都市部では携帯電話の基地局を頻繁に目にする。高層ビルの屋上や壁面、時には電柱の上にも設置されており、アンテナは複数の方向を向いている。郊外に出ると基地局の姿を見つけるのが難しくなり、山間部では携帯電話の圏外表示を経験することもある。一方で、高速道路や新幹線では移動中でも通話が途切れにくい。基地局のカバーエリアは六角形のような形で重なり合っているように見える。
日本国内の基地局総数は全キャリア合計で約80万局に達すると推定される。主要キャリアの内訳を見ると、NTTドコモが約20万局、auが約19万局、ソフトバンクが約18万局、そして楽天モバイルが約7万局を展開している。基地局間の距離は地域特性によって大きく異なり、都市部では100から300メートル程度の密集した配置となっている。住宅地では300から800メートル、郊外では1から3キロメートル、山間部では3から10キロメートルというように、人口密度に応じて間隔が広がっていく。携帯電話が圏外になるのは、最寄りの基地局から約10キロメートル以上離れた場合や、地形や建物による電波の遮蔽が発生した場合、あるいは基地局の処理能力を超える約1000台以上の端末が同時に接続しようとした場合である。
基地局同士のスムーズな接続、いわゆるハンドオーバーは精密な仕組みで実現されている。まず隣接する基地局のカバーエリアを約30パーセント重複させることで、移動中の端末が次の基地局を探知する時間として約3秒を確保している。携帯電話は毎秒約2回の頻度で周辺基地局の信号強度を測定しており、現在接続している基地局より20パーセント以上強い信号を検知すると、切り替えを開始する。この切り替えには「ソフトハンドオーバー方式」が採用されており、新しい基地局への接続を確立してから古い接続を切断することで、約0.3秒という短時間で切り替えを完了する。
基地局ネットワークは人口密度と地形に応じて最適化されており、都市部では高密度な配置で大容量通信を実現し、郊外では広域カバーを優先している。基地局同士の通信エリアを意図的に重複させ、継続的な信号強度測定と高速な切り替えにより、移動中でも途切れにくい通信を実現している。この技術により、時速100キロメートルでの移動中でも約99.9パーセントの確率で通信を維持できる設計となっている。