フランクフルトの感謝祭と動物たち
9月23日、フランクフルト中央駅から延びるカイザー通りをあてもなくブラブラと歩いていたら、感謝祭のイベントでたくさん市が立つ広場にでくわした。
農産物を加工した食べ物や飲み物を販売、昼には“食い倒れ”目当ての来訪者で大賑わいだった。平均5ユーロ程度(日本円で約700円、当時1ユーロは143円)でドイツの秋の味覚を楽しめるこのお祭りについて情報発信すると、友人たちが急遽乱入となり、4人での“食べ物”を求めての練り歩きが始まった。
マッシュルームの煮込みやソーセージサンド、地鶏タマゴを使ったワッフルなど、我々は無我夢中で食い倒れた。もとより日本よりも物価が高いドイツだが、ここにきて軒並みの物価上昇とあり、低価格で地元の味にありつける感謝祭は我々にとっても有難いものだった。
食い倒れはともかくとして、この感謝祭の見どころは、産地から出張してきた動物たちだった。牛や仔豚、羊やポニー、ガチョウたちまでいて、午前中は近くの幼稚園か学校から子どもたちが見学に訪れていた。乳しぼり体験をしたり、ステージを設けての質問コーナーもあったりと、フランクフルトの子どもたちはとてもうれしそうで興奮していた。金融都市で知られるフランクフルトのビルの谷間で、こういう「農村体験」ができるというのはすごいことだな、とも思った。
アップルワインを飲むためにカウンターに腰かけると、若いお兄さんが「ドイツでも農家を継ぐことが難しくなり、農業人口が減っている」と話していた。それを食い止めるためにも、子どもたちにとってこうしたリアルな体験は欠かせないだろうな、とも思った。もっとも一番いいのは現地に行っての現場での体験だろうけれど。
私は“道の駅愛好家”なので、日本の「道の駅」でもこういう農村体験ができるしくみはできないものか、と考えた。かつてはトイレや休憩のために設けられた「道の駅」だけど、今では飲食や土産物の販売などさまざまな付加価値がついて楽しい場所に様変わりした。さらにここに「子どものための農業体験」が加わったら、もっとすばらしいプラットフォームになるのでは?
日本も規制が厳しい国家だが、ドイツもまたそれに輪をかけた規制国家。けれども、「市民にとってプラスになること」には寛容な国家ではないかと拝察した次第。