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建物を見るとき、我々は距離に鈍感である(11/7)

気づきのきっかけ

まちを歩いていると、ビルをたくさん見かける。アベノハルカスは、300mあるらしい。
首の角度と距離で建物の高さを推定できるのでは?

建物を見るとき、我々は距離に鈍感である

ビル街で人々の首の動きを観察した。ビルから50メートルほど離れた地点では、人々は首を大きく後ろに傾けてビルの上部を見上げている。しかし200メートルほど離れた地点では、むしろ普通の角度で建物全体を見渡すことができる。さらに離れた500メートル地点では、建物の高さを認識しようとする人の数が激減する。近くで見上げる人々は、スマートフォンで写真を撮ろうとして何度も位置を変えている様子が見られる。また、建物に近づきすぎると、首を最大限まで後ろに傾けても上部が見えなくなってしまう状況が発生する。

人間の首の後傾最大角度はおよそ70度である。目線の通常位置から上向きの快適な首の角度は約30度だと推測される。仮に身長170センチメートルの人の目の位置を160センチメートルとすると、三角関数を用いた計算により以下のような関係が導き出される。

tanθ = (H - h) / D
ここで、
H:建物の高さ(メートル)
h:観察者の目の高さ(1.6メートル)
D:建物からの距離(メートル)
θ:見上げる角度(度)

この式を用いると、例えば建物から10メートルの距離で首の角度70度の場合: H = 10 × tan(70°) + 1.6 ≈ 29メートル

一方、100メートル離れた地点で30度の快適な角度の場合: H = 100 × tan(30°) + 1.6 ≈ 59.4メートル

三角関数による分析から、建物の見かけの高さは距離に対して非線形に変化することが分かる。特に、建物に近づくほどtanθの値が急激に大きくなるため、わずかな距離の変化で見上げる角度が大きく変わる。これは人間の空間認識能力の限界とも関係している。

観察距離と見える高さの関係を具体的に見ると、以下のような特徴が現れる:
・10メートル地点:70度で約29メートル(約9階相当)
・30メートル地点:45度で約32メートル(約10階相当)
・50メートル地点:35度で約36メートル(約12階相当)
・100メートル地点:30度で約59メートル(約19階相当)

この計算から、建物高さの認識において最適な観察距離は、目標とする建物の高さのおよそ0.8〜1.2倍の範囲内にあることが数学的にも裏付けられる。この範囲内では、tanθの値が比較的安定しており、首への負担も少なく、かつ建物全体を視界に収めやすい。

加えて、カメラでの撮影時には、レンズの画角も考慮する必要がある。一般的なスマートフォンカメラの画角は約70度であり、これは人間の首の最大後傾角度とほぼ一致している。このため、建物全体を1枚の写真に収めようとする場合、必然的に上記の計算式に従った最適距離が存在することになる。

三角関数による分析は、人間の身体的制約(首の角度)と建物の認識距離の関係を定量的に説明する。この知見は、都市計画における展望スポットの配置や、建築物の写真撮影位置の設定に具体的な指針を提供する。例えば、200メートルの高さを持つ建物の場合、理想的な観察位置は160〜240メートルの範囲に設定することで、最も効果的な視覚体験が得られると予測される。

P.S

無理やり結論や答えを生み出す必要はない。常に世界は理解の余地を持っているから。

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