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2025セレッソ大阪チーム編成

我々Jリーグファンにとって最も楽しめるオフシーズンも既に晩期を迎え、現実と向き合い続ける日々がじわじわと近づいてきている今日この頃。公開されるTMも全て消費し、残るは練習と非公開TMで積み上げるのみとなった。キャンプ不参加勢なので詳細のところは一切わからないが、YouTubeなどで公開されている情報のみでパパスセレッソの2025シーズンについて推し量っていきたい。


オフシーズンの動向

すでに補強にも動いていた最中に大岩剛へのオファーが急遽破談したことから始まったこのオフシーズン。そうして空いた新監督の席には元鹿児島ユナイテッド監督、そしてマリノス時代にコーチとして優勝を経験しているアーサー・パパス監督を迎え、「攻撃サッカー」でトップ3を目指すことを目標に2025年の新チームが立ち上げられた。

大岩剛破談を受けてのパパス監督招聘というのは見るからに一貫性のない監督人事にはなるが、ここに関しては致し方ない部分が大きいのではないかと思う。そもそも大岩剛が争奪戦になっていたり某パワハラ監督にも仕事が降ってくるほどに、今の日本サッカーは指導者が枯渇している。その上決まりかけていた監督に逃げられたという状況下では、向こうから売り込んできたパパス監督くらいしか選択肢が残っていなかったのが実情なのだろう。普段から先のことも見据えて欧州方面にもアンテナを向け調査していれば話は変わったかもしれないが、会見で統括部長が述べていたように「今年のことしか全く考えていない」ので。

ということで長く続いた小菊政権からパパス新体制に移行したわけだが、それにあたって指導陣もブルーノ・クアドロス以外は全員退団。ラファエル・ナポリとハス・スケンデロビッチのオーストラリア人指導者や鹿児島時代に監督通訳を務めていた塚本修太分析コーチなど、パパス監督含めて11人の新たなスタッフを迎え入れることとなった。

また、新しくコーチに就任した小松塁は現役引退後セレッソのスクールコーチに就任し、8年目にしてトップチームのコーチに昇格。昨季限りでチームを離れた藤本康太はアンバサダーを挟んで即アシスタントコーチに就任したが、小松のこれからの貢献次第では今後のセレッソOBの指導者は小松がモデルケースになっていくかもしれない。

選手補強に関してはOUTが16人、INがトップ昇格後即レンタルの木實を含めて12人となった。一見OUTの比重が大きいようにも見えるが、16人のうち7人は昨季トップチームに帯同していなかった選手。なので実質OUTは9人、INは11人となり、人数的には2人増えていることになる。

最大のトピックはやはりレオセアラの鹿島アントラーズへの移籍だろう。チーム総得点の50%を1人で叩き出し、副キャプテンとして腕章を巻くことも多かったチームの主軸を国内のチームに引き抜かれてしまったことはシンプルに痛い。それで得た移籍金4.7億円は今オフで消費されているようには見えないが、夏の補強にベットされるのか、はたまた毎熊の移籍金のように闇に消えるのか。

昨季は多かった期限付き移籍に関しては3選手のレンタルバックにより今季は5人に。トップ昇格の木實は1年目から北九州にレンタルすることになったが、木實のプレー次第で昇格即レンタルのケースも増えていくだろう。

他には西川が小菊チルドレンを掻き集める鳥栖に、石渡はいわきで筋肉修行に、岡澤がボール保持志向の藤枝に、木下は風間一派擁する南葛へのレンタルとなっているが、今オフのレンタル先の選出はかなり良さげ。各選手の成長させたいところが伸びやすいような環境を選んでいることが伝わってくる。木下に関してはもう一度風間一派の元でプレーする必要があるのか?とは思うが。

現場以外のところに目を向ければ、森島寛晃代表取締役社長が3月いっぱいで社長から退き、会長に就任。後任には日置貴之氏が就くとのこと。社長と統括部長がズブズブの関係というのは組織として非常にまずい状況だと個人的には思っていたので、今後は統括部に対しても正当な評価が下されることを期待したい。

そのチーム統括部にも小さくない動きが。まずは長年に渡ってスカウトを務めてきた都丸善隆氏が松本山雅FCのスポーツダイレクターに就任し、クラブを離れることに。そして昨季現役引退を発表した山下達也がチーム統括部に配属されることも判明している。山下に関しては「KICK OFF! KANSAI」にてスカウト兼スクールコーチに就任すると語られていたため、都丸氏の異動によって空いた椅子に座ることになるのだろう。人望や人格も素晴らしい人間なので、セカンドキャリアでも成功を手にして欲しいところだ。


チーム編成

絶対的ストライカーであったレオセアラ含むCFと左WGが全員退団するという波乱のオフシーズンだったが、最終的に2025年のスカッドはこの29人で構成されることとなった。

現時点で、J1で登録人数が30人を切っているのはマリノス27人、ガンバ29人、セレッソ29人、サンフレッチェ29人の4クラブ。マリノスはすでに外国籍CBを2人獲得しているため、実質29人になる。そしてガンバはCFを、サンフレッチェはGKをそれぞれ国外から獲得することが現地報道されているため、このままいけばマリノスと共にJ1で最少となる30人以下のスモールスカッドでシーズンに臨むことになるだろう。この人数のまま推移するとして、開幕時の時点でセレッソ大阪の登録人数が30人を下回るのは降格した2014年以来のことである。

高強度で戦うことを志向するチームにスモールスカッドを用意するというのは自殺行為のようにも見えるが、これがどう響くかどうか。


GK

キムジンヒョン 福井 上林

絶対的守護神であるジンヒョンに福井と上林という新加入2人が挑む形。タイキャンプにはイシボウ拳が帯同しており、おそらくシーズンのどこかで2種登録も済まされるだろう。

TMや紅白戦を見るに、現在の序列としてはジンヒョン>福井>上林といったところか。セービングはもちろんのこと、保持時におけるビルドアップ関与やハイラインのカバーリングも求められるため、それぞれが自分のアイデンティティを出してハイレベルな競争を期待したいところ。


CB

畠中 進藤 西尾 舩木 (田中)

田中が基本的にボランチ起用されているためただでさえ頭数が4人でカツカツだったところに、登里負傷を受けて舩木が左SBにスライドする事態も発生。人数が少なすぎてバックラインが酷使された昨シーズンでさえCBは5人+ハブナーだったため、今季は怪我人が1人でも出れば昨季以上の大きな代償を払うこととなるだろう。

またチーム内で最もカバーリング能力に長けていた鳥海の抜けた穴を埋めれたとは言い難いCBの陣容にはなったが、ハイラインを敷く環境下で誰がこの部分の成長を示せるかは注目ポイントになるだろう。特に畠中はパパス監督の理解者として、さらにSBに回された舩木を除いて唯一の左CBとしてチームの主軸になることが求められる。彼自身ここ数年は怪我にも悩まされてきたわけだが、今季は怪我なくシーズンを走り切って欲しいところ。


右SB

奥田 中村 (西尾) (進藤) (阪田) (田中)

誕生日が1ヶ月違いの2人による一騎打ち。共に内側に入る動きが得意なインバーテッド型のSBだが、より万能性に優れる奥田とキック性能に長けた中村という構図になるか。TMでは奥田がスタメンだった模様だが、中村のここからの巻き返しと激しいスタメン争いを期待したい。

また、2-3移動役として西尾や進藤、2-7移動役として阪田の択も。今のところは2-6、2-8移動がメインとなっていそうだが、シーズン中の修正や対策などで彼らが起用される可能性もあるだろう。


左SB

登里 髙橋 (大迫) (舩木) (奥田)

登里が右ハムストリング筋損傷の怪我で離脱。さらに髙橋もU-20アジア杯のメンバーに選出されており、すでに本職不在の危機に晒されているポジション。現時点では舩木と大迫がSBにスライドしている模様だが、奥田あたりにも起用の可能性があるか。登里は今回の怪我含めシーズンフルで戦い抜く計算はしずらい選手で、髙橋は今後も代表で離脱する可能性大。始動早々編成のミスが露呈されている状況だが、兼任ポジションの選手たちが如何にカバーできるかに注目が集まる。

髙橋に関してはまだトップリーグでのプレー経験がないが、代表で離脱する期間以外は主戦力として計算できなければ困るところ。まだプロになって1年も経っていない選手に対して酷な要求にはなるかもしれないが、世界の若手60選に選ばれた実力を示すべく、なんとか頑張って欲しい。


ボランチ

田中 喜田 奥埜 香川 平野 松本 大迫

松本と大迫がレンタルバックして7人体制となった激戦区。とはいえ昨季の怪我により平野がキャンプ不参加、田中は枯渇しているCBに回される可能性、さらに喜田と香川も怪我がちの懸念を抱えているため、レンタルバックの2人にもチャンスはあるだろう。全員が違ったストロングポイントを持っているため、監督の起用法に注目が集まるところ。

またボランチはスポニチよりジョルジーニョの獲得に動くとの報道もあったポジションでもあるが、その後の双方の言動を踏まえても十中八九実現はしないだろう。狙っていたのが事実なのであればなぜ噂垢が把握していたのか、事実でないのだとすればなぜスポニチが報道したのかは気になるところではある。


右WG

ルーカス ジャルンサック (柴山) (阪田) (古山)

キャンプ中は柴山と阪田が左サイドに回されており、ルーカスとジャルンサックが右WGを主戦場としていた。さらに、チーム唯一の純ストライカーである古山もこのポジションでプレー。こうした起用の意図に関しては後程考察したい。

ジャルンサックに関しては6月30日までの買取OP付レンタル移籍。買い取らない選択をした場合はシーズン半ばでBGPUに戻ることになる。パパス監督が以前まで監督を務めていたタイからの加入ということで、恒例のアジア戦略だけでなく監督の意向も含まれていそうな移籍なので、完全移籍に至るまでの活躍を期待したいところだ。


左WG

チアゴ 柴山 阪田

新加入のチアゴが今のところは調整がメインとなっており、柴山と阪田が主に左WGを務めていた。チアゴのコンディションが整い次第2人は右サイドとの兼任になると考えられるが、場合によってはハットンが左WGに回ってくる可能性もあるか。

チアゴに関してはまだ練習試合にも出場していないということで、現在のチーム最大の不確定要素。本職左WGが1人だけの構成になっているので、彼がどれだけやれるかは重要なポイントになる。キャリアの中で2度暴力行為を理由に退場しているという経歴はなかなかにインパクトが強いが、そうした印象を上書きするほどの活躍をして欲しいところ。


トップ下

ブエノ 北野 (中島) (上門) (柴山)

小菊政権ではなかなか出番を掴めなかったブエノだが、このキャンプではトップ下として主力に据えられている様子。昨季の時点では移籍金や年俸に見合った活躍はできていないので、今季こそは主力としてフル稼働することが求められる。

日本人アタッカーの中では、北野が優先的にこのポジションで起用されている模様。兼任起用も考えられる柴山も含め、勝負の年になるであろう選手が揃っているので、激しいポジション争いを期待したい。


CF

ハットン 古山 中島 上門 (北野)

昨季1人でチーム総得点の50%を叩き出したレオセアラが鹿島に移籍。この大きな穴を新加入のハットンと古山が埋められるかに注目が集まるが、古山は右WGとしてもプレーしている模様。ハットンに関しては徳島戦こそスタメンだったが、仙台戦は不在のようだった。プレッシング性能とワンツーの受け手になるのが得意なハットン、純ストライカーとしてのポジショニングとポストプレーが得意な古山と、互いに異なる特徴を持っているだけに、どのようにしてチームのストロングポイントとして組み込めるか。

また、トップ下がメインになると思われた中島と上門も現時点ではCFとして計算されている様子。小菊体制ではボランチ起用もあった2人がCF、北野がトップ下になっていた理由については後程考察したい。


パパス新監督のフットボール観

練習前の挨拶やトレーニング中の指導方法など、昨季まではなかった新たな風を吹き込んでいるパパス監督だが、オンザピッチにおいても確立されたフットボール観のもとチームビルドを行っていることが見て取れる。

例えばTMのキックオフの場面。小菊政権下ではすぐにCBが敵陣の左サイドに向けてロングボールを放り込む形をとっていたが、今季のTMではファーストプレーから繋いでいく様子が見られた。これは、自分たちはボールを繋いで地上から攻めるという意思表示の最たる例である。昨季は繋いだ先で詰まってしまいロングボールに逃げるシーンが何度もあったが、今季からはそれでも蹴らずに意地でも繋いでいき、ボールを保持していこうという姿勢を見せ続けることになるだろう。

ただ、一概にボール保持志向と言っても、その狙いや振る舞いは監督によっても様々。パパス監督の狙いや各ポジションに求められることなどを、現状の選手起用法などから考えていきたい。


WGの役回りと求められる能力

わかりやすく特徴が出ているのがWG。先ほどチーム編成のところでも述べたように、本職右WGの柴山と阪田が左サイドに回され、本職CFの古山が右サイドに回されている。純然たるCFが古山しかいないと騒がれていたはずなのに、なぜその古山がWGをやっていて、尚且つ右サイドなのか。そして、昨季は柴山とルーカスが併用される場合は柴山が右WG、ルーカスが左WGだったのにも関わらず、なぜ柴山が左WGなのか。ここには明確なパパス監督の意図が詰まっている。

まず注目して欲しいのは各選手の利き足。右WGのルーカス、ジャルンサック、古山はいずれも右利き。左WGの柴山は左利き、阪田はチーム内のWGで最も両足を苦なく使える選手である。かつてロティーナは大外には逆足の選手を起用する傾向があった(2019年にプレシーズンで左利きの澤上を右WGに置き、開幕戦で左利きの舩木を右WBに置き、ルヴァン1戦目の大分戦で右利きの松田を左WBに置き、オフシーズンには同じく左利きの坂元の獲得を熱望した)が、パパス監督の場合はむしろ真逆であることが窺える。

そして公式YouTubeでも流されている練習メニューを見てみると、WGがスルーパスなどで裏に抜け、ワンタッチで折り返すというシーンが頻繁に見られる。パパス監督が順足にこだわっている理由はまさにここだろう。「いかにディフェンスラインの背後に抜け、スピードに乗ったまま中央に早いボールを折り返せるか」が、今季のWGに求められる能力の一つになるのではないか。

新加入のジャルンサックはその仮説を裏付ける貴重な材料になるかもしれない。以前Xの方でもポストしたのだが、ジャルンサックはまさにその役割にマッチした選手である。

24-25シーズンのジャルンサックのヒートマップ
2024シーズンのルーカスのヒートマップ
24-25シーズンの三笘のヒートマップ

こちらのヒートマップを見ると、ジャルンサックは昨季のルーカスよりも敵陣ペナルティエリアの右ポケットに侵入する回数が多いが、ドリブル突破でペナルティエリアに侵入しているわけではないことが窺える。自ら切り込んで侵入しているのであれば、3枚目の三笘のように、大外の赤い箇所とポケットの赤い箇所が繋がっているはずだからだ。

つまりジャルンサックはいわゆるバックドアという動きが得意であり、先ほど述べたパパス監督の求めるWG観にもマッチしているということがわかっていただけるのではないかと思う。ジャルンサックの獲得が誰主導の補強なのかはわからないが、もし自身もタイで監督を務めていたパパス監督が希望して獲得に至ったのであれば、この仮説は十中八九正しいと言えるのではないか。

そして折り返した先でフィニッシャーになるのはCFと逆サイドのWG。これも練習動画を見ていればわかりやすく、WGが裏に抜ける形と併せて、SBやボランチがハーフレーンに走り込んで折り返す形も何度も練習していた。古山がWGとして起用されているのも、逆サイドから入ってくるフィニッシャーとしての能力を買われているのだろう。古山はCBの背後からワンタッチで合わせに行く形を得意としているため、ニーズにマッチするし、大外にクロスターゲットがいるというのはそれだけで大きな武器になる。「フィニッシュ設計に則り、逆サイドからの折り返しに即座に合わせにいく」ことも役割の一つになるのではないか。

そしてこの二つの仮説において重要なのは「スピードに乗ったまま」「即座に」というところ。何せ速さを求めていないのであれば、別に裏に抜けたあともすぐに折り返さずに自ら中央へ持ち運べばいいし、順足である必要性も薄い。つまり、今季のセレッソは早く攻め切ることが保持時の至上命題であり、時間を作ったりする作業はこのチームのWGには求められていないのだろう。

またこれは余談となるのだが、本家ポステコグルーもおそらくこうしたWG観であるはず。ジョンソンやヴェルナーといったWGで苦労しているトッテナムだが、良いWGがいないのではなくて、あくまでジョンソンとヴェルナーがポステコグルーのWG観にマッチする選手なのだと思う。


CFとトップ下に求められる能力

現在CFとトップ下の組み合わせはCFハットンとトップ下ブエノの外国籍コンビ、CF中島とトップ下北野の日本人コンビが主になっている様子。ここで疑問になるのが、なぜ中島がCF、北野がトップ下になっているかということ。また上門もCFがメイン、古山は右WGとしても計算されており、シーズンイン以前の想定とは大きく異なる起用法になっている。パパス監督がこの二つのポジションに何を求めているのかを、中島と北野の特徴から考察していきたい。

まず個人的に思ったのはラインブレイクランのところ。北野は裏抜けの試行回数を稼げることが特徴の一つでもあるのだが、そのランニングは直線的であることが多い。ストライカーとしてボールホルダーに対して角度を作りながら裏抜けをするデスマルケもそこまで上手くないイメージである。

対して中島は過去のポジション柄試行回数は多くはないが、膨らみながら裏抜けすることはうまい印象。裏抜けの試行回数自体はWGが稼いでくれる設計でもあるので、こうした観点で見ると、中島の方がCFに向いていると言えるのではないか。

また北野は昨季、IHとしてサイドフローや列落ちによってビルドアップの出口になるムーブが非常に上手くなっていたことも見逃せない。練習動画ではブエノがサイドフローからレイオフのターゲットになっている様子が見られ、仙台戦の動画では北野が前を向いて前進するシーンが何度か見られた。おそらくトップ下の仕事の一つとなっているのだろう。これに関しては中島も得意にしているところではあるが、北野の成長によりこの部分でのアドバンテージは薄く、どちらがトップ下を務めるかの決め手にはならないか。

よって現時点ではラインブレイクランのところに理由があるという仮説を立てたい。ただ、それだけでは上門がCFで古山が右WGであることの理由には不適切とも思うし、トップ下の適正があるはずの中島をCFに固定する理由にもならないので、他に何か思いつく人は教えて欲しい。


保持時

ビルドアップの目的に関しては先述の役回りや練習風景からもかなりわかりやすく、擬似カウンターを繰り出すことであると推測できる。

擬似カウンターと言うと2019年に片野坂監督率いる大分トリニータの影響で単語として一般化したイメージがあるが、近年ではデゼルビのブライトンなんかが得意とし、ペップがプレス回避のお手本と称賛したことでも有名である。GKを組み込んだビルドアップで相手を極限まで引き出し、トップ下とCFがターゲットとなるレイオフで局面を打開する形は日本でも注目を集めた。

パパスセレッソでも、そうしたレイオフやワンツーは前進手段の一つとなってくるのだろう。練習中ナポリヘッドコーチがレイオフの形を指導している様子も見られた。保持時にはいかに3人目が前向きでボールを引き取れる状態を作り、スピードアップを図れるかが鍵になってきそうだ。ロティーナ時代のじわじわ全体を押し上げていくビルドアップのようにはならないと思っていいだろう。

その中で特徴的なのはSBが内側に入っていく姿勢を見せていること。幅を取って相手のプレス陣形を広げるだけではなく、2-6移動や2-8移動により自らがレイオフのターゲットや3人目になる動きが見られた。特に敵陣に押し込んでいる際は2-8移動が顕著で、ペナルティエリアの中にいるのは当然。またドイスボランチの片割れが列を上げたり、トップ下の選手も幅広く動いてボールを引き取ったりなど、中央の3人+両SBの5人が流動的に動いて人もボールも動き続ける形を目指していることが窺える。

当然のようにSBが両方上がっているので、後方に関してはCB2人が頑張れという感じなのだろう。山下や藤本、茂庭らが悲鳴を上げるあの頃の再来である。本家ポステコグルーもそういう感じなので、カウンターでの失点は呼吸だと思っておいた方がいいと思う。これは推測だが、自分たちが高い位置を取ることで相手のアタッカーに帰陣を強要し、自陣から遠ざけることがポステコグルー一派のリスクマネジメントになっているのではないか。

また、前へのベクトルが強くなりすぎると、その分ボールロストのリスクも増大する。喜田が述べている早いだけではなくてゆっくりの時間を作るということは、配置でのリスク管理が皆無な中での貴重なリスク管理になるだろう。


非保持

口が酸っぱくなるほど言われている即時奪回とプレッシングからも察せる通り、非保持における至上命題はボールを奪い返すことになる。何せ、ボールを奪い返さなければハーフコートゲームは実現不可能だからだ。

理想形となるのは徳島戦の北野のゴールだろう。ボールを失っても即座に囲い込んで奪いかえし、カウンターに繋げればベスト。そのためにはSBもすぐに帰陣するのではなくカウンタープレスの一員になる。

セットする際の陣形はおそらく442で間違いないなさそう。新加入のハットンを含め前線にはプレッシング能力の高い選手が揃っているので、彼らがファーストディフェンダーとして機能できるかは非常に重要になる。徳島戦でハットンがPKを得たシーンのように、CFのワンサイドカットから相手ボランチのところでハメるのは狙いの一つになっているのではないか。

なのでボランチも前にベクトルを向けて奪いに行くことが求められるし、片方は広いエリアをカバーすることも求められる。田中は現時点でボランチがメインとなっているということはチーム編成のところでも触れたが、田中のカバーエリアの広さはJリーグでもトップクラス。舩木の左SBへのスライドを受けてCBが3人になった中でもボランチ起用がメインという報道が出たのは、この能力を高く評価されているからだろう。

また、WGがプレスに出る際にはSBも必ず高い位置まで潰しに行く原則がありそうなので、被カウンター時も含めてCBが晒される機会は昨季以上に増えることが予想される。今季のスカッドのCBはいずれも前向きにベクトルを向けれた時に強さを発揮するタイプになるので、後方の広いスペースをカバーする能力の向上に期待したいところ。それなら鳥海を出しちゃいけなかったとか、必要なのは畠中の類じゃなくてチアゴマルチンスの類だったとか言ってはいけない。


予想布陣

予想布陣

今シーズンからはベンチ入りの人数も7人から9人に増える。様々なキャラクターの選手を置けるようになったことで、交代策の幅も広がるだろう。監督スタッフにはスタートのゲームプランのみならず、試合中の修正力がこれまで以上に求められる。そうした面ではリーグ随一のスモールスカッドであるセレッソには不利に働くかもしれないが、なんとか頑張ってほしい。新チームの躍進を、そしてこれ以上の怪我人が出ないことを祈っている。


引用サイト

Sofascore(https://www.sofascore.com/)

TACTICALista(https://tacticalista.com/)


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