見たこともなく知らずとも、感じる事から始まればいい。

目黒美術館で開催されている【木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり】を見に行った。
木村伊兵衛に関しての知識は【木村伊兵衛賞】という名を取ったコンペティションがある事しか知らず、彼自身がどのような写真家すら知らなった。
それで何故展示を見に行ったのか?というと先日まで東京写真美術館で行われていたグループ展、「記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol.18」 「砂の下の鯨」の吉田志穂さんが受賞されたからだ。
この展示の感想は別の機会に記すとしても、本当に素晴らしい展示だった。同機はひとまずそんなところである。


目黒美術館は駅から少し歩き、川にかかる橋を渡った先の公園の中にあるこじんまりとした建物。
目黒区民もしくは区内で務めていると割引があった。千葉県民の自分にはあまり関係のない制度だったが、東京は恵まれているなと感じた。

初見で木村伊兵衛の写真を、広い会場で見れる機会なんてそうそうないのだろうなと思ったので、ゆっくりと回ってみた。
率直に言ってしまうと、彼が写し出したパリの写真が100点以上展示されていてそのどれを見ても楽しめた。各セクションに展示されていた彼の写真日記からの引用も、彼がパリに魅了を感じ一切飽きずにいたことが伝わった。
熱意というよりかは興味を感じられた。

パリの街の美しい景観、照らし出される光、異国の変わった建造物、そして猫。どの時代の写真家も光と猫が好きなのだなと親近感を覚えた。
展示を見て回るうちに気付けば胸の前で腕を組みどっしりとした立ち姿になっていた。いわゆるトップ立ち。(ガンバスター)
写真から伝わってくる何かに【負ける物か】と構え考えを巡らせる私のポーズ。

その中でも私が気に入ったのは、花祭りの時期にパリの下町の人々を撮影している写真。
路地裏の広場で踊りだす紳士淑女、遊ぶ子供を見守る女店主、祭りで店を閉められる期間に改修を進める人達。
大戦から10年後1954~55年のパリの人々、約70年前の人に優しさと笑顔が溢れていた。現代と比べると難しい問題も数多くあっただろう。もちろん今も決して良い時代とは言えない。
けれどその写真からは人に対するぬくもりを感じた。
人を好き好んで撮っていない私にとってはその衝撃は大きく、なんと良い写真なのだろうと深く頷いてしまった。

パリの街も木村伊兵衛の事も何も知らなかったが、この日に感じたことから始めたい、そう思えた展示だった。

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