リーディングシネマ ちいさなちいさな王様
生きれば、生きるほど、新しい知識を身につければ身につけるほど。
狭く苦しく堅い柵の内に封じ込めれられていく、そんな気がすることがある。
命のみずみずしさがはるか遠くのほうへ、水蒸気のように消えてしまった。
こう思うことがある。
少しのことで、心は枯れる。
少しの音で、心のシャボン玉はパチンと割れる。
どんなに逃げても追い詰められる瞬間には、どう向かっても、すかしても、逃げられない。
私は私という花を咲かせてやる力量が欲しい。
だけど圧倒的に咲かせるのが怖い。
私が腐らせた幾つもの私たちと日々の前ではあまりに無力だ。
しかし、
日頃耳を苦しめる音はこのひととき楽しい音に変わり、魂を心地よくバウンドさせる。
少しのことで乾く心は、ほんの少しの水で柔らかく笑うことができる。
人と過ごす方法を忘れ、声を忘れた心を癒すのは、人が作るご飯であり、体温のある言葉であり、寝食を忘れて築いた叡智だ。想いの重なる交差点だ。
渇いた者が求めてやまないほんの少しの水になること。それこそがすべての表現のゴールであり、また原点であるといえるかも知れない。
「小さな小さな王様」は、ちょうどそんな作品だ。
なんと言ったって愛らしい我らが王様が両手を広げてこう言うのだ、
「大人になればなるほど、自由になっていくんだ」と。
「僕らの世界ではそうなんだ」と。
-ーなら私もそうであれと、両手を広げて生きてみようかな。
(このきらめく春の太陽の下で。)
そう思わせてくれる。
このところ、あの天変地異から丸10年経った月日を踏まえ、人生を"受け入れる表現"が印象に鮮やかだった。
Remember 生まれた時だれでも言われた筈
耳をすまして思い出して最初に聞いた
Welcome
中島みゆき「誕生」
このように人生を受け入れる表現に
この痛みも、たくさんの方々の中にある傷も、今も消えることない悲しみや苦しみも…それがあるなら、なくなったものはないんだなと思いました。
痛みは、傷を教えてくれるもので、傷があるのは、あの日が在った証明なのだなと思います。
羽生結弦選手 「震災から10年コメント」
消えない傷のあることを受け入れる表現。
濃密な人生体験に他の人の表現の力を借りること。
大きなことはちゃんと表現者が言ってくれてるし、歌ってくれてる。
そっと身をゆだねてみれば、
それは現実の見方を、意外な方向へ変えてくれる。
本当か嘘かという疑問さえ、湧きもしないほど。
心と体がついてくる速度で勝手に進む。
たまに戻り、立ち止まりながら時に歩き、時に這い、時に車輪を回しながらあせらず行く。
大丈夫。
我らが小さな王様はそばにいる。
「大人になればなるほど、自由になっていくんだ」。
歩き続けるのがしんどい時には、ゆっくりと目を閉じればいい。
声が聞こえる。あの可愛らしく強い声が。
ーーグミベアを日に透かしながら。
また1冊、心の蔵書庫に本をしまう。
人生の見方を新たにくれたこのお話に、ときどき耳を傾けるために。
リーディングシネマ「ちいさなちいさな王様」
【出演】藤野涼子 / さえ(OriHimeパイロット)
【原作】アクセル・ハッケ(日本語訳:那須田淳 木本栄 / 講談社刊)
【脚本】山谷典子
【監督】大金康平
【公開日】2021年3月14日(日)
【配信】かなチャンTV(神奈川県公式Youtubeチャンネル)
https://www.youtube.com/embed/5h-F-hTvb2Y
【料金】無料
ナタリーの特集ページ
https://natalie.mu/stage/pp/derkleinekoenig
吉藤オリィ「孤独は消せる。」
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