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トイ・ストーリー3のアンディの気持ちを味わった話

タイトルをエモくしようとしてるけど、実際は「20代後半の女が、幼少期に遊んでたお人形の寄付で号泣した話」です。
言わずもがなですが、トイ・ストーリー3のネタバレを含みますので、未鑑賞の方は注意してください。
衝動的に書いているのでいつも以上に文章がぐちゃぐちゃだけど、今のこの気持ちをそのまま表したいので、あまり直しはしたくないかなあと思う。
 

午前中に配達指定した宅配を待っている最中、母からLINEが届いた。

左の金髪の子がみさちゃん、真ん中の赤ちゃんがララちゃん、右の茶髪の子がりさちゃん(仮)。

みさちゃんが私のお人形で、ララちゃんが姉との共用、りさちゃん(仮)が姉のお人形だった。
ちなみにりさちゃんが(仮)なのは、以前何かの機会にこのお人形の話になったとき、所有者の姉自身が名前を覚えていなかったからなので許してほしい。
当時なぜか姉妹揃ってチャイナ服にハマっていて、これまた何かの機会で手に入れたチャイナ服を、好んでこのお人形にお着替えさせていた。

母は保育士で、このお人形たちを、勤めている保育園に寄付したいのだと言う。

いつまでも箪笥に仕舞われたままは可哀想、という言い分には「確かにな」と頷いた。
我が家はディズニーやピクサーが好きで、当然トイ・ストーリーも履修している。
久々に新作が出たトイ・ストーリー3で、進学のために家を出るアンディと、取り残されるおもちゃたちの対比は切なかった。
最後にアンディがボニーにおもちゃたちを一つ一つ紹介しながら手渡していくシーンでは、「良いシーンだなあ、こうやっておもちゃたちは引き継がれていくんだなあ」と涙ぐんだ。
箪笥に仕舞われたまま長い時間を過ごすより、今すぐにでも遊んでくれる子供たちがいる保育園に寄付されるほうがきっとおもちゃにも良いだろう。
(できれば、母の勤める保育園の子供たちが優しいことを願うけれど)

でも、その考えとは裏腹に、LINEの通知を見た私は一瞬のうちに号泣していた。
「嫌だ!」と思う気持ちもあった。

きっと他のおもちゃなら、ここまで泣くことも無かった。
だって、写真のお人形たちは、LINEで母自身が言っている通り、母が手作りしてくれたお人形だったからだ。

当時は知る由も無かったが、私たち子供がある程度成長すると、母はしきりに「自分には趣味が無い」と主張した。
こちらからしてみれば、ディズニー・ピクサー映画をきちんと映画館で観たり、劇団四季をはじめとする演劇を好んで鑑賞するのは立派な趣味だと思うのだが、これらの趣味はまだ交際していた頃の父から影響を受けたものなのだそう。
(ちなみにその影響を与えた張本人である父は、今はそれらにそこまで熱中していない)
自分から進んで興味を持って取り組んだものじゃない、イコール、自分の趣味ではない、ということらしい。

「趣味が無い」と言い続けながらも、母は裁縫に手を伸ばす機会が多かった。
家にはミシンがあるし、色とりどりのミシン糸や刺繍糸が大量にあった。
幼い頃は「裁縫の練習や暇つぶしに」と、点線で模様が描かれた布巾を用意してくれて、刺繍糸でなぞって縫ったこともあったし、このコロナ禍でその布巾の残りを仕上げ始めている。
型紙を取ってスカートを自作してくれたこともあったし、編み物の経験もあったはずだ。
昨年私が一人暮らしをするために家を出た後、新しく作った母自身の部屋に、押し入れに仕舞っていたミシンを常設するよう置き直したのも知っている。

その母が、わざわざ先生のところに習いに行って手作りしてくれたのが、写真のお人形たちだ。

つい最近知ったのだが、このお人形たちは、ドイツを中心に生まれた「ウォルドルフ人形」と言うのだそう。
子供たちの想像力を養ったり、自身の気持ちを受け止められるように、目や口・服はできるだけシンプルにするのが好ましいらしい。(出展:スウェーデンひつじの詩舎様)
(尤も、目や口はともかくとして、服は完全にチャイナ服にしてしまったので意図からは完全に外れてしまっている。元はどういう服を着ていたのか記憶が無い。申し訳ない……)

正直、そこまではっきりとこのお人形たちとの思い出を覚えているわけではない。

お人形教室の先生の家にたくさんのウォルドルフ人形がいたこと。
チャイナ服を手に入れてウキウキしながら着替えさせたとき、意外と体がむちむちしていて、着替えさせるのが少し大変だったこと。
母が一番最初に作ったララちゃんは、実は服の下にちゃんとした体が無いことを知ってびっくりしたこと。
みさちゃんの髪を色んな風に結いすぎて、いくらブラシで梳かしても前髪が上がったまま戻らなくなってしまったこと。
「お化粧しよ!」と軽い気持ちで口紅を塗ったら擦っても落ちなくなってしまって、慌てて洗剤で洗って落としたこと。
みさちゃんのとっても小さな目と口を指で触るのが好きだったこと。

何よりも、このお人形たちを、母が私たちのために手作りしてくれたということ。

色んな思い出が一瞬で頭を駆け巡って、通知を見ただけでろくに返信もできないまま泣いてしまった。
しゃくり上げるくらい泣くのはとても久しぶりだった。
実家で面と向かって言われていたらもっと泣いていたかもしれない。
そういう点では一人暮らしで良かったな、と思った。
宅配を待つために家にいたのに、到底人に見せられない顔になった。
(ちなみに宅配は元から置き配指定にしていたのをすっかり忘れていた。そもそも出る必要すら無かった)

母はきっと、自分の発言がきっかけでこんなにも私が泣いていることなんて知らないだろう。
自分自身「この歳でこんなに泣くものか」と驚いている。
けれどやっぱり、ここまで激しく泣いてしまうのは、市販品のおもちゃと違って「母の手作りだから」というところによるものが大きい。

ぼちぼち母は終活の話をし始めている。
荷物が多い祖母の家へ週1で片付けに行っているのも相まってか断捨離をよくしているし、「樹木葬がいいな」だとか、「遺産とか何も無いけどごめんね」などそんな話をする機会が増えた。

母が手作りしてくれたこのお人形は、母が亡くなった後、母の形見になるんじゃないだろうか。

その可能性を思いついてしまったら、もう、涙腺が馬鹿になってしまった。
蘇った思い出と共に、「寄付したくない!」という気持ちが湧いてしまった。
途中で、寄付に賛成する姉からの通知も目に入って、余計に泣いた。

だけど、申し訳ないことに、私には恋人がいない。
というか、おそらくノンセクシャルと分類されるセクシュアリティで、恋愛感情は湧いても性的欲求は湧かないため、おそらく子供を望めない。
もし「将来自分の子供にこのお人形を使ってもらいたいから!」と言えればまだ良かったのだろうが、嘘を吐きたくもないため、寄付に反対するのは完全に自分のわがままになる。

そして、このまま箪笥に仕舞われて埃を被っていくのが、このお人形たちにとって本当に良いことなのか。
トイ・ストーリー3のサニーサイド保育園の子供たちやボニーのように、今遊んでくれる子供たちのところへ行ったほうが幸せなんじゃないか。

心境は完全にトイ・ストーリー3のアンディだった。
こちとら20代後半のいい歳だけど号泣しっぱなしなので、アンディがどれだけ精神的に大人だったのかがよく分かる。

台風明けで快晴の日に、一人で部屋の中で30分ほど泣きながら、うんうん唸って考えて、決めた。

寄付しよう。
でも、寄付の話を見ただけで泣いたことはちゃんと母に伝えよう。
そして、自分の気持ちの整理を付けるために、noteに書いて昇華しよう、と思った。

形見云々は単純に気まずいので、それを抜きにして返信した。

前々日までワクチン2回目接種の副反応で寝込んでいたので、その影響かと勘違いされて笑った。
違うんよ〜、と思いながら更に送った。

正直に話したら、なんと姉と共用だったララちゃんだけを寄付して、みさちゃんとりさちゃん(仮)は残してもらえることになった。
「悲しい気持ちにさせてごめん」と謝罪されたが、勝手にこちらが葛藤していただけで母は良かれと思っての発言だと思うので、特に気にしないでくれと思った。

当初寄付に賛成していた姉も、「残してほしい」という意見に変わった。
割と早い段階で寄付に賛成していたので、これには本当にびっくりした。
自分の棺に入れたい母と自分の手元に置きたい姉とで若干齟齬がありそうな気もするが、そこはまあおいおい解決すれば良い。

何も、まったく知らない人のところに行くわけではない。
長年勤めていた勤務先を辞めて、つい最近働き始めた新しい保育園だ。
辞めた勤務先が少ししがらみがあったので、それから解放されて純粋に子供がかわいい、と母が話していた。
仕事中はきっと母の良い相棒になってくれることだろう。
サニーサイド保育園のイモムシ組の子供たちのように、乱暴に扱われないことだけを祈る。
あのベロアのような触り心地の良いオレンジの服と短いほわほわの前髪を触れなくなるのは心残りだけど、コロナ禍だから仕方ない。
たくさん遊んでもらって、かわいがってもらえるといい。
コロナ禍が明けたら、洗濯したみさちゃんとりさちゃん(仮)にも会いに行けるといい。

最後に、保育園にお子さんを預けている方がいて、もしララちゃんかな?というお人形を見かけたら、お子さんにララちゃんを紹介してあげてください。

真ん中のオレンジの服を着た赤ちゃんがララちゃんです。
りさちゃん(仮)とみさちゃんという二人のお姉ちゃんが近所にいます。
お着替えはできないけれど、オレンジの服の手触りがとても気持ち良いので、ぜひ触ってみてください。
お腹をくすぐられる遊びと、丸いおててを繋いでもらうことと、抱っこが大好きな子です。
まだほんの赤ちゃんなので、優しく遊んでください。
最近勤め始めた母と一緒に保育園へ来て不安だと思うので、よく話しかけてかわいがってあげてください。
ララちゃんをよろしくお願いします。

※このnoteを書き終わるまでに思い出し泣きで3回くらい泣いてます
※もし私の知り合いでこのnoteを見かけた方がいたら、家族には秘密でお願いします。LINEのスクショとか許可取ってないので……