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麦畑を見つけに
今よりもう少し暖かくなってくると田植えシーズンが到来する。
あのきれいな緑色をした小さな苗が爽やかに一斉にそよぐ姿、楽しみで仕方がない。
田んぼによってそこに住んでいるオタマジャクシが大きかったり小さかったりするのもいい。
でも、私はそれよりも楽しみにしていることがある。
麦畑を見つけることだ。
小学校の国語の授業で習ったアリスン・アトリーの「麦畑」がずっと好きで、売られている絵本の絵はその時の教科書とは違うが、そちらも美しく今もずっと愛読している。
ストーリーは、麦畑を見に行くハリネズミにノウサギとカワネズミがついていき、麦のよさを堪能するというもの。
麦も稲も風に揺れる姿は美しいのだが、麦は穂の形も可愛く、色も黄金色なところがいい。そこだけなんとなく異国っぽさもある。
そしてお話にもあるが、麦は育つのが早くあっという間に収穫時期がきてしまうので、見つけたときはとてもラッキーなのだ。
ここで、麦畑を「見る」ではなく「見つける」と言っているのは、昨年に引っ越しをしたためである。
馴染みの麦畑を見に行けなくなったので、今年は見つけに行かないといけない。
どうやって見つけるのかと言うと、麦畑のガイドブックなんてないので、だいたいは夫に買い物などの際に車を出してもらった時に遠くまで景色を眺めながら探す。
「あれは麦?田んぼ?」と考えているうちにほとんどは通り過ぎていってしまうのだけれど。
(麦畑を探しているからゆっくり運転して!とは言えない…)
そこでは結局1回見るだけで、散歩途中にたまたま見つけたりしたものがよく行く麦畑になる。
ここは以前住んでいたところよりも家も多く、畑も少なそうなので、見つけられるかどうかドキドキしている。
また、絵本の最後のページに、ネズミが小川で麦畑を思い出したそがれるシーンがあるのだが、趣きがあり、そこもなんとも言えなく癒される。
小川も昔はたくさんあったのに多くは埋め立てられ、全然見かけなくなった。「小川」で画像を検索してもどこかの小川さんしか出てこない。
これからの子供たちは身近な自然に触れる機会がより少なくなり、遠くの山や川にでかける。父や母が昔遊んだ場所を子供に受け継ぐこともできなくなってきた。
新しい建物の恩恵を受けていることはもちろんあるが、全部が全部なくなってしまうのはさみしいなあ。