巷で話題の新しいサービスがあった。初月の利用者は1000人だった。3か月後には3000人に成長し、関係者は皆口々に「3倍に増えた」と喜んでいる。半年後には1万人を超えるはずだと期待に胸を膨らませる。しかし実際には4000人程度で頭打ちとなり、その後は横ばいが続いていた。
なぜ予測は外れたのか。実は答えは単純で、増加の本質を見誤ったからだ。
私たちは普段「倍率」で成長を語りがちだ。3倍になった、5倍になったという具合に。しかしこれは現象の本質を見誤る落とし穴になる。より重要なのは、増加における「桁数の変化」だ。
1000人から3000人への増加は、確かに3倍だ。しかし本質的には依然として同じ「千人台」という桁数の中での増加に過ぎない。これに対し、1000人から10万人への増加は、桁数自体が変化している。この違いは決定的だ。
実際に革新的なサービスの成長を振り返ってみよう。Twitterの月間アクティブユーザー数は、2007年に数万人だったものが、2008年には100万人を超え、2009年には数千万人、その数年後には1億人を突破した。つまり毎年のように桁数が変化していった。これは現象に本質的な革新性があることを示している。
一つの現象の将来を予測するとき、最も重要なのは「この変化は桁数を超えるものになるのか」という問いを立てることだ。また、重要な指標のなるのが以下の3つだ。
持続的な成長率:
3年以上にわたり年率30%以上の成長が継続するか
コスト効率:
従来手法と比較して10倍以上の効率化が実現されているか
波及効果:
想定外の分野への正の影響が連鎖的に発生しているか
これは技術普及に限らず、社会現象、経済現象、自然現象など、あらゆる増加現象に適用できる普遍的な観察眼となる。