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【こんな人いたシリーズ】リサイクルショップ編 ー湯本①ー

学生のときにリサイクルショップでアルバイトを1年半くらいしていたのだが、その時の社員である湯本さん(仮名)の話しである。
実話だ。

私が働いたリサイクルショップは、町にある小さな個人経営のような店ではなく、全国にチェーン展開している大きな会社であった。

店舗は1階が他の店(スーパー)で2階がリサイクルショップであった。

その店舗には、社員が4名とアルバイトが10名くらいいた。アルバイトはフルタイムのフリーターが多くて、学生は3名程度であった。

湯本さんは、社員の中では一番下っ端だった。入社してから3年も経っていなかった。

顔立ちもはっきりしていて、ガタイも良かった。
前職はコールセンターで働いていたとのことであったので、口調は丁寧で接客はかなり良かった。

年齢も近くて親しみやすい人だった。
わたしが当時21歳だったので、26歳くらいだったと思う。とにかく人柄は良かった。
ただ少し抜けているところもあった。
勉強は苦手のようだった。

ある日、古株のフリーターの関本さん(仮名)から衝撃の話しを聞いた。
私の入社前の話しである。

「あの人、うちの軽トラを1階(スーパー)の搬入口の壁にバックでぶつけて、なにも報告しなかった」

「壁に穴が空いた」

「結局、1階のスーパーに監視カメラを確認されてバレた」

という話しを聞いたのである。
軽トラというのは、店が無料で貸し出しているやつである。
よくホームセンターでもあるが、大型家電や家具を運ぶ際にお客さんに貸し出すものである。

彼は軽トラを壁にぶつけて立ち去ったのである。
わたしは当然信じられなかった。
そんな人だとは微塵も思わなかったからだ。

搬入口は日常的によく見ていれば誰しも分かるが、絶対にバレる。監視カメラをみれば一目瞭然なのである。

それでも彼は立ち去ってシラを切ったのである。
彼の行動にかなり衝撃を受けたが、それ以上に解雇などの処分を受けないということにも衝撃を受けた。

彼に対してなにかきな臭さを感じ始めた。
そして数日後、また関本さんから衝撃の話しを聞いた。

「前にレジ金20万円がどっかいっちゃったんすよ。結局警察呼んだりしたけど、犯人分からずじまい。候補は、湯本さんか店長、現金輸送の外部業者のいずれかしかいない(笑)」

と言ってたのである。
いや20万円は笑えないが、自分の財布から出て行った金ではないので面白い。

まず、現金輸送の外部業者が盗るというのはかなり考えづらいだろう。盗る可能性も全く無いわけではないが、限りなく低いだろう。
そして、店長も盗らないだろう。

外部業者にしても、店長にしても盗んで得るものより失うものの方が大きいことに絶対に気がつくはずだからである。

そうなると、どう考えても湯本さんしかいないのである。関本さんに実は他のスタッフも皆、湯本さんの仕業だと薄々思っていると教えてもらった。

そこから数ヶ月経ったある日、システムに打ち込まれているテレビの在庫数と実際の在庫数が合わないことが判明した。

わたしは家電・家具の担当であったので、当然探した。それでも見つからなかった。
考えられる原因は、システム上の廃棄処理のし忘れか、盗まれたか..の2つしかない。

ただ店の構造上、店外に出るためにはレジの前を絶対に通る必要がある。
それを考えるとテレビを万引きされるっていうことはまずない。いや絶対にあり得ない。

残るはシステム上での廃棄のし忘れだ。
テレビは廃棄するといっても、ただごみ収集に出せばいい物ではない。
リサイクル券を買って廃棄をする、つまりお金を支払って手続きをしなければならず、その後業者を呼んで引き取ってもらうのである。

店では当然、お金の支払いが生じることは記録に残していた。手書きのノートとリサイクル券の控えを確認したが、そのテレビは含まれていなかった。
リサイクル業者の控えも確認したが含まれていなかった。

店長は私たちスタッフにこう言った。
「誰か盗んだだろ(笑)」

みんな笑った。
監視カメラも店内中にあって不可能だからだ。

店長は冗談を言っていたが、犯人探しを続けていたようだ。
なぜならテレビ以外にもシステム上の在庫と実際の在庫数が合わない物が多数あったからだ。
しかも家具や家電などの単価が高い物だ。

店長は私にこういった。
「悪いけど、こっそりシステムと在庫数合うか確認してくれ」

私は学生であったし、システムを動かせる立場や環境になかったので、信用されたようだった。

こっそりというのは、この店の誰かが疑わしいということだ。
そして店長の指示に従い、確認したが在庫は無かった。

店長に報告するとあることに気が付いていた。
「おい、これ見ろ。このテレビとか買い取った奴、全部湯本じゃねえか」
小声で言った。

ちなみに店長は裏でキングコングと言われていた。
6ドアの大型冷蔵庫やドラム式洗濯機を一人で持ち上げる怪力の持ち主であり、顔がチンパンジーだったからだ。

そのキングコングが小声ということで、事の重大さが分かったのである。

話しが逸れたが、リサイクルショップなので当然買い取り業務もある。原則、買い取りは社員しか行わない。
買い取りが成立した場合には、売った側の直筆サインが必要となる。

そこで店長はサインを確認した。
「おい、これ全部湯本の字じゃねえか!!」

やりやがったのである。
もう一度言おう、湯本が全てやりやがったのである。

キングコングは怒りに震えた。
顔が真っ赤になっていった。
ワンピースドレスローザ編のドフラミンゴ並みに、顔に血管が浮き上がっていた。

キングコングは貧乏ゆすりを始め、広いレジカウンターが揺れに揺れた。
それくらい怒りに震えていた。

ちょうど他の社員が買い取ったであろう、ミスターポテトヘッドのフィギアが床に落ちた。
それくらいの揺れだった。

また話しが逸れたが、湯本は架空で買い取って、その買い取り代金を着服したのである。

無いものを買い取ったために、システム上は在庫があるが、現実には在庫がないという矛盾が当然発生するのである。

続く

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