、別所線を残すのみとなりました。
その別所線は上田駅と別所温泉駅の15駅を28分で結ぶ2両編成のローカル線ですが、2000年代初頭まで存廃問題の波に大きく翻弄されてきました。
けれども平成16年（2004年）に、上田市による公的支援が決定し、現在でも地域住民の足として頑張っています。
私が別所線に乗ったのは6月。収穫期に入った茶色の小麦畑と、田植えが終わって間もない緑の田んぼ、その真ん中を突っ切るようにして、別所線はカタンカタンと快走しました。乗客は少なく、唯一「大学前」で座席が8割程度埋まりました。
終点駅の別所温泉駅は、「男はつらいよ」の第18作（1976年公開）でロケ地となりました。
調子に乗って旅の一座に大盤振る舞いをする寅次郎ですが、財布には金はなく、無銭投宿のかどで警察に拘留される羽目に。その身柄を保護するため妹さくらが、わざわざ東京・柴又からはるばる電車に揺られ、たどりついたのがこの別所温泉駅です。
別所温泉駅はリノベーションされてはいるものの、当時の建築構造や風情を残しており、“寅さんファン”をホッとさせるものがありました。
駅の窓口に添えられた花も、乗客は少ないけれど、決して荒廃はしていない〝駅舎文化‘’を見せてくれました。
