
10年後のスマートフォン(2/20)
気づきのきっかけ
あらゆるものは科学の進歩によってソフトウェアに還元される。今のスマホと同じ機能を今のハードウェアを持たずに実現するのは10年後くらいだろうか?
10年後のスマートフォン
現在のスマートフォンが提供する機能を、現在のようなハードウェアを持たずに実現する未来は、10年後には十分可能になっているかもしれない。
スマートフォンの本質を考えると、それは「多機能なセンサープラットフォームと通信装置」だ。ディスプレイ、カメラ、マイク、スピーカー、各種センサー、プロセッサ、バッテリー、そして通信モジュールが統合され、ソフトウェアによって多様な機能を実現している。この機能群をハードウェアなしに再現するためには、どのような技術が進化すればよいのかを具体的に考えてみる。
まず、ディスプレイが不要になる技術として、ARグラスやコンタクトレンズ型ディスプレイの進化がある。現在、MetaやAppleが開発を進めているデバイスでは、視界に情報を投影する技術が確立されつつあるが、視野角の狭さや解像度の低さ、バッテリーの持続時間などが課題となっている。10年後には、4K相当の解像度で長時間利用できる視覚インターフェースが一般化している可能性が高い。
入力デバイスの進化も、スマートフォンの消失を促す要因の一つとなる。現在のスマホではタッチスクリーンが主要な入力手段だが、音声認識の精度はすでに実用レベルに達しており、ARデバイスと組み合わせれば、視線入力やジェスチャーによる操作が標準化する可能性がある。さらに、Neuralinkのようなブレイン・マシン・インターフェース技術が進展すれば、意識するだけで情報を操作できる時代が訪れるかもしれない。
計算処理の面では、スマホのプロセッサに依存せず、クラウド側で処理を行う仕組みが強化される。現在でもGoogleのTensor Processing Unit(TPU)やAppleのNeural Engineのように、AI処理の一部はクラウドと端末のハイブリッドで行われているが、10年後には6Gやそれ以上の超高速無線通信の普及によって、ほぼすべての処理をクラウド側で完結させることが可能になると考えられる。これにより、端末に高性能なプロセッサを搭載する必要がなくなり、物理的なスマートフォンの形状は劇的に変化するかもしれない。
スマホの多くの機能を支えているカメラや各種センサーがどのように代替されるかも重要なポイントとなる。これらのハードウェアが不要になるためには、環境そのものが情報を提供するインフラへと変化する必要がある。例えば、スマートコンタクトレンズにカメラが組み込まれることで個人がデバイスを持たずに映像を取得できるようになったり、街中に配置されたIoTデバイスがリアルタイムの情報を提供することで、個人所有のデバイスなしでも現在のスマホと同じ利便性を享受できる可能性がある。
通信技術の進化も、この変化を後押しする。5Gの次世代である6Gは、100Gbps以上の通信速度を実現し、超低遅延でのデータ転送を可能にすると予測されている。この進化によって、ほとんどの処理はクラウド上で行われ、端末側には最低限の受信・送信機能のみが残る。
こうした技術の進展を考慮すると、10年後には現在のスマホという物理デバイスが消滅し、代わりに「情報環境の一部」として溶け込んでいる可能性がある。例えば、コンタクトレンズ型のARディスプレイ、音声や脳波で操作するインターフェース、クラウドベースの超高速計算処理、都市全体に分散したセンサー群が連携し、スマホの役割を担うという未来が想像できる。
完全に物理デバイスが不要になるには20〜30年かかるかもしれないが、10年後には「スマホを持つ」という概念が変わり始める転換期に入っているだろう。
P.S
無理やり結論や答えを生み出す必要はない。常に世界は理解の余地を持っているから。