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コインランドリーるーぷ

白い空間にグォングォンと音が響く。
跳ね回る洋服。
洗剤のクリーンな匂い。
世界にただ一人残されている。

『強い社会不安を抱えていますね。不安への不安を前借りして過ごしている。自分の感情を他人へ伝える事に酷く消極的で恐怖もある。代わりに他者の感情や状況を読み解くのに鋭く、そして敏感。』

声色の柔らかな女医の言葉に強くうなづき返す。
カウンセリングというのは的確だとこの時実感した。
だからどうした?と開き直れず、ここに通っている意味はあったと強く思えた。一月後の予約を取り会計を済ませて一駅歩きながら帰った。
秋晴れの空に浮かぶ白い雲は大きく低かった。


この一週間は風邪を引いてしまい体も心も辛かった。
季節の変わり目に見事に自分も引っ掛かり体調を崩す。
こういう所は社会と繋がっている。肉体のカルマというやつだろうか。
三日目には熱もある程度下がった。
動けるようになったので秋冬服を引っ張り出し夏物をしまい込んで衣替えを始めた。防虫剤は使用期限が切れたマークへ変わっていたので新しい物と交換。肌着は自宅の洗濯機へ。トレーナーやパーカーを大きな袋へ詰め込み家を出た。

子供の頃住んでいた場所の近くにあるコインランドリーへ行った。
昔は居酒屋が入っていたが今は綺麗に改築されて有名?チェーンのコインランドリーになっている。都心の店舗だとカフェが併設されているらしいが、田舎なのでそんなものはない。
洗濯と乾燥合わせて1h40minの静寂。黙々と本を読む。とても居心地が良い。なんなら図書館よりも好きだ。
乾ききったトレーナーを畳む。縮まない製法で作られている物だけれど一応の確認を済ませてまた袋へ詰め込む。ふかふかで温かい袋の出来上がり。

洗剤の匂いに包まれながらの帰路。向かいからは西日。
うっすらと汗ばむ。
交通量の多い道だ。気を付けないと。
出来るなら誰ともすれ違わずに帰りたかった。

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