【EDINET API活用】複数企業財務データを一括取得〜初心者でも簡単〜年度別連結経営指標篇
記事概要
企業が金融庁に開示する経営指標をまとめてExcelに保存し、時系列や競合比較をグラフ化するPythonスクリプトを紹介します。
プログラミング不要、無料のGoogle Colabで簡単に使えます。複数企業・年度のデータを一括取得する方法をぜひお試しください。
株式投資の仕組み
株式投資は、企業や経済に関するさまざまな情報をもとに、特定の企業の株に対して「購入」、「売却」、「保有」する判断を行うことです。仕組みはシンプルですが、利益を上げるには判断の精度を高める必要があります。そのため、私のように一刻も早くファイナンス的な自由を手にしたい個人投資家は、日々コツコツと知識や経験を積み重ねています。
投資判断において、企業の財務データは欠かせない重要な要素です。Yahoo!ファイナンスや株探といった人気サイトでは、財務データは閲覧できてもダウンロードはできず、より価値のあるデータは有料会員でなければ見ることができません。
こうした制約を解決するため、私はデータを自動で取得できる方法を探し始め、その結果、EDINET APIにたどり着きました。この記事では、私が作成したPythonスクリプトを使い、EDINET APIで複数企業、複数年度の財務データを自動的に取得する方法を紹介します。
EDINETとは? どう利用する?
EDINET(エディネット)は、日本の金融庁が運営する「有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」のことです。
従来は紙で提出されていた有価証券報告書や有価証券届出書などの書類を電子化し、投資家などのステークホルダーが企業情報に公平かつ迅速にアクセスできるようにすることで、証券市場の効率性を高めることを目的としています。
利用方法
ウェブブラウザでEDINETの公式ページから、証券コードなどで開示書類を検索し、直接閲覧・ダウンロードする方法が一般的です。
この記事では、EDINET APIを利用して、プログラムを通して開示された企業データを自動的に取得するPythonスクリプトとその使い方を紹介します。
経営指標から企業の実力を読み解く
EDINETに提出される有価証券報告書の第一部【企業情報】において、1【主要な経営指標の推移】では、過去5年間の連結(親会社と子会社)または提出会社(親会社のみ)の個別経営指標がテーブル形式で公表されています。
以下は、その中でも重要な指標の一部です。
営業収益(売上高):企業が1年間にどれだけ商品やサービスを売ったかを示す金額です。
経常収益:売上高から売上原価と販売費・一般管理費を差し引き、金融資産の収入を含めた利益で、企業持続的の収益性を示します。
自己資本比率:自己資本が総資本に占める割合で、企業の財務健全性や安定性を示します。
自己資本利益率(ROE):自己資本に対する純利益の割合で、株主資本に対する利益効率を示す指標です。
株価収益率(PER):株価を1株当たりの利益で割った値で、株価が割安か割高かを判断する際の参考となる指標です。
営業、投資、財務活動によるキャッシュフロー:企業の営業活動、投資活動、財務活動それぞれによる、資金の流れを示します。
従業員数:企業の規模を示す指標です。
これらの指標は、時系列での変化や競合企業との比較を通じて、企業の収益性、生産性、安全性、成長性を総合的に把握でき、投資判断に非常に役立ちます。
この記事で共有するスクリプトの紹介
提供する機能や価値
以下のパラメーターを定義するだけで、スクリプトを実行できます。
証券コードリスト:[3038, 7550, 9861, 9887]
データ取得期間
最初日:"2020-01-01"
再終日:"2024-09-23"
スクリプトを実行すると、以下が自動的に作成されます:
複数年度および企業の経営指標の数値データが保存されたExcelファイル
複数年度および企業の経営指標が視覚化されたチャート
詳細は「スクリプトの活用例」セクションを参照してください。
推奨する利用者
Google Colabのノートブックでの利用手順を紹介するので、Pythonプログラミングができなくても、Googleアカウントがあれば利用できます。
以下のような方に特にお勧めです:
複数企業、複数年度の経営指標の数値化データを自動で取得し、分析したい方
共有するスクリプトをカスタマイズして、他の開示データをクロールしたい方
スクリプトを利用する前の準備
1. EDINET APIキーの発行
EDINET API仕様書(version 2)の第2章の始めから2-2-2-1 APIキーの発行まで参考してください。手順はスクリーンショットなので、約5~10分で完了します。
また、ブラウザで「https://api.edinet-fsa.go.jp」サイトにポップアップブロックの許可を設定する必要があります。仕様書の2-1ポップアップ許可サイトへの追加ではMicrosoft Edgeを例にしていますが、Google Chromeでも大丈夫です。ポップアップブロックの設定方法は以下のリンクを参考にしてください。
2. Google Colabの利用確認
セルに簡単な入力や入れ替えを行い、実行するだけで使用可能です。
Google Colabの使い方については、以下の記事を参照してください。
この記事で共有するスクリプトの活用例
活用例#1 時系列データで10倍株の特徴を把握してみよう!
人気の業務スーパーを運営する神戸物産(証券コード3038)は、2014年からの10年間で株価が150円台から4000円を超え、20倍以上の急成長を遂げました。このような10倍株は株価が大幅に上昇する前に、経営指標からその兆候を気付けることは可能だったのか?一緒に検証してみましょう。
スクリプトで取得した経営指標のチャートによると、神戸物産の売上高と経常利益は右肩上がりで推移し、自己資本利益率(ROE)も持続的に20%以上を維持していました。特に、2017年10月期には驚異的な40%を記録しています。(なお、2023年10月期はやや頭打ちとなっています)しかし、その後の2018年10期も含めて、株価収益率(PER)は15倍程度と比較的低い水準にとどまっていました。この事実から、2017年から2018年にかけては、神戸物産の株価が大化けする前の投資機会だったと言えるでしょう。
スクリプトで自動的に出力した神戸物産の経営指標Excelファイル
活用例#2 競合会社のデータを比較して投資候補を決めてみよう!
最近、松のやのロースかつ定食にはまっていて、サクサクした食感と速い注文対応、セルフサービスの利便性と省人化の仕組みにも関心し、株主になる興味が湧きました。ただ、この業界の競合が激しそうと思って、牛丼チェーン大手3社の経営指標を比較してみました。
松屋フーズホールディングス: 牛丼の「松屋」を中心に、とんかつが有名な「松のや」、カレー専門店「マイカレー食堂」など、多様なレストランを運営しています。
吉野家ホールディングス: 日本を代表する牛丼チェーン「吉野家」を運営し、カレーやそば、定食など幅広いメニューを展開しています。
ゼンショーホールディングス: 牛丼チェーン「すき家」だけでなく、ファミリーレストラン「ココス」や海鮮丼チェーン「はま寿司」なども運営する多角化企業です。
2016年からの経営指標の推移を見てみると、次のことが分かります。
コロナ禍でダメージを受けた3社は、その後回復し、売上または経常利益はすでにコロナ前の水準を超えています。
松屋フーズの自己資本利益率(ROE)は順調にコロナ前の7%前後に回復したものの、3社の中で最も低いです。
すき家を運営するゼンショーホールディングスは売上と経常利益だけでなく、株主資産の運用効率と代表するROEも大幅に向上し、2024年3月期に18%も超えました。
どの企業に投資すべきか、さらに分析が必要ですが、現時点の結論は以下の通りです。
スクリプトで自動的に出力した牛丼チェーン大手3社の経営指標Excelファイル
複数企業、複数年度の経営指標を取得する手順
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