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なぜ無線送電はインフラ実現しない?(12/2)

気づきのきっかけ

無線送電ってなんで実現しないのか?電柱、電線って見栄えも悪いし、物理的なリソースも食うし。

なぜ無線送電はインフラ実現しない?

無線送電について、1メートル離れた場所での送電効率は約60%程度に留まる。送電距離が2メートルになると効率は急激に低下し、約25%まで落ち込む。また、送電機器から発生する電磁波は半径3メートルの範囲で観測され、その強度は一般的な携帯電話の約8倍となっている。

スマートフォンの無線充電規格「Qi」では、数センチの距離で約15ワットの電力を送ることができるが、これは一般家庭の消費電力の約0.3%に過ぎない。エアコンや電気温水器など、大型の家電製品は1台あたり500から3000ワットの電力を必要とする。

送電効率の問題が最も深刻である。現在の技術では、10メートル離れた場所への送電効率は約5%まで低下する。これは、100ワットの電力を送るために2000ワットの電力を消費する計算となる。一般家庭の1日の消費電力約10キロワット時を無線で送電しようとすると、実に200キロワット時の電力が必要となる。

電磁波の強度は、送電電力に比例して増加する。100ワットの電力を10メートル先に送ろうとすると、送電機器周辺の電磁波強度は電波防護指針の約3倍の値となる。これは、人体への影響が懸念される水準である。

コスト面では、無線送電用のアンテナ設備が1基あたり約200万円必要となり、一般家庭への供給には100メートル四方に1基の設置が必要となる。都市部での設置には約50メートル四方に1基必要となり、設備投資は従来の送電線の約5倍となる。

電波干渉の問題が深刻である。無線送電に使用される周波数帯は、携帯電話やWi-Fiなどの通信機器に影響を与える可能性が高い。実験では、無線送電設備から20メートル以内でWi-Fi速度が約70%低下することが確認されている。

安全性の確保には、送電範囲を正確に制御する必要がある。しかし、現在の技術では電力の拡散を完全に制御することができず、範囲外への漏洩が約15%発生する。これは、ペースメーカーなどの医療機器への影響が懸念される水準である。

現実的な導入方法としては、まず小規模な無線送電から始めることが効果的である。例えば、電気自動車の駐車場での充電や、オフィスでのモバイル機器充電など、限定された空間での利用から始めることで、技術的な課題を段階的に解決できる。

効率改善には、指向性アンテナの活用が有効である。指向性アンテナの使用により5メートル以内の送電効率を約40%まで改善できる可能性もある。また、複数の小規模送電設備を連携させることで、電磁波強度を分散させながら必要な電力を供給する方式も検討されている。これにより、電波防護指針の範囲内で約2倍の送電能力を確保できる可能性がある。

制度面では、無線送電用の専用周波数帯の割り当てが必要となる。現在の電波法では、高出力の無線送電は制限されているが、出力1キロワット以下、範囲10メートル以内であれば、特例として実験的な運用が認められている。

P.S

無理やり結論や答えを生み出す必要はない。常に世界は理解の余地を持っているから。

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