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【5分/解説/時事】“世界のFUNAI” 破たんから2か月 何が起きていたのか?
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【一言で何が起きたか】
大阪の家電メーカー「船井電機」が、2024年10月に破産手続き開始決定を受け、約550人の従業員が解雇された。独自製品で成長を遂げた同社が、経営破綻に至った背景には、事業戦略の失敗や資金繰りの悪化があった。
【現状の整理】
船井電機は、10月24日に東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。同日、全従業員に解雇が通知され、本社は沈黙。550人の解雇された従業員の多くは、再就職先が未定である。
同社の経営破綻は急展開だったが、9月時点で117億円の債務超過に陥っており、破産は不可避だったとみられる。破綻直前には、不動産売却を巡る内部の混乱や、取締役の1人が「準自己破産」の手続きを独断で進める事態が発生していた。
【原因の解説】
船井電機は1950年代にミシン卸問屋として創業後、家電事業に進出。1980年代には「テレビデオ」や「家庭用パン焼き器」でヒットを飛ばし、北米市場を席巻した。しかし、中国や韓国の家電メーカーの台頭による価格競争で、主力のテレビ事業は大幅な赤字に転じた。
2017年の創業者死去後、2021年に東京の出版会社が買収。コンサルタント出身の上田智一氏が社長に就任し、利益率の高い美容家電事業への転換を図った。しかし、脱毛サロン事業買収が裏目に出て、サロンが抱えていた広告費未払いの肩代わりなどで債務が急増した。
さらに、新経営陣による資金繰りや不動産売却の不透明な動きが、内部での信頼を崩壊させ、10月の破産申し立てに至った。これに対し、会長は「民事再生が可能」として裁判所に異議を申し立てている。
【展望】
船井電機の再建は極めて困難な状況にある。従業員の再就職支援が急務である一方、破産手続きの不透明さに対する批判や、民事再生の可能性を巡る法的議論が続いている。
また、船井電機が果たしてきた「低価格で独自性のある製品」を提供する役割は、家電業界全体への影響も無視できない。従業員や関連取引先への影響を最小化するため、政府や自治体の支援が期待される。
他方で、船井電機の破綻は、成熟した家電市場における競争の厳しさを改めて浮き彫りにしており、業界全体にとっても警鐘となるだろう。
船井電機の破綻により、「世界のFUNAI」の輝かしい歴史が一転して企業経営の教訓として語られる日が来た。この教訓をどう活かすかが、家電業界の未来を左右する。