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【龍が如く8辛口レビュー】残念なストーリー。RPGとしての完成度はピカイチ
納得がいかない。20年にわたって「龍が如くシリーズ」を引っ張ってきた桐生一馬の最後の物語が、ここまで粗の多い脚本で描かれたことに納得がいかない。
というわけで今回は、龍が如く8のストーリーの感想を書いていく。上記の通り、私は今作のストーリーに大きな不満を持っているため、ネガティブな感想が多くなることは理解していただきたい。また、ネタバレ有りなので、未プレイの方は気を付けていただきたい。龍が如くのストーリーを知っているという前提で書いていくため、なるべく説明は省き、感想をありのまま書いていく。
先に言っておくと、私は龍が如くシリーズの大ファンで、全ての作品を遊んできた。そんな私にとって今作は、ゲームとしての楽しさの部分では、シリーズ1だったと思う。RPGとしての完成度が抜群に高く、クリアするまで120時間を要しながら、ほとんどのやり込み要素を遊んでしまうほどに楽しめた。だからこそ、お粗末なストーリーが今作の評価が大きく下げてしまっていることが非常に悔しい。龍が如く8は、ゲームとしてはシリーズ随一の完成度だが、龍が如くとしての完成度は低いと思う。
ではストーリーの感想をメインに細かく感想を書いていく。
・千歳クズすぎ問題
何回裏切るんだ。裏切った結果、2人(花輪とウォン)を間接的に殺している。また、至極まっとうに働いていた春日、足立、難波、そしてヤクザから足を洗って新たな人生を歩みだそうとしていた多くの人たちの人生を、根拠もないデマで滅茶苦茶に潰した張本人だ。一応最後は「自分のやってきたことは間違っていた。すいませんでした!」的なノリで顔出し配信を行い、これでケジメ取りました的なノリで済ませようとしているのだが、それで済むと思っているのか?
一応、千歳にも裏切るだけの理由があるのだが、それにしてもやり過ぎだと思う。春日の身ぐるみ全部剝がして素っ裸な状態でビーチに放り出すことまでする必要があったのだろうかと未だに思う。目的遂行のために加えて明らかに春日に対する嫌がらせが入っていると思う。
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挙句の果てに、千歳は不二宮家の後を継ぎ、勝ち逃げしていく。そのことをエンディングでハンジュンギが「不二宮家の後継ぎを背負って立つとは茨の道を選んだね~」的なことを言うのだが、全く共感できない。千歳が行うべきは、刑務所に自首することだ。なぜ千歳の共犯者である三田村はエンディングで刑務所に行くのに千歳はいいのか理解不能だ。千歳は、事実無根のデマにより多くの人の職を奪った立派な名誉棄損罪に当てはまる。そして、この悪行を平気で許してしまう春日にも違和感を覚えた。(次項に続く)
・春日なんでも許しすぎ問題
何でも許しすぎだ。何でも許すことだけが優しさではない。犯してしまった罪を償わせることも優しさだ。
春日は前作から人の罪を受け止める性格で、それが春日の最大の魅力なのは分かる。どんなに酷いことをされたとしても、荒川真斗を許し、寄り添うことを選んだ前作の春日には本当に感動させられた。ただ、それは荒川真斗と春日の間に深い繋がりがあったからこそだ。今作の春日は初対面の人に裏切られても、平気でそれを許す。
前項で書いた千歳には、何度も裏切られ、冤罪をかけられ、ハニトラをかけられ、身ぐるみ全部剥がされ、ビーチに素っ裸で放り出され、命の危機にまで晒されたのにも関わらず、許してしまう。ここまで許してしまうと、「春日=器の大きい優しい人」から「春日=危機管理能力の無いお馬鹿さん」になってしまっている。非常に残念だ。
・大道寺と桐生さんがガバガバ過ぎる。7外伝は何だったのか
7外伝を遊んだ人ほどビックリしたのではないか。まず桐生が自分の素性をペラペラ話しすぎだ。大道寺から禁止されてたはずではないのか。7外伝であれだけ鶴野に対して「俺は桐生一馬じゃねぇ」と一点張りし、知り合いにも初対面のフリをしていたのに、いつから自分の素性を平気で話すようになったのか。春日を初めとする仲間に関しては、7で関りがある知り合いなので、まだ素性を明かすのは分かる。だが平気で自分の任務まで話してしまうことに驚いた。前作で春日たちに対して「これ以上お前らと関わると契約違反だと組織から言われている」的な発言もしていたし、明らかに設定が崩壊してしまっている。
おまけに、ハワイで出会った初対面の人(トミザワ、千歳)にもペラペラ話し、大道寺一派の拠点に千歳と三田村という敵のスパイ2人を連れてきてしまう。それに対して大道寺一派も「あなたたちは信頼しているのでOKです」的なノリで受け入れてしまう。そして千歳、三田村の素性を調べることもなく、ノウノウと放置。三田村は普通に自分のPCを使って拠点内で堂々と諜報活動。その結果、拠点に敵を呼び込まれて襲撃に合い、花輪は死んで任務大失敗…もう何をやっているんだ!お粗末すぎて笑うしかなかった。
7外伝で、桐生が食べたものまで見張られているくらいの監視の徹底ぶり、桐生が大道寺一派の拠点に入ると銃を構えられるシーンがあるくらい警戒心MAXだったり、拠点内は外部との通信が遮断されています的な設定とかもあったが、あれは何だったのだろうか。
「大道寺一派は日本政治の暗部で暗躍する秘密結社です。ただノリとしてはクラブ活動的なもので、誰でもウェルカムです!」
突っ込みどころ満載過ぎてこっちが追い付けない。桐生という花輪にとって信頼できる人が連れてきた人たちだから、という理由で警戒しなかったのかもしれないが、それでもガバガバ過ぎるし、花輪という大好きなキャラが呆気なく死んでしまったあのシーンには、悲しさや悔しさと同時に脚本に対する不信感を覚えた。
・正直、桐生の仲間には違和感を覚えた。ソンヒ、趙、紗栄子…
桐生の話に対して、難波、ソンヒ、趙、紗栄子が仲間として参加するのは違和感に感じたし、場違い感が凄かった。それを象徴するシーンが、桐生が星龍会本部を訪れ、組員たちが頭を下げる場面だ。いくら桐生の仲間とはいえ、難波は元ホームレスの一般人、紗栄子はチーママ、ソンヒに関してはコミジュルのマフィアで下手したら星龍会の敵となる人物だ。そんな人たちを平気で入れ、頭まで下げてしまう組員たち。何か凄く間抜けなシーンに見えた。
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その他にも、一般人が桐生と混ざって、ヤクザの事務所にカチコミに行ったり、ヤクザの幹部と対等に話してたり違和感しかなかった。堂島の龍として1人で戦ってきた桐生の姿を見てきたファンにとっては、今作で一般人と協力して戦っている桐生の姿は見たくなかった。
何より、仲間たちが「水臭いこと言わないでください桐生さん。私達仲間でしょ」的なノリでいることが不思議で仕方がなかった。前作で桐生はほんの少し登場してきただけで、それも春日と少し絡みがあっただけだ。他の仲間たちは春日の付き添いとして遠くから桐生を眺めていた程度だ。それに、ソンヒ以外は桐生のことは知らなかったはずだ。なのに何故ここまで桐生に馴れ馴れしいのか、そして協力するのか、もっと説明や過程が欲しい。まぁそれ以前に秘密結社に所属している桐生が一般人と接触すること自体おかしいのだが…
・特にソンヒは違和感大
特にソンヒは最も違和感を覚えたキャラだ。今作から新たな仲間キャラとして追加されたわけだが、単に前作でファンが多かったから追加したとしか思えなかった。前作でソンヒは春日側に協力することになるのだが、とはいえ悪党なはずだ。ソンヒが長を務めるコミジュルというマフィアは、殺しや窃盗など何でもやる組織で、細々と生活をしている何の罪のない市民から盗電するようなセコイ組織でもあった。その盗電を止めさせようと動く春日一行に対してボウガンで攻撃し、下手したら春日を殺し損ねてたかもしれない。そんな悪党の長であるソンヒが今回は仲間キャラになり、キャラが変わったかのように お茶目な一面を見せたり、優しい態度を見せる。凄く違和感があった。
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何もソンヒというキャラが嫌いなわけではないのだ。ソンヒは「裏社会で暗躍する悪の女帝」としての魅力があるわけで、それがノコノコと表の世界で仲間と楽しくされても、「その前にやることがあるのでは」と思ってしまう。「前作とのギャップを出せばソンヒのこと好きになるでしょ」という考えも分かるのだが、もう少しキャラのイメージを崩さずに魅力を引き立ててほしかった。
・荒川の親っさんクズ過ぎ問題
前作の荒川は本当にかっこよかった。「こいつとなら所帯持ってもいい と思った女は今までに1人だけだ」というセリフは今でも鮮明に覚えている。その女性が春日の母である茜さんになるわけで、まだ赤ん坊の春日をコインロッカーから救い出す荒川のシーンは強烈だった。そんな男気ある荒川だったからこそ、春日も誇りを持てただろうし、プレイヤーも荒川にリスペクトを持っていたはずだ。
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だが今作で、実は荒川は氷川興産の娘(別の女性)と子供ができていました、という落ちだ…
脚本家は何をしているんだと問いたい。都合よくシナリオを追加してキャラの印象を悪くするのは本当に止めた方がいい。荒川の行動も分からなくはない。氷川興産には逆らえない立場にあった荒川が、その娘さんとそういうことをしなければならなかったことも…ただ避妊はせぇ!
荒川は氷川興産を敵に回し、自分の身が危険にさらされたとしても、大切な茜さんとの生活を選んで男として戦った、という印象を前作で持っていたが、今作を遊んで一気に印象が変わった。結局、茜さんを愛していたのにもかかわらず、荒川の計画不足と軽率な行動により、別の女性との間で子供ができてしまい、取り返しがつかなくなったから暴走して氷川興産に乗り込んで氷川を殺したように思えた。そして、その別の女性とその子供(海老名)は捨てて自分はちゃっかり荒川組の組長になるというクズっぷり。氷川と海老名が不憫で仕方がない。そこに荒川の男気は全く感じられず、荒川というキャラの株が駄々下がりした。結局、今作のストーリーの諸悪の根源は荒川ではないか。
「桐生や風間の親っさんなども結局は色々酷いことをしてきているし、ヤクザってそういうもんだよ」ということを描いてきた龍が如くシリーズらしいといえばらしいのだが、あまりにも荒川の前作の発言との乖離や、ヤクザ以前にカタギだったとしてもクズなことをしている、という部分で非常に残念だった。
・全体的に動機付けが弱い
キャラが何故その行動をするのか、もっと動機が欲しいと思う場面が多かった。
→春日一行の動機
例えば、春日一行は春日の母である茜さんを探すわけだが、物語の中盤で茜さんは見つかり、その時点で春日がハワイに行った目的は達成している。だが、茜さんと共にいるラニが敵に連れ去られ、春日たちは命がけでラニを取り戻しに行く。ここの動機が足りない。ラニが連れ去られる前に、ラニが追われている理由とブライスの正体を知らされるため、そこで春日たちの動機ができた、ということなのだろうが、春日たちからしたら蚊帳の外過ぎる問題なため、イマイチ動機として弱いのだ。春日は元々他人を放っておけない性格で、自分の母が命がけで守ったラニを取り戻す、という動機があるため、まだ分かる。千歳もスパイなので、春日一行についていくという理由で分かる。だが、それ以外の仲間は、自分の命をかけてまで問題の渦中にわざわざ巻き込まれに行くのだろうか。足立とトミザワは春日の友人だから、という動機しかない。ハンジュンギに至っては最終盤で仲間に加わり、動機も全くない。もう少し「ラニ」というキャラクターを掘り下げるシーンがあったり、ラニを守る中で茜さんが命を落としてしまう、など明確な動機付けがあると良かったのかもしれない。
→桐生の動機
桐生の動機も弱かった。
桐生は、大人たちの都合で裏社会の問題に巻き込まれるラニを遥と重ねるのだが、ここも桐生の動機付けとして無理があったと思う。その時点で桐生は一回もラニと会っていないし何も知らない。遥は桐生の愛した女性の娘で育った環境が同じという背景があったからであって、ラニとは全く違う。
また、海老名と戦う動機付けも弱かった。ヤクザによって苦しい思いをしてきた海老名に対して、「ヤクザという存在の罪を全て引き受ける」という動機で桐生は戦いに挑む。桐生の言いたいことは分かるし、海老名がヤクザを恨む理由も分かるのだが、海老名の問題に関してはヤクザというよりは荒川という一人の人間が問題な気がする。そのため、桐生がわざわざヤクザを代表してケジメを付ける必要性の少なさを感じた。個人的には、荒川を尊敬している春日と、荒川を恨む海老名との最終決戦の方が熱かったと思う。
→桐生の仲間たちの動機
桐生の仲間たちの動機が一番弱かった。
難波は「桐生さんを頼む」という使命を春日から託されたので分かる。それ以外の仲間はどうだ。ソンヒ、趙、紗栄子に関しては、桐生に憧れを持っていたり、慕っている、という今作から都合よく追加された謎設定により、非常に無理やりな形で動機付けされている。まるで今までも親しい仲だったかのように。仲間になって共に行動する動機が無いため、キャラが薄っぺらく見えてしまった。
→その行動を選ぶ動機
何かの目的があり、それを達成するために何故その行動をとることを選んだのかの動機も弱かった。
例えば、今作では何度か人探しをすることになるのだが、何も手掛かりがない状態で「○○さんは多分こうだから、ここに行くと手掛かりを得られるかも」という憶測を立てる。だが何故その憶測に至ったのかの説明が足りない。また、ラニを殺害することが目的のブライスが、何故あれだけ回りくどい方法でラニを捕まえることに専念してラニを殺害するチャンスを何度も逃がすか、海老名はヤクザを潰すことが目的なわけだが多々良チャンネルの活用や出演、核廃絶問題と絡める必要は本当にあったのか、もっと手っ取り早い方法があったのではないか、など色々思ってしまった。
目的を達成するために様々な手段があり、その無数の選択肢から何故その回りくどい方法を選んだのか に対する説明が欲しかった。まぁこれは龍が如くあるあるかもしれないのだが。
・春日編の後半がだれる
春日編の後半はあって無いようなものだった。
「〇〇から逃げるために敵と戦いながら~~へたどり着け!」のような引き延ばし感のあるミッションが多かったり、
ラニがさらわれる→捜索→助けに行く→ギリギリのところで逃げられる→捜索
の流れの繰り返しだったり、何かちょっとした話をするために長いダンジョンやバトルを攻略させられたり、間延び感が凄かった。
これだけ引き延ばすくらいだったら、そこをコンパクトにして、その分をラニやブライスの掘り下げに使うなどして、ストーリーに厚みを持たせることに使った方が良かったと思う。
・説明不足なエンディング
エンディングの三田村を警察に連れていきながらバックで「ありあまる富」が流れる演出は、ツッコミどころの多さやプレイヤー置いてきぼり感はありつつも嫌いではなかった。
だが、説明されない部分が多すぎるのだ。結局ブライスはどうなったのか、海老名は、沢城は、茜さんは、ネレ島は、星龍会は、桐生は遥と会えたの、桐生の死は直接描かないの? 色々説明していない点が多すぎる。もちろん、ある程度は予測できるし、全てを細かく説明しろとまでは言わない。だがクリアまで100時間を要す大ボリュームのゲームで、これだけ風呂敷広げた壮大な物語で、20年続いてきた桐生の最後の物語でもあるのだ。もっと説明してくれても良かったのではないか。エンディングがエンディングの役目を果たせていない。
特に桐生に関しては、癌の治療をするシーンで終わらせ、明確な死の描写をしなかった。最後の桐生の瘦せ具合から、もう先は長くないことを予測できたので良かったが、個人的にはハッキリとした死の描写をして欲しかった。あまり龍が如くに考察要素は求めていない。
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今作は、ラウカーロンやリチャード、柏木など確実に過去作で死んだキャラが実は生きてました、という展開が非常に多いため、余計に桐生の死をハッキリ描くべきだったと思う。
・過去作の死んだキャラを生き返らせるという安直すぎる嬉しくもないファンサービス
前項でも少し触れたが、確実に死んだキャラを生き返らせる演出の何がいいのか。あえて強い言葉で言わせてもらうが、開発陣が自己満足しているだけではないのか。死んだキャラを生き返らせることで、これまで死んでいった名キャラたちの死が軽くなるし、数々の名シーンが台無しだ。死と隣り合わせを実感させる龍が如くが持つ緊張感という魅力が無くなってきていること、そこにファンが冷めて呆れていることに開発陣は気づいた方がいい。
それに、「生きていました」の意味が分からない。無理がありすぎるし、意味を感じない。
「ラウカーロンはヘッドショットを喰らったけど生きていました」
「リチャードは銃で撃たれた上に、かなり高いビルの屋上から落ちたけど生きていました」
無理がありすぎるし、生きていても全く嬉しくない。特にリチャードに関してはシリーズの中でもトップクラスのクズキャラなので本当に嬉しくないし、人気キャラの嶺と一緒に落下したわけだから「嶺も実は生きていました」という安っぽい展開が来ないかと不安に駆られるので止めてほしい。
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柏木が桐生と話すシーンはグッときた。柏木さんは生きていて嬉しいキャラなので良かった。だが、柏木が生きてるのならバーを経営する前に色々責任とることがあるのでは?とも思ってしまう。
・龍が如くにRPGは合わない
これは完全に私の好みであり、懐古厨的な発言なので無視してもらって構わないのだが、龍が如くにRPGは合わないと思っている。
特にそれを痛感したのが海老名戦(ラスボス戦)だ。てっきり桐生VS海老名のタイマンバトルだと思っていたら、まさかの4対1で戦う(桐生+仲間3人 VS 海老名)。4人で海老名をボコボコにしている様は見ていてどちらが敵か分からなくなってしまうし、桐生という最強の男が仲間と共に一人をいじめている様は本当に見てられなかった。過去作の桐生であれば、絶対にこのようなことはしなかったはずだ。海老名が服を脱いで背中の入れ墨を見せ、それに対して桐生も背中の入れ墨を見せる、この流れだったら男同士のタイマンしかないと思うし、桐生最後のボスなのだから桐生一馬らしい男気溢れる華のあるバトルを見たかった。だがこの願望は龍が如くがRPGになってしまったことで叶わなかった。それはそうだ。ここまで長い時間をかけて育成してきた仲間が、肝心なラスボスで操作できないのもおかしい。この点から、男と男の熱い戦いを描く龍が如くにRPGは合わない。
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また、ターン制バトルも龍が如くには合わないと思っている。龍が如くのボス戦は、バトルに入る前に熱い演出やQTEが入り、プレイヤー側の「よし、こいつを倒してやる!」という気持ちを最大限高めさせてくれる。なのに、バトルに入った瞬間キャラは棒立ちで、どのコマンドを選びますか?の画面になる。一気にバトルに対する熱い気持ちが冷める。
ボス戦に入ると、前のめりになりながら手汗だらけの手でコントローラーを握りしめ、相手の攻撃を避け、攻撃を入れるという激しい攻防戦を行う「龍が如くらしいボス戦」を遊びたい。
そしてRPGということはレベル上げも必要になってくるのだが、龍が如くにレベル上げはミスマッチのように感じる。龍が如くはストーリーが面白いため、先が気になって一気にゲームをクリアまで遊んでしまうのも大きな楽しみの一つだった。だが、RPGになったことで、「この先が気になる、早く進めたい!」という気持ちにせっかくなっても、ゲーム側が「この先の推奨レベルは○○です」と言ってきてレベル上げを強要される。推奨レベルを無視しても先には進めるが、アクションゲームではなくターン制バトルになってしまったため、過去作のように自分のスキルでどうにかすることができず、ボスを倒せなくなる。
このRPG特有のテンポの悪さは私は好きだ。何せ私はドラクエやFFなどのRPGが大好きだ。だが、龍が如くにはミスマッチだと考える。
・今作の良かったところも沢山あります
ここまでチマチマと今作のストーリーの悪口を言ってしまったが、ストーリー以外の部分は非常に楽しめた。
→戦略性と爽快感を兼ね備えたターン制バトル
龍が如くにターン制バトルは合わないと思っているが、今作のバトルは非常に楽しかった。自分の位置、仲間と敵の位置関係、バトルエリアの環境、属性、技の特性など膨大な要素を考慮したうえで、適切な行動を選んでいくバトルは、戦略性たっぷりだった。自分の選択が上手くいくと敵を一掃できたりして爽快感も抜群だった。仲間との絆を深めると、仲間との連携攻撃が強化され、追撃をどんどんしていけるようになるので、バトルを重ねていくメリットがあるのも良かった。個人的に今まで遊んだどのターン制バトルよりも好みだったかもしれない。
→完成度の高いRPG要素
装備の購入・作成・カスタマイズ、マップ探索やアクティビティによる仲間との絆強化、ダンジョンなどRPGに欲しいものは全て揃っていた。そして一つ一つの完成度が高い。ダンジョンを攻略すると武器を強化するための素材が手に入ったり、マップを探索すると仲間とのきずなが深まってバトルが有利になるなど、一つ一つの要素が相互関係になっているためモチベーションが維持され、飽きることなく長い間楽しめるRPGになっていた。
→楽しすぎるやり込み要素
さすが龍が如くシリーズ、やり込み要素のボリュームと種類が半端ではなかった。その中でも気に入ったのがドンドコ島だ。島を開拓し、施設を建て、観光客を呼び、お金を稼いでいくコンテンツで、30時間程楽しめた。このボリュームだけでゲーム1本分だ。サンドボックスゲーム的な要素と経営シュミレーターが融合したようなものとなっており、狂ったように夢中で遊んでいた。気づいたら平気で3、4時間経っている時間泥棒なコンテンツだった。
→エンディングノートを初めとする桐生関連のイベント
桐生が風間と再会し、そこから過去シリーズに登場したキャラと再会していくイベントは、ツッコミどころ満載ではあるが、シリーズファンとしてこれ以上嬉しいものはなかった。特に秋山関連のイベントはお気に入りだ。龍が如く6での秋山のことを考えると、だいぶ不遇なキャラだったので、秋山の寂しさや怒りが伝わってくるイベントを用意してくれたことに感謝だ。
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また、メインストーリーで桐生が最終決戦に向かう前に、桐生がいつもの髪型と服装にチェンジする映像と桐生のBGMが流れるシーンがあるのだが、最高に胸が熱くなった。昔の格好をしているが、昔と比べて痩せこけて白髪の増えた桐生さんを見て、何だか感動が混みあがった。ここまで1人の人間を描いてきた龍が如くシリーズだからこそ作り上げることのできた最高の演出だったと思う。
→その他
その他にも良かった部分は沢山あった。
・山井、トミザワ、海老名などの魅力ある新キャラ
・宗教団体が敵という、今までとは違った不気味さを持つ敵
・明るい作風
・システム的な便利さ
・迫力満点なカットシーン
・今後の「龍が如くシリーズ」の方向性に対する不安。シリアスで暗いヤクザものはもう見れないのか
また懐古厨みたいなことを言ってしまい、申し訳ないのだが、私は龍が如く6までのシリアスで暗いヤクザものの龍が如くが好きだった。
マフィア同士の緊張感のある抗争、1人の人間を細部まで時間をかけていく良い意味でのスケールの小ささ、金・女・暴力という醜いテーマ性など、こういった要素が無くなってしまったと思う。
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7でヤクザが解散してしまったので、ストーリー的にも昔のようなヤクザものを作ることは難しいのかもしれないが、「ヤクザ」というテーマを描いているのはゲーム業界の中でも龍が如くだけで、ここに私は惹かれていたので、ヤクザ色の薄い龍が如くは好みではなかった。
特に8では、ダイオウイカよりも大きいイカや、ジャンボ級のサメが敵として出てきて、ファンタジー要素がかなり増えた。それによりシリーズの持つリアリティが壊れてきている。それに拍車をかけるように、次回作である龍が如く8外伝では、真島が海賊になるそうで、更にファンタジー色が強くなる。
これをシリーズの新たな挑戦として歓迎すべきなのか、シリーズの迷走と呼ぶべきなのかは分からないが、少なくとも私はワクワクはしない。
・まとめ
まとめると、今作はゲームとして最高に楽しめたが、ストーリーは非常に気になった。シリーズ1ファンに嫌われている「龍が如く6」のストーリーよりも個人的には酷かったと思っている。ネットでよく
「横山さんの脚本は酷い。
ジャッジアイズ、龍が如く0、7の脚本を担当している古田さんの脚本がいい」
という意見を見かける。確かに古田さんの脚本は素晴らしい。
だが私は横山さんの脚本も好きだ。本記事で横山さんが脚本担当したストーリーをボロクソに叩いてしまったわけだが、物語の本筋自体は悪くなかったと思う。
春日が自分の母親を探すためにハワイに行く設定や、春日の母が何故かハワイのマフィアに追われている設定、春日がビーチに素っ裸でいるシーンなど、横山さんの脚本はワクワクするストーリーとインパクトのあるシーンが魅力的だと思った。しかし、それらの設定に説得力を持たせる工夫や、細かい部分の肉付けなど、整合性の取り方の部分に大きな問題があったのだと思う。加えて説明不足な点も問題だ。もう少し、1つのストーリーで描く要素を減らし、スケールも絞り、必要なモノを丁寧に描いていくことができれば良いストーリーを作ることができると思っている。
そういった意味で、今後の龍が如くシリーズにも期待していきたい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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