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おしゃれを照明から解剖する(11/15)

気づきのきっかけ

おしゃれだな思う店は
・すべて照明が白ではなく温かみのあるオレンジ色
・間接照明が存在する
必ずこの2つを満たしている。街を観察してみる。

おしゃれを照明から解剖する

都内の飲食店やアパレルショップを巡る中で気づいたのは、「おしゃれ」と感じる店舗には共通する照明の特徴が存在することだ。具体的には、白色ではなく温かみのあるオレンジ色の照明を基調とし、必ず間接照明を組み合わせている。この法則性は、ジャンルを問わず、カフェ、レストラン、セレクトショップなど、幅広い業態で確認できた。

照明の明るさを具体的に観察すると、一般的なオフィスは750ルクス程度あり、新聞の細かい文字も容易に読めるほど明るく、スマートフォンの画面が周囲の明るさに埋もれてしまうほどだ。一方、おしゃれな店舗の明るさは300ルクス程度で、スマートフォンの画面が程よく浮かび上がる程度の暗さに設定されている。メニューの文字は読めるものの、少し目を凝らす必要があるくらいの明るさだ。高級店になると150ルクス程度まで落とし、テーブル上にスポット照明を当てることで、手元は明るく保ちながら空間全体としては落ち着いた雰囲気を醸成している。

間接照明の効果は、壁に映る人物の影の質に顕著に表れる。直接照明のみの空間では、人影がはっきりと壁に投影され、やや無機質な印象を与える。一方、間接照明を組み合わせた空間では、影が柔らかくぼやけ、複数の方向から光が当たることで立体的な陰影が生まれる。これは人の顔の印象にも大きく影響し、直接照明だけの場合に比べて、目の下のクマや頬のたるみが目立ちにくくなる。

照明の色温度については、一般的な昼白色の蛍光灯が5000K程度であるのに対し、おしゃれな店舗の照明は2700K前後の電球色を採用している。この色味は、夕暮れ時の太陽光に近く、肌の色を健康的に見せ、料理の色味も食欲をそそる温かみのある色に変換する効果がある。特に、赤身肉や揚げ物の衣の色味が美味しそうに見える。さらに、白いテーブルクロスや食器も、純白ではなく、クリーム色がかって見えることで、より高級感のある印象を与えている。

店内の奥行きのある空間では、光の強さに明確な段階性が設けられている。入り口付近は外光との差を緩和するため400ルクス程度とやや明るめに設定され、奥に進むにつれて300ルクス、200ルクスと徐々に照度を落としている。この照度の変化は、人の歩く速度にも影響を与えており、明るい入り口付近では足早に歩いていた客が、照度の低い奥のエリアでは自然と歩みを緩める様子が観察できる。

壁際のテーブル席における照明は、床から目線の高さよりやや上方、約2.1メートルの位置に間接照明が設置されることが多い。この高さは、座った時の顔の位置に自然な陰影を作り出すのに最適だ。特に、壁面の素材が漆喰やベージュ系の色味の場合、光が柔らかく拡散され、より自然な明るさの分布が生まれる。照度計で測定すると、顔の位置での明るさは200ルクス前後になるよう調整されている場合が多い。

これらの照明設計は、人々の行動や心理に繊細に作用している。200ルクス程度の程よい暗さは会話の声量を自然と抑えさせ、落ち着いた雰囲気を作り出す。また、この明るさはスマートフォンのカメラで撮影する際に適度な光量となり、写真映えする空間づくりにも貢献している。

P.S

無理やり結論や答えを生み出す必要はない。常に世界は理解の余地を持っているから。

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