電車がホームに進入してくる際、スマートフォンの通信状況を示すバーが急激に減少する。特に地下鉄駅では顕著だ。LINEやウェブサイトの読み込みが突如として遅くなり、時には完全に通信が途切れる。この現象は電車の到着と同時に始まり、発車後しばらくすると通信状態は元に戻る。電車の形状を観察すると、車両全体が金属製の箱型構造で、窓にも金属膜が施されている。
通常時の通信速度が100Mbpsだとすると、電車到着時は10Mbps以下まで低下する。この現象は、電車が到着する約5秒前から始まり、停車中の約90秒間継続する。10両編成の電車の場合、全長は約200メートルに及び、高さは約4メートル、幅は約3メートルの金属製の箱が突如としてホームに現れることになる。1両あたりの金属面積は約240平方メートルとなり、10両全体では約2400平方メートルの金属壁が出現する計算となる。
この現象は電磁遮蔽効果(ファラデーケージ効果)によって引き起こされる。巨大な金属製の箱である電車が、携帯電話の基地局からの電波を遮断するのだ。
電波の周波数帯によって影響の度合いは異なる。4G/5G通信で使用される700MHz〜3.5GHz帯の電波は、金属に当たると約90%が反射される。電車の側面が鏡のような役割を果たし、基地局からの直接波を反射してしまうため、ホームにいる利用者のスマートフォンまで電波が十分に届かなくなる。
さらに、電車の車体による反射波が本来の電波と干渉し、電波の強度が部分的に打ち消しあう「マルチパス」現象も発生している可能性がある。これにより、場所によって極端に通信状態が悪化するスポットが生まれる。
対策として、通信事業者は以下のような方法を講じている可能性がある。
ホーム上部への小型基地局(フェムトセル)の設置:推定設置間隔は30メートルごと
電波の反射を考慮したアンテナの指向性調整。到来角を約15度上方に調整
複数の周波数帯の併用。低周波数帯(700MHz帯)と高周波数帯(2GHz以上)の組み合わせ。
駅ホームでの通信障害は、電車という巨大な金属構造物による電磁遮蔽効果が主な原因である。約2400平方メートルにも及ぶ金属面が瞬時に出現することで、基地局からの電波が遮断され、反射される。