2024セレッソ大阪全選手論評

今季セレッソに所属した全選手に関して、個人的に思ったことなどをメモとして残してみることにしてみた。どうせ見る人も少ないんだし、好き勝手に思う存分書きたいことを書こうと思う。駄文な上にとんでもない文章量になってしまったが、ぜひ最後までお付き合いしてくれると嬉しい限りです。

なお使用しているデータのほとんどは第37節時点でのデータとなっているので、最終節で変動している可能性あり。


GK

#1 ヤン ハンビン

ルヴァン杯のいわて、琉球、町田戦1st legの3試合と天皇杯の甲府戦120分のみの出場で、リーグ戦での出場はなし。2017年以降のキャリアでここまで試合に出れなかったシーズンも無かったと思うが、それでも準備を怠ることなく出場した試合では必ずビッグセーブを披露してくれた。

195センチの躯体と長い手脚を活かしたセービングはジンヒョンを上回らんとするレベルで、いわて戦の終盤で見せたキャッチは鳥肌もの。クロス対応に関してはジンヒョンがたまに見誤ることがある分明確に上回ってる部分で、ふんわりとしたボールなら確実にキャッチしてくれるのが本当にありがたい。


一方で保持時に関してはやはりジンヒョンに軍配があがるところ。元々キック力はあるし、本人も移籍してから相当練習して上達しているのは見て取れるが、それでもジンヒョンのあのキックは一朝一夕で身につくものではない。監督次第ではスタメンを奪う可能性も高かったろうが、保持志向なのにビルドアップが仕込まれていない小菊政権においてはあのキックを捨てるわけにはいかなかった。

他クラブなら間違いなく不動のスタメンを飾れるレベルの選手であるので、おそらくシーズンオフにはオファーが殺到するだろうし、セレッソ側からしても上林豪が加入するのを考えると断る理由は少ない。キックの飛距離はあることやクロス対応がずば抜けているなどの特徴を鑑みると、黒田剛の町田なんかは確実に合うと思うし、ランゲラックの抜ける名古屋あたりも狙ってくる可能性は大いにあるだろう。

日本語もかなり上達していて、単語単語で選手に指示を出せるようになっているので、言語面も問題にならないと思う。本人も試合に出たい気持ちはあるだろうし、オファーがあるのであれば今シーズン限りでお別れになるのが既定路線だと思うが、できれば相手GKとしては対峙したくないところである。


#21 キム ジンヒョン

J通算500試合出場およびJ1通算400試合出場に今季で到達。セーブ総数は2021年以降最高の102回を記録。今季も何度もチームを救ってくれた。

ただ、シーズン終盤に失点がかさんだことで批判のコメントが多数。そもそも決定機を作られているチームの守備に文句を言いなさいとは思うが、確かにミスの頻度は増えてしまったかもしれない。

保持時の貢献度に関しては明確に近年よりも落ちた印象。これにはチームとしてのビルドアップのデザイン力の低下、清武弘嗣や松田陸、毎熊晟矢などのレシーバーが不在となったこと、左サイドの立ち位置が大きく変わったことなどに起因している。これらの要因によりロティーナ期からの必殺ミドルパスの刺さりが悪くなり、途中で引っかかることが急増した。これはデータとしても顕著に表れており、2019年と2020年には58%、2021年〜2023年までには50%前後に乗っていたロングパス成功率が今季37%に激減している。

そしてロングボールの成功率が下がるということはトランディションが増加するということのため、よりオープンな展開を助長する結果に繋がってしまっていた。カウンターであわや失点というシーンも例年より多かったのではないか。

無論、これらの現象はジンヒョン当人だけに責任があるわけではなく、むしろクルピ政権時の柿谷曜一朗への裏抜けロングボールの形やWGに1発で届けるロングボールなどのまた違う形での貢献を見せていたのは素晴らしいの一言でしかない。ただ、Jリーグでは唯一無二だったミドルパスが戦術的に組み込まれなくなったのは事実であり、ここはちょっともったいないなと。

これはジンヒョンのミスではあるけど、今季こういう一発で狙うロングフィードが増えたよね、という話

とはいえ依然としてJリーグ屈指のGKであることに間違いはない。大学最高のGKにまで成長した上林とて、その神座を奪取するのは至難の業だろう。この2人がどのようなスタメン争いを繰り広げるのか、今から楽しみでならない。


#31 清水 圭介

今季は天皇杯ジェイリース戦のみの出場に。試合に出れることが少ないのでどうしてもファン・サポーターから見えるのはYoutubeでの盛り上げ役であったりとピッチ外でのところにはなるのだが、やはりここ数年のセレッソの動画コンテンツは彼の存在無しには語れない部分はあると思う。

また、舞洲に練習を見に行くと、アタッカー陣の居残り練習に付き添っている光景が見ることができる。GKという特殊なポジションにおいて、試合に出れなくても文句を言うことなく練習の居残りにも付き添い、さらにムードメーカーとしても振る舞うことのできるプロフェッショナルは存在そのものに価値があるし、本当に偉大な選手であることに間違いはない。

今季は外国籍選手の枠が空いているのならハンビンがベンチに入っていたためベンチ入りの機会も急減したが、それでも今年で切れる契約を巻き直す理由は充分にある。あとは本人がどうしたいかにはよるが、よければ来季からも一緒に闘って欲しい選手の1人。

色々とネタの尽きない漢


#45 イシボウ 拳(2種登録)

現高校2年生。登録上は194センチとなっているが、ゲキサカの記事によると195センチに伸びている模様。まだ17歳でハンビンと同じ身長というのは末恐ろしい。ユースの試合では冗談抜きで周囲よりも頭ひとつ分抜けているので、時間が合えばぜひ試合を見に行ってみてほしい。素材としては間違いないので、ぜひトップチームまで上がってきて欲しいところだ。

木實くんで見切れてるところで胴体浮いてるんじゃないかと疑うレベル


DF

#2 毎熊 晟矢

今や日本を代表する右SBに成長し、AZでも既に主力に君臨。今季序盤の躍進は、毎熊無しにはあり得なかった。

SB位置でのプレス回避、内側に入ってのサポート、ハーフレーンへの走り込み、WGが場所を開けた際には大外の選手としても振る舞い、3バックの一角なら戦況を踏まえたキャリーでビルドアップを1人で完結させられる。もう褒めるところしかないし、少なくとも保持時において弱点という弱点は見つからない。

和製ハキミと呼ばれているが、個人的にはモロッコ代表の中なら現マンチェスターユナイテッドのマズラウィの方が似ていると思っていて、もっと言うならばナポリのディロレンツォが1番のシミラープレーヤー。昨季のレヴァークーゼンやジローナが見せたポジショナルプレーのリレーショナル化に適応できる現代型SBの権化であり、ELで露呈した対人性能の低さが改善されればおそらく次の夏に強豪クラブに引き抜かれるんじゃないかと思う。

ここまでの個人戦術と標準的な身体能力、謙虚さと向上心の全てを備えたSBはおそらく数年、いや数十年は出てこないだろうけども、彼が長崎にいた当時にコンバートを後押しした手倉森誠と吉田孝行、そしてJ2の選手に1億払ってでも獲得しようという意志を見せた梶野智には感謝しかない。この3人について手放しで褒めれる唯一の要素である。

全然やれてるのでこれからも頑張れ


#3 進藤 亮佑

初出場が9/22と、怪我が大きくのしかかったシーズンだった。チームとしては、ピッチ内で率先して声を出して修正だったり賛美だったりの声を送れるディフェンスリーダーを欠くというのは、単なる主力1人を失うだけのものではないなと改めて。一時期の守備崩壊も(根本的に直せるわけではないけど)ある程度の修正は施せたのではないかと思う。

そして本人にとっても、今季の大半を棒に振ったことは相当なロスだったのではないかと個人的には感じている。元々進藤は札幌在籍時、特に保持時に関しては感覚派のプレーヤーで、ビルドアップもプレス回避も出来なかった中で得点感覚を武器に評価を伸ばしたHVである。セレッソ加入当初も4バックに適応できず、さらに左CBや右SBでプレーさせられることもあり出場機会を掴めず。ミシャ式でしかプレーしてこなかったことが大きく響いていた中で、おそらく出番のない期間に相当勉強したのだろう。昨シーズンにはロジカルにプレーしようとする意識が少しずつ見られるようになっていた。

元々コメント力はあったのだが、特に最近のコメントは何がダメだったのかをうまく言語化できており、普段から入念にフィードバックと言語化を行っているのだと感じさせる。ようやくプレーも改善されて出場機会を掴み、手応えを感じていた次のシーズンに大きな怪我をしてしまったというのは、なかなか辛いものがあったのでないか。

怪我復帰以降は昨年以上に安定したプレーを披露。まだまだ裏へのボールの対応や足下のおぼつかなさは気になるし、日によってプレーに波があるのも変わっていないのだが、コンドゥクシオンの判断が良くなったのは大きいと思う。昨年なら無茶に運んでロストしていたシーンも減り、味方に時間と空間を与えるためのキャリーができるようになっていた。サイドチェンジが途中で引っ掛かるシーンは増えてしまったが、保持時の貢献度はかなり増したかなと。

結構崇拝していたらしい小菊さんもチームを去るということで、来季残ってくれるかが不透明な選手の1人であるとは思うが、どうか残って欲しいところ。

昨年最終節でのコメント。セレッソで1億円プレーヤーを目指そう


#6 登里 享平

今季より新加入した川崎のバンディエラ。川崎のビルドアップを個人でなんとかしてきたその能力を今季序盤に遺憾無く発揮してくれた。

2-6移動による325システムは戦術クラスタ界隈でも大人気。手段が目的化してただ脳死で移動するのではなく、田中駿汰に前を向かせてあげるための適切な角度でのサポート、絞らなくていいタイミングでは絞らないなど、可変が目的になるのではない順応性が素晴らしかった。

この頃は楽しかったね


ネガトラ時の被カウンターとたまに見せる川崎魂密集アタック以外にはほとんど文句の付け所のない出来であったが、大阪ダービーでの怪我により全ての歯車が破綻。毎熊と登里におんぶ抱っこだった325システムは機能不全となり、彼の不在時にチームは小菊政権恒例のリビルドによって別チームに変貌してしまった。

今年で34歳になるSBがアップダウンの激しいフットボールに順応できるはずもなく、必然的に怪我から復帰以降も出場機会は激減。38歳になっても香車式SBでプレーし続ける長友佑都や35歳になっても永遠に走り続ける奥埜博亮が異常なのである。WB採用時なら尚更で、彼自身大外のプレーやクロスを売りにしてるわけでもない。ついにはベンチ外となり、序盤の存在感とは裏腹に非常に苦しい中盤戦以降となった。

だが、来季監督に就任するパパス監督はポステコグルー流派。SBは如何にタイミングよく2-6、2-8移動できるかが求められる。世界最高峰のプレミアリーグのトッテナムの選手でさえこのポジショニングには苦難しているわけで、一朝一夕にできるようになるプレーではない。登里が重宝されるのは間違いないだろう。

ピッチ内では最高のお手本となりながら的確な指示を飛ばし、ピッチ外ではムードメーカーとしての役割も果たせる優勝請負人が居てくれることは本当に大きなこと。特に髙橋仁胡にとっては橋渡し役としても頼りになるだろう。少なくとも髙橋が一人前に育つまでは、欲を言えばタイトルを獲得できるまでは、登里にはこのクラブでプレーして欲しいところだ。


#14 舩木 翔

丸橋祐介の14番を受け継いだ今シーズンは27節京都戦までのリーグ戦全試合にフル出場し、シーズンアウトとなる怪我により欠場した32節柏戦以前に行われた全公式戦に出場。この間スタメンではなかったのもルヴァンいわて戦と琉球戦のみであり、ここまで休み無く試合に出続けていればそら怪我するよなというほどの酷使具合だった。総プレータイムは3000分越え。ACLもなくカップ戦も早期敗退、そしてシーズンアウトの大怪我をしたにも関わらずこのプレータイムというのはちょっと異常。多分労基で訴えたら勝訴できる。

9月にシーズンアウトの癖してチーム4番目の公式戦出場時間。リーグ戦以外でも稼働させすぎた



昨季中盤以降に左SBとして出場機会を掴んでいたとはいえ、今季彼がここまで酷使されると予想できた人は誰1人としていなかったのではないか。シーズン序盤は325可変システムにおいて、後方の発射台としての役割を課されたCBで安定したプレーを披露。ワンステップで繰り出すサイドチェンジは左CBを争う鳥海にはないもので、元々得意としていた低い位置から斜めに刺す楔のパスもいいアクセントになっていた。SBとしての弱点であった対人守備の弱さや足の遅さ、高い位置でできることが少ないこともカバーすることに成功し、ついに最適ポジションを見つけたと思われた。

問題は登里離脱の大阪ダービー以降である。元々舩木は左SBとして計算されていたため登里のバックアッパーが他におらず、そうなると必然的に舩木が左SBにスライド。先述の弱点が露呈されるようになったのに加え、CB慣れしたことで非保持のポジショニングもチグハグになり、とてもいいプレーだったとは言えない出来だった。登里復帰以降は再びCBに戻ったが、過労もあってトップパフォーマンスには戻らず。湘南戦を最後にシーズンアウトとなった。

来季はおそらくCBとして計算され、左SBも相応の補強はしてくれると思うので一つのポジションに集中できると思う。少なくともCBとしては今シーズン通して大きく成長しており、非保持には進藤に次ぐくらいに声を出すようにもなったし、保持時も意図的にスローペースに持ち込むようなシーンが見られるようになった。もちろん身体能力的な弱点や対人守備の弱さは残るが、彼が待望の左利きCBとしてさらに覚醒してくれれば、これ以上に大きなことはない。


#16 奥田 勇人

大卒ルーキーながら、今季公式戦は鳥栖、柏、高熱を出したヴェルディ戦以外の全てにメンバー入り。毎熊の海外移籍も含めて明らかにスカッドの編成ミスがあった中でも致命傷にはならずに済んだのは、奥田が怪我なくフルシーズンを闘ってくれたことが大きい。

毎熊や登里と同様に相手を見てプレーできるSBで、保持時のポジショニングが素晴らしい。ボールを受けた時に運んだりと相手を動かそうとする意識が見られるのもいいところ。また、少ないステップでのロングフィードを両足で繰り出せたり、サイドの位置で嵌めどころになってしまってもロストはしないのもありがたい。出場機会を得れるようになった頃にはSBが大外レーンに配置されることも多くなったのでなかなか今季は見られなかったが、WGが持ったところでハーフレーンに走り込んで崩しに関われるのも本来のストロングポイントであるように感じている。

問題は非保持で、特にクロス対応の部分は正直なところJ1レベルに達していない。そもそもここにいなければならない、というシーンで絞れていないのはコーチ陣にも責任はあるし改善しようという意志は見えるシーンもあるが、それでもあれだけ失点しているのだから擁護はしずらい。松田陸は絞ったあとに大外からやられるのがパターンであったが、それは彼がしっかりと絞っているからであり、大前提からそもそも異なっている。

また、保持時でもリスク管理の部分はまだまだだなと感じる。無茶なパスを付けてカウンターを喰らうシーンも散見し、ここに関しても松田陸の教えを受けれなかったのは残念なところ。

ただ、身体能力のところに目を瞑れば毎熊レベルの選手になれるポテンシャルがあるので、小菊さんが言っていたように代表を目指して欲しい選手。来季はまた新しく本職右SBの中村拓海が加入濃厚という報道が出ている。2人とも若く誕生日も1ヶ月しか違わないので、共に高め合って競争して欲しい。

この守備対応は素晴らしかった


#22 髙橋 仁胡

シーズン通してかなりやりくりが難しくなった左SBのバックアッパーとして夏に加入。とはいえ3バック採用などもありドルトムント戦以外は出番なく半年を終えた。

あまりにも判断材料が少なすぎて過去の代表戦でのイメージでしか語れないのだが、非常に万能で状況に応じてリポジを行えるSBだなという印象を個人的には持っている。

CBが持った際に相手がプレスを掛けれる状態であれば必ずバックステップを踏んで角度を作ったり、受けるタイミングで少し絞りながらコンオリで相手を剥がすことで嵌めどころになることを防ぐ。CBが運べると判断したならば高さを微調整することでパス一本で1stラインを突破したり、斜めのランニングでWGへのパスコース開通&間受けで前進を図る。WGが内側に絞っているならば2-7移動で大外の選手不在を補完、チームとしてリスク管理ができていないと見るや否や猛ダッシュで帰陣するなど、常にチームのバランスを取り続けているのが印象的だった。

オンザボールでも引き付けてリリースは当然のように行い、プレス回避の局面では相手のSB-CB間を通すパスで盤面を裏返せる。来季からポステコ式235における2-6移動からボランチとしての仕事もこなせるかどうかはわからないが、まあ普通にやれそうな雰囲気は感じなくもない。

味方に指示を出し続けているのも印象的で、ボールに近づきすぎる味方に対して制止したり、逆サイドを指差してボールの循環をもっと広くするように訴えたりするシーンはよく見られた。世代別代表の若い選手たちがこうした選手と共にプレーできることは非常に大きいことであるはず。

非保持においてはポジショニングは間違いなさそうだが、対人性能のところはおそらく懸念されているところなのだと思う。対面に振り切られるシーンは代表戦でもいくつかあり、シンプルに身体がまだ出来上がっていないのでトップチームの練習では当たり負けしたりするシーンもあるのではないだろうか。

世界の若手60選にも選ばれていたように、彼には将来日本代表の左SBを担うどころか、世界トップレベルを目指してもらわないと困る存在。日本サッカーとの価値観の違いで潰してしまうわけにはいかないので、大事に育ててやって欲しいところ。

Desire DoueやPaul Wannerらと名を連ねてるの、シンプルに化け物すぎる


#23 山下 達也

今季で引退する桜のレジェンド。公式戦通算364試合出場、そのうち291試合はセレッソ大阪在籍時の出場であり、2013年から2018年の6年間でのリーグ戦15740分出場はフィールドプレイヤーでは丸橋祐介に次ぐ数字。間違いなくセレッソ大阪を象徴する選手の1人だった(ちなみに丸橋は18462分。これはGKのジンヒョンの17240分をも大きく上回る数字)。

対人性能やクロス対応、カバーリングなど非保持の性能が全般的に高く、近年は減ってきたまさしく守備者といった感じのCB。今でこそ足は遅くなってしまったが、かつてはスピードもトップレベルだった。対空時間が長いので空中戦も強く、ヘディングも強烈。ふんわりとしたボールを大外に放り込んだら、大体相手の上から叩きつけてくれる印象だった。

ただキャリア通して苦しんだなと思うのがやはりビルドアップの部分。シンプルに足下の技術が拙いのでパスを出したり運んだりするのが元々苦手で、2017年当時ボランチだった木本恭生がCBとして計算されるようになった頃から立場が危うくなっていった。2018年と2019年ではちょくちょく3421が試合頭から採用されたが、HVでは技術面での厳しさが顕著に出てしまっていたのは記憶に残っている。

2019年の夏から活躍の場を柏に移した際にはいきなりの移籍だった(ベンチ入りしていた試合当日の夜に移籍が発表された)ので公に別れの場を設けることができず。個人的にも翌日の舞洲に行くこともできなかったので、今回こそはこうして相応しい場を見届けれたことは嬉しかった。

柏レイソルに移籍する際の舞洲での挨拶。セレッソで引退してくれて本当に良かった


レイソルから帰ってきて以降ほとんど出場機会を得ることができなかった中でも愚直に練習を続けるその姿勢でチームを引っ張り続けてくれたことが今季のキャプテン就任に繋がったと思うし、まさにプロフェッショナルの塊のような選手だったと感じる。今後はアカデミーでコーチをするとの報道も出ていたが、どの道を歩んだとしても、彼のその性格ならこれからのセカンドキャリアも必ず成功するはず。これからの山下達也も応援し続けるし、セレッソ大阪を優勝に導いてくれる日を楽しみにしている。改めて、現役生活お疲れ様でした。


#24 鳥海 晃司

小菊セレッソでジンヒョン、奥埜に次ぐ3番目の出場数を誇った小菊チルドレン筆頭の1人。今季も総プレータイム2300分越えと主力としてフル稼働したが、昨季などに比べると苦しんだシーズンになったと思う。

鳥海の最大の長所はやはりカバーリング。危機察知力に優れ出足が早いので、SB裏へのボールなんかは今シーズンも何度も回収してくれた。クロス対応のところも上質で、難しい体勢からでもコーナーに逃げないクリアリングができる点も素晴らしい。

そして昨シーズンまでは絶賛されていたのがビルドアップの部分。しかし今シーズンはその長所が鳴りを潜めることとなった。

昨シーズンまで鳥海がビルドアップ時によく見せていた形といえば、内側にいる相手FWに対して正対しながら懐にあるボールを右足で縦に持ち込み、相手SHに影響を与えてから深い位置を取る山中亮輔に時間と空間を与えるというもの。つまり前提として、並行ポジションを取る発射台がいること、尚且つ左のハーフレーンから右足で持ち運べる状況であることが必要な形だった。

今シーズンは舩木が左CBのポジションに固定された(鳥海はサイドチェンジはあまり得意ではないので、この観点で舩木CBは重宝された)ことで右CBが主戦場になり後者が、ビルドアップの形も左SBが内側を取る上にWGが過剰に高い位置にいるので前者が共に成り立たず。さらに中盤も基本的に機能不全だったので縦パスも刺さらず、昨年までのビルドアップでの長所は完全に影を潜めることとなった。

今季の鳥海のヒートマップ。一応左右ともに13試合のスタメンで同じ試合数だったのだけど、左CBの時の方が露骨に前に運べていることが伺える

あと、非保持の弱点として挙げられることが多い印象なのが被カウンター時の対応。実際鳥海は正対しながら中央に向かってドリブルできる相手には弱い。おそらく監督にも無理にアタックするなと言われているので、ズルズル下がるだけになってしまうのは確かだ。一方で、そうした個人戦術の伴っていないカウンターを相手する際に選択肢をじわじわ削っていくのはすこぶる得意であり、ここの安定性は国内屈指なんじゃないかと思っている。なので、被カウンター時の対応はそこまで不安視していない。どちらかというと、1発で奪いに行って剥がされる方が心象が悪い。鳥海もたまに1発でスライディングするけども。

他にはたまにポジショニングがバグるシーンがあったり、競り負ける相手にはとことん競り負けたりもするのだが、基本的には万能で相手を見てプレーできるいいCBであると思っている。小菊さんが退任したことで去就が微妙な選手の1人かもしれないが、鳥海ほど計算できるCBは国内にはなかなかいないので、なんとか残って欲しいところ。


#28 ジャスティン ハブナー

3/11日に「ピンクのジャージを着てプレーしたい」という投稿があり、セレッソなんじゃないかと言いつつもどうせインテルマイアミなんだろうとみんな心の中で思ってたであろう中で、翌日にセレッソ大阪への期限付き移籍が発表。あのウルヴァーハンプトンワンダラーズからの加入ということもあり大きな反響と期待が集まったが、最終的にリーグ戦は6試合出場のスタメンは1試合のみに留まり、7/15日にレンタル解消となった。

デビューとなった新潟戦のファーストプレーでクリアのヘディングをスカしており、正直なところあの時点で個人的には懐疑的な目で見ていた感は否めない。その後神戸戦では舩木との連携ミスで失点したりと低調なパフォーマンス、ルヴァンいわて戦で開始早々裏抜けを許してDOGSOで退場と、負のスパイラルに陥ってしまっていた。

最後までフィットしなかったのは、本人の力不足もあるが代表チームによる離脱が複数回続いたことも大きいと思う。特に途中加入の外国籍CBなら周囲とのコミュニケーションは非常に大事な部分であるが、あれほど離脱期間が多ければ厳しいものがあるし、コンディションも上がりきらなかっただろう。

個人的に気になっていたのは次のプレーに対する準備が遅いことで、周りも見えていないことも多く、当然反応も遅くなるなという感じだった。キックは非常に上質なもので、練習の時も悉くゴール左上隅に強烈なシュートを突き刺しており、ここに関してはプレミア基準を感じたところ。あとセレッソの練習に関してイングランドよりハードな練習だとコメントしており、改めてこのチームの練習強度は過剰すぎるのだなと。

代表戦でもオウンゴールや退場の散々な結果、またピッチ外でも試合中にインスタグラムのストーリーを上げていたなど、プレー面でも精神面でもなかなか厳しい一年になった。とはいえイングランドではこれからもシーズンは続くので、なんとかめげずに頑張って欲しい。振る舞いを見てると、多分自分は悪くないと思ってそうだが。

知らんけど、まあ頑張れ


#33 西尾 隆矢

昨シーズンはヨニッチ鳥海進藤の牙城を崩せずほとんど試合に出れなかったが、今季はヨニッチの退団や進藤の怪我、鳥海の不調により出場機会を確保。代表では退場もあったりと苦しんだが、クラブでは主力としてシーズンを闘い続けた。

元より前に出て行って強く当たる部分は特徴として持っていた一方で後ろには弱く、またクロス対応もポジショニングが悪かったり目測を見誤って被るシーンが多かったりと、非保持だけでも弱点が多かった。今季もそこが大幅に改善したわけではないが、それでもミスはかなり減り、カバーリングの面も成長。少なくとも今季のスカッドの通年で出続けたCBの中では1番安定した守備を見せていたと感じる。

また、保持時に関しては運ぼうとしたり縦パスを刺そうという意識がこの一年で急増。まだまだやれるし判断も間違えるシーンは多いが、挑戦しようという姿勢は去年までとは大違いで、間違いなく成長していると思う。
 代表帰り初頭には右SBでもプレー。もちろん本職右SBと比べると攻撃性能では見劣りするが、先述の通り前にベクトルを向けれると強い選手なので、駆け上がってクロスを上げたりプレスでハメに行ったりできるSBは当人にかなり向いているポジションだと思っている。世界を目指すにおいてもCBなら高さの部分はかなりネックになるので、いっそのこと右SBとして本格的にやっていくのはアリなのでは。パパス監督のブリーラム時代の試合を見てみると、右SBが2-3移動で3バック化しているシーンはよく見られた。もちろんセレッソでどういう形を取るかはわからないが、オプションとしては想定しうる起用方なんじゃないかなと。

責任感の強い選手で、いつぞやの退場したシーンや負けが込んでいる時期の挨拶なんかは見ていてこっちも辛くなるので、背負い過ぎずにもっとリラックスして欲しいのが個人的な気持ち。もしかしたらゲームキャプテンを任せるのは彼にさらなる重荷を与えることになってるのかもしれないし、一度そこら辺を全部振り払ってあげるのも必要なんじゃないかなと思ったり。

今年の思い出、これだけ


MF

#4 平野 佑一

浦和からフリー移籍で加入したものの、怪我の影響でほぼ通年稼働できず。リーグ戦で稼働していたのは18節〜28節間のみ。出場停止の25節以外の9試合の出場となった。

まず、プレーの内容は非常に素晴らしいものであったことは念頭に置いておきたい。常にリポジを怠ることなく攻守においていなければいけないスペースに居続け、ボールを受ければ前を向いたりゆっくりキャリーを挟んだりワンタッチのサイドチェンジでプレス回避したりと状況に応じてプレーできる優秀なピボーテ。ロングレンジのパスの質も非常に高く、相手にとって処理しにくい位置にピンポイントで落とすことができる。強度の弱点はあれど、日本人ピボーテとしては素晴らしい能力を持っているのは間違いない。それだけに、怪我が多すぎるのが本当に大きく響いてしまっている。

出場した試合はあれほど素晴らしいプレーを見せていたのだから、ベンチメンバーから本職ボランチが0人になるほど評価が低いわけがない。よって、ベンチ外の期間は基本怪我による欠場だったのだろう。となると、フルシーズンのうち7ヶ月ほどは怪我をしていたことになってしまう。

清武や冨安などもそうだが、たとえプレーの質が素晴らしいと言えど、そもそも試合に出場することができないのであれば選手としての価値は落ちてしまう。もちろん怪我が多い理由がセレッソ側にある可能性も否めないが、平野自身キャリアの中でフル稼働したシーズンは2021年のみ。また公式サイトのインタビューでは岩尾憲のすごさの一つとして「ケガをしない」とも語っており、おそらく本人も怪我しがちな点を気にしてはいるのだと勝手に思っている。

10月に左膝外側半月板損傷の手術を行なったため、おそらく来季のキャンプには少なくともフルで参加することはできないだろうし、移籍することもないだろう。ピッチ外でもいいキャラをしているので、来季もともに闘える(であろう)ことは非常に嬉しい。新監督を迎えるにあたって大きなアドバンテージを背負うことにはなると思うが、なんとかスタメン争いに割って入って欲しい。

世界で最も潔い退場劇


#5 喜田 陽

30節神戸戦にて怪我から復帰、それ以降は主力としてスタメンを張り続けた。特に柏戦と大阪ダービーは出色の出来。やっぱり彼は大阪ダービーに強い。

調子のいい時の喜田は、パスを受けてからすぐに散らすのではなく、相手に向かってキャリーを挟むことによって相手に影響を与え、次の味方に時間と空間が与えられるようなプレーを心掛けることができる。また長短問わずパスの質も高く、出足もいいのでこぼれ球も回収できるし、前向きにアタックできるのなら大抵デュエルも勝ってくれる。こうした時の喜田陽は間違いなく代表クラスの能力を持っていると思う。

ただ彼の大きな弱点が、大きすぎるムラっけ。あまりにもいい時と悪い時のパフォーマンスの差が大きい。周りを見えていないシーンが唐突に増え、イージーなパスミスも散見されるようになる。相手に向かって運べていたはずのキャリーもスペースに逃げる形になり、相手の矢印を折ることなく次の味方に負担を押し付けるようなパスも増える。まるで別人のようにパフォーマンスが落ちるのは本人に原因にあるのか周囲に原因があるのかはわからないが、ここまでムラがあるとシーズン通してメインの主力に据えるのが難しくなってしまうので、ここは早急に直して欲しい。

こうした評価点で何かがわかるわけでもないが、それにしても良い時と悪い時の差が激しい


またこれはチームとしてのやり方や小菊監督の考え方に起因しているとは思うが、被カウンター時に無抵抗すぎるのは気になっているところ。それがチームの方針なのはわかるが、もうちょっとダーティになってもいいと思うし、田中駿汰とかは結構そこの線引きはできているのかなと感じている。

ムラの大きさや怪我の影響もあってシーズンフル稼働したことは一度もないが、それさえなければチームの要としてやっていける選手。元々アカデミーの頃は瀬古歩夢と共に大きな期待を寄せられていた逸材であり、準主力に落ち着く器ではないはずだ。


#7 上門 知樹

キャンプにアンカー起用されたことに始まり、シーズン通して基本的にボランチでプレーすることに。親友の海外移籍も相まって、セレッソ加入後最も苦しいシーズンになったのではないかと思う。

大衆的に彼の武器として知られているのはあの急激に落ちるドライブシュート。日本国内で他にあの蹴り方ができる選手は橘田健人くらいしか思いつかないし、間違いなく上門のアイデンティティではある。しかし彼はそれ一本でやってきた選手ではなく、むしろプレッシング性能や裏抜け、バランス感覚などのボールプレー以外の性能の高さを武器としてきた選手。小菊さんもその部分を高く評価しており、加藤陸次樹とのツートップは総合力で見ると国内屈指のコンビであったと自分は今も思っている。

移籍初年度から万能な彼をIH気味に使うやり方は見せていた中で、昨シーズン終盤に完全にIHとしても計算されるように。そして迎えた今シーズンは平野と喜田の怪我の影響を受けてアンカー位置でもプレー。小菊さんは彼のボランチに関して「ミドルがある」的なことを言っていたが、それにしては彼にミドルを打たせる設計もないし、ただ人数が足りないので器用な上門を起用していただけだろう。そして特にボランチとして必要な個人戦術が教え込まれたわけでもないので、ただキックがうまいだけの低身長ボランチが誕生してしまうこととなった。

まさかこの並びをツーボランチで見ることになるとは思わなんだ



一応山﨑加入前にはツートップとして起用されていた時期もあり、オフザボールに関してはチームに貢献する素晴らしいプレーをしていた。しかし、ボールプレーにおいてそこまでできることが多くないことや結果を残せなかったことが響いてしまい、柴山やブエノに出番を譲る形となってしまった。

なのでCFで出るチャンスがなかったわけではないのだが、個人的には彼はボランチで使ってくるようなクラブには残るべきではないと思ってしまう。先述の武器に加えて逆足のキックや繊細なトラップ、何気にうまいポストプレーなど、1.5列目としての高い適正を持つ彼ならば、もっと輝けるチームがあるはず。もちろん小菊さんが去る来季は1から競争という可能性もあるが、湘南や岡山あたりに移籍する可能性は大いにあるのではないかと勝手に思っている。


#8 香川 真司

昨シーズンのフル稼働が明らかに異常だったということで、今シーズンは開幕4節と9節〜13節以外はほとんど怪我で離脱することに。秋以降は練習試合などには出場していたのに公式戦ではベンチ外が続いたので、想像以上にコンディションが上がりきらなかったんじゃないかなと。

昨シーズンはボランチだったりアンカーだったりの低めの位置が初期位置で、正確無比なロングボールなどを通じてチームを支えたが、今季はIHがメイン。間受けやサイドフローで325の前後を繋ぐ役割を担っていた。適切なタイミングでサイドフローができる選手がなかなかいないので、香川が高いコンディションをキープし切れず、最終的に長期離脱してしまったことも325が機能不全となった理由の一つであると思う。

清武が期限付きとはいえチームを去り、山下も引退。チームの顔となるスーパースターも香川のみとなり、古くからセレッソを知るベテラン選手もジンヒョンとの2人だけとなった。小菊さんの退任により去就を心配する声も聞こえるが、唯一のセレッソ所属のヤンマーアンバサダーとなった香川のことは親会社様が意地でも手放さないだろう。個人的にはその部分は心配していない。

清武の名前も既に消えてしまった。元レディースの2人に全て背負わせるとは思えないが


むしろ気になっているのは香川の引退後。周囲の動向や今季怪我が続いたことを含め、そろそろ引退の選択肢がよぎる年齢にはなってきたが、彼の引退後にヤンマーがどう動くのか。南野拓実は未だに欧州でバリバリやっており、まだ数年は帰ってこないだろう。また新たな「ワクワク」の刺客を呼んでくるのか、それともその路線は諦めるのか。このクラブが今後どういった道を歩んでいくのかは、そのタイミングで決まるんじゃないかなと思っている。


#10 田中 駿汰

他クラブとの争奪戦を制して獲得し、背番号も新たに10番を背負うなど、大きな期待を集めて挑んだシーズン。リーグ戦は出場停止の鹿島戦以外の全試合にスタメン出場し、チーム内日本人最多得点を記録するなど、残した結果としては充分すぎる1年であったと思う。

本人がボランチを希望、またセレッソ側もボランチとして評価していたということで、アクシデントでCB起用となった大阪ダービーまではボランチ位置で固定。長所はなんといっても守備範囲の広さであり、シーズン序盤の4141プレスを1人で繋ぎ止めていたのは圧巻だった。守備性能で言うなら国内トップクラスであると断言してもいいだろう。

出場時間の差異はあるとしても、いかに田中が広大なエリアをカバーし続けたかがわかる


一方で、各方面でも指摘されていたように保持時に関しては大きな課題が残った。昨年までは最後尾orサイドラインにいることが多かったため、視野360°全てを把握する必要はない上に、前を向く行程を挟む必要もなかった。しかしボランチをやるにおいては適切なポジショニングを取りながら360°の視野を確保する必要があり、尚且つ前を向くべきシーンでは前を向く必要がある。しかし、残念ながら現状はこうした個人戦術を身につけることができていない。シーズン初頭は登里が適切なサポートにより角度を作ってくれていたことにより隠せていたこの問題が、登里の離脱によりさらに顕著に。ツーボランチに変更以降も、適切なポジションを取ったり、味方に時間と空間を与えたり云々が苦手な点は変わらず、ピボーテとしてはあまりにも未熟すぎた。

しかし大阪ダービーで3バックの中央で出場すると圧巻のプレーを披露。以降はCBとボランチの両方でプレーすることになったが、結局現状の彼の最適正はCBであるということを再確認するシーズンとなってしまった。

練習試合では4バックのCBでもプレー。奥田の動きに合わせてミシャ式HVの振る舞いを加えたり、列上げでサポートに入ったり(ナチョが得意なやつ)など、かなりポジションチェンジしていたのが印象的だった。特に列上げからレイオフを受ける動きに関してはタイミングがよければ無条件で前を向けるので、彼の弱点を一つ消せるプレーになるのかもしれない。

個人的な意見としては、彼が納得いくのであればもうこのままCBとしてやっていった方がいいと思っている。個人戦術が改善されるならボランチでもスーパーな選手になれるかもしれないが、ポステコ一派には個人戦術を仕込める能力はない。というか仕込む気がない。パパスも同様なのだとしたら、おそらくそうした指導が入ることはないだろう。現状ポステコ式235ビルドアップのアンカーでプレーする技量はないし、逆にCBならハイラインによる広大なスペースをカバーする役割にも適任。ボランチ希望の本人には申し訳ないのだけど、どうかCBでお願いします。


#11 ジョルディ クルークス

ルーカスの加入と外国籍選手枠の都合により、ルーカスorカピシャーバにアクシデントがあった試合以外はほとんどベンチ外となることに。ルヴァン杯では町田相手にゴラッソを決めたりもあったが序列を覆すことはできず、7/16にジュビロ磐田への完全移籍が発表された。

おそらくセレサポでクルークスのことが嫌いな人はいないだろう。それほどに、人間のできた素晴らしい選手だった。出場した試合では素晴らしいプレーを見せているのにも関わらず、無条件でベンチ外になってしまう状況。それも、外国籍助っ人としての立場の選手がである。間違いなく不満や憤りはあったはずだが、それでも日々のトレーニングに全力で励んでいたその姿はまさしくプロフェッショナルの鑑であった。

プレー面としては、やはりあの左足のキック無しには語れない。試合で実際に決まったのはルヴァン町田戦と昨年の浦和戦のみであるが、シュート練習などで見るあの球筋は見ていて爽快なものだった。また懐が深いのと踏ん張りが効くのでなんとか背負ってくれるシーンも昨シーズンは特徴的だった。クルークスのケツのデカさと鼻の高さはJリーグでもトップだと思う。

守備性能の高さも魅力の一つで、守備組織に穴を開けないポジショニングが本当にお手本だった。ここはさすが欧州育ち、日本でも長谷部監督の指導を受けているだけあるなと。逆サイドの為田とカピシャーバが結構釣り出されるので、クルークスの簡単に釣り出されないポジショニングは目立った。

逆に弱点としては、対面を打開できるドリブラーではなかったこと、左足を振り切るまでの時間が長い分相手にブロックされることが多かったことだろうか。特に前者はルーカスに取って代わられた最大の要因なのではないかと思う。後者に関してはチームとしてボールの運び方などを仕込めれていれば問題外にすることもできるのだが、それができる監督ではないし、それができたら上門のミドルももっと輝いていた。

ホーム磐田戦でヨドコウ凱旋となった時には、前半終了後にゴール裏に挨拶していたのが印象的だった。後半も普通に出場していたのに、あのタイミングで挨拶してくれたのには何か意味があったのだろうか。そしてやっぱりあの場所でジョルディのことを見ると、昨季の神戸戦の試合後を思い出してしまう。本当に最高の選手だった。



#13 清武 弘嗣

7/7日にサガン鳥栖へのレンタル移籍が発表。来季は大分に完全移籍ということで、約10年に渡るセレッソ大阪での物語は今シーズンにて幕を閉じることとなった。

数々の選手が清武の存在を理由にこのクラブを選んでくれたり、迷えるクラブの中でも先陣を切ってチームを引っ張ってくれたりと、このクラブの顔であり、手放してはいけない選手であったのは間違いない。一方で、近年の境遇を考えると致し方ない別れであるのもまた事実だった。

2023年と2024年前半のリーグ戦総プレータイムは125分。ピッチ外での影響も大きいとはいえ、シーズン通してほとんど居ない上に国内最高レベルの年俸の選手を雇い続けれるかというと、やはり厳しいものがある。

また、稼働している時期と怪我している時期のタイミングも悪かった。小菊政権恒例のリビルドが頻繁に行われる中、2022の怪我復帰以降はハイインテンシティのサッカーに馴染めず、香川真司復帰により保持志向となった2023と登里加入の2024序盤は怪我で出れず、ようやく出れるコンディションになった時には再びインテンシティ勝負のチームになってしまっていた。また、鳥栖移籍後も保持志向の川井健太監督がすぐに解任。鳥栖移籍後含め直近2年間で清武が出場したリーグ戦の成績は18試合1勝4分13敗で、チームのやり方も調子も常に噛み合わなかった。

その間、清武は終始ビハインド時に点を奪うべく必殺スルーパスを繰り出す要員として投入されていた。本人もその役割に対して苦難しているとインタビューでも述べていたが、元々清武弘嗣はロティーナ期のようなスローテンポのフットボールに馴染んでいた選手。クルピ期中盤に落ちてレシーブする癖ができてしまったとはいえ、基本的にはポジショニングからプレー選択、ボールを持った際の振る舞いなど、どこを取っても欧州のサッカー観に属する選手であり、本来はオープンな展開に導くパスを連発する選手ではない。彼が苦難し、序列が落ちるのも当然であった。

ルヴァン町田戦2nd legでのコメント


また、守備がどうこうはお門違いな指摘である。元セレッソでいうと柿谷曜一朗や乾貴士もそうだが、彼らはむしろ国内ではトップクラスに守備に精通している選手たちであり、強度ばかりを求めるその風潮が誤っている。彼らが真に守備のできない選手ならば、清武や柿谷が左SHのポジションを務めていたロティーナセレッソがリーグ最少失点を飾れたわけがない。

ということで、結局清武に関しては「怪我がなければ」というところに回帰してしまう。長めのプレータイムを確保することさえできれば、ゲームのテンポを適切に調整しながらチャンスを作っていくタイプの選手として生き残っていけただろう。

クラブのレジェンドとこうしてあっけない別れとなってしまったのは心苦しいが、そろそろ彼にも自分のやりたいように選択させてやるべきだと思う。帰ってきてからのタイトル獲得、ロティーナ期の貢献、クルピ就任時の3年契約、キャプテンとしての奮闘。本当に感謝してもしきれない。残りのサッカー人生はもう長くはないかもしれないが、最後まで清武弘嗣のプレーで見る人を魅了し続けて欲しい。


#17 阪田 澪哉

スカッドの編成ミスの影響でほぼ通年SBとして練習でもプレーすることになったが、シーズン終盤にWBとしてブレイク。札幌戦に怪我をして以降は出場無しとなったが、充分飛躍のシーズンになったと思う。

元々は右利きの右WGとして打開力と得点能力を武器に高校サッカーを席巻した選手だが、何よりいいなと思うのはボールの持ち方。右利きにも関わらず、懐にボールを置いて正対してから左足で持ち込むことができる。正対を挟んでいるため相手を止めることができているので、持ち前のスピードで対面を振り切れる。

これができる順足WGは国内ではそこまで多くなく、加えてドルトムント戦やジェイリース戦ような切り込んで左足シュートも素晴らしいものを持っている。今季J1でのシュート7本中4本は左足でのシュートであり、逆足でもしっかり振り抜けるのは魅力的なポイントである。

阪田がブレイクしたのちに絶対擦られ続けるであろうゴラッソ


そして上記のようなドリブルができるということはすなわち相手を見てプレー選択を選べる選手ということで、SBに転向してからはその長所をプレス回避にうまく活かしている印象。プレッシングに対して正対を挟みながら内側に運び込むことで相手のプレス設計を狂わす場面はいくつか見られた。ここら辺は毎熊の影響も多分に受けていそうだ。非保持に関しても対人守備の部分はかなり良くなっていて、柏戦でサヴィオを抑えたのは素直に驚いた。

ただし、個人的には阪田にはWGとして世界に羽ばたいて欲しい。ドリブル面はもちろんのこと、クロスにワンタッチで合わせにくる能力が高いのはやはり見逃せない。高体連育ちということもあってヘディングもうまく、叩きつけることを意識している様子は練習からも伺える。そして何より右利きながら正対を挟んで相手を押し込むことができる右WGは先述のようにそこまで多くない。そもそも、日本国内にまともな右WGがほとんどいない。せっかく純正のWGを保持しているのに、それをWGで使わない理由はないではないか。

今季はトレーニングマッチでもWGで出たシーンを自分は見ていない。左利きの木實をわざわざ右SBに置いたのにWGではなくCFでプレーしていた時にはさすがに嘆いた。パパス監督はポステコ一派の監督ということもあり、WGとしての能力が高い阪田はおそらくWGとして起用してもらえると思う。来季ルーカスが左右どちらで起用されるかはわからないが、ルーカス相手でも充分WGとして勝負できる選手だと思うので、来季こそ本格ブレイクを目指して欲しい。


#19 為田 大貴

カピシャーバがシーズン中盤に怪我で離脱したこともあり、ホーム町田戦以降の全試合にスタメン出場。移籍後最多のプレータイムを記録することとなった。

元々は「走らない」「責任感がない」「ノリでプレーする」の三拍子揃った選手だったが、今ではすっかり献身性が売りの選手に。どんどんポジションは後ろに下がっていき、最終的に左SBとしてプレーするようになった。

褒められることが多いのはプレッシング時のところ。正直プレス自体はそこまでうまくないし、移籍してきた当初わけのわからん単騎プレスで失点を招いていた頃から本質的には変わっていないのだが、ちゃんと猛ダッシュで戻るしサボらないので、穴は空けることはない。あとは比較対象がカピシャーバなので、その分良く見える側面もあるだろう。

保持時においては、昨シーズンまで彼に求められていたのは大きく二つ。一つ目がハーフレーンでジンヒョンやディフェンスラインから縦パスを受けること、二つ目が外→内のダイアゴナルランで左SB山中亮輔の滑走路を作ること。だが、昨シーズン終盤と今シーズンはSBの2-6移動を採用しだしたことによりWGは大外のプレーを求められるように。必然的にカピシャーバが出番を得ることとなった。

しかし、ここでも成長が見られたのが意識変革版為田大貴。柴山のようにぐんぐん内側に入ってくることはなく、しっかりと大外に張り続けていたことが好印象だった。突破できるシーンこそほぼないものの、カウンター時に突っ込んでいったりせずに時間を作れるのも評価できるところ。

ということで大外でも計算できるようになり、尚且つ非保持の面でも評価されていたので、大阪ダービー以降は江尻ジェフ時代以来の左WBへ。元々左足でクロスを上げきることはでき、今季のスカッドの左SBよりも走力で勝る分、この起用はかなりハマっていた。もちろんクロス対応や対人守備は水準には達していないが、即興にしては充分やってくれたと思う。

あと個人的に意外だなと思ったのは、ここ2年はG>xGをキープしていること。めちゃくちゃ外しまくってる印象が強かったので、案外ちゃんと決めてるんだなという感じ。ちなみにセレッソでの公式戦で決めた計9ゴールのうち5ゴールがヘディングでのゴール。今季プレシーズンのパトゥム戦のゴールもヘディングだったので、足じゃなくて頭で打たせた方が点決めるかもしれない。

何気に空中戦性能に定評のある為田。昨年まではロングボールのターゲットにしている時期もあった


おそらく彼が変わるきっかけになったであろう清武と小菊さんはクラブを去ったので、彼が来季このクラブに残るかは正直わからない。もう31歳ということで、クラブ的にも若返りしていきたいところでもあるだろう。見ていて飽きないプレイヤーなので残ってくれると嬉しいのだが、どうなるか。


#25 奥埜 博亮

今季で35歳になったにも関わらず未だにフル稼働を続ける唯一神。さすがに人に戻ってしまうシーンも増えたが、依然として替えの利かない絶対的な選手だった。

オシム語録のひとつである「水を運ぶ人」の代表格であり、誇張抜きで奥埜がいるいないではチームの機能美は大きく左右される。味方のポジショニングにより配置が歪になったのならば誰かがいるべきスペースを即座に埋め、ラインブレイクが足りないのであれば2列目からの飛び出しで相手のディフェンスラインを押し下げ、非保持でもロティーナ期を知るほぼ唯一のフィールドプレイヤーとしてゾーナルディフェンスもどきの穴も埋め続ける。空間認知がずば抜けているので、空中戦も競り勝てる。

あれだけの仕事量をこなしているボランチの選手がラインブレイクラン数チーム2位。ピッチに2人以上いるとしか考えられないし、チームとしておかしい


ボールを持てばプレーテンポを落とせるし、プレスを受けてもカラコーレスで回避できるし、ファールを受けてチーム全体を押し上げることもできる。プレー全てに意味があり、上記全てを1人で淡々と遂行してしまうその姿はもはや「大局を司る神様」である。

2014年にJデビューして以降昨季までは毎シーズン複数得点を記録していたが、今季はキャリア初の無得点に。もちろん決定力の下振れもあったが、クロスに遅れて入ってくるというボランチ時の奥埜の得意な得点パターンを全くと言っていいほど作れなかったのがやはり大きかった。シュートのほとんどは相手を動かしきれていない局面でのシュートであり、さらにシュート24本の内利き足でのシュートは10本しかなかったのも下振れの要因の一つだろう。そもそもこれほどの貢献度を誇りながら得点源としても機能していたこと自体が異常なのだから、今季無得点なのはある種当然のことなのかもしれない。

これまでずっと出場した試合はほとんどフル出場だった奥埜だが、今季フル出場した回数は7回。もうなかなか90分はもたなくなってきた(あの仕事量なら当然のことであるが)。未だにJ1でも最高の選手であると思うが、それでもシーズンオフは仙台に帰ってしまわないか不安になってしまう。セレッソでの出場試合数はすでに仙台時代を超えており、セレッソのレジェンドであることは確かだが、それでも奥埜博亮はベガルタ仙台の象徴であると思うし、いつかは必ず仙台に戻るのだろう。

「大久保嘉人を無冠のまま引退させるわけにはいかない」とは小菊さんの言葉であるが、奥埜もそれに当てはまる偉大な存在。大久保とも小菊さんとも一緒にタイトルを獲得することはできなかったが、奥埜とはその栄冠を共にしたい。残された時間は長くはないだろうが、なんとしても奥埜と共にタイトルを。


#27 カピシャーバ

開幕戦でチームのシーズン初ゴールを記録。2度怪我で中期離脱があり、さらに3バックの採用によりシーズン中盤以降は途中出場がメインとなった。

ドリブルの形としてはほぼワンパターン。ボールを晒しながらボディフェイントを繰り返し、食い付いてきたところをアウトサイドで縦に割る。瞬間的なスピードとコンタクト時のフィジカルレベルが段違いなので、この形にさえ持っていければ強引に前に持ち出すことができる。特に昨シーズン後半はチームとしての前進方法が彼のドリブルに委ねられており、田中駿汰以外はほぼ全員1on1でぶっちぎっていたと思う。

今シーズン序盤は登里加入による325システムでビルドアップがある程度健常化しカピシャーバが独力で運ぶ必要がなくなったこと、立ち位置が過剰に高かったことによりあまりレシーブができなかったことにより、ドリブルの機会が減少。さらに相手も縦しかないことに対する対策を講じてきたため、ドリブルの成功率も下がることとなった。

やはり弱点として大きいのは、選択肢が縦突破一辺倒なこと。ホームページの利き足欄に両方と書いてあるのは一体なんだったのか、頑なに右足を使わず、いざシュートやクロスで右足を振るとボールは明後日の方向へ。さらに正対しながら懐にボールを置いてゆっくりと運ぶこともできないことも相まってカットインの選択肢が無く、縦に行かざるを得ない。選択肢が一つしかないのであれば、相手からすると対策は立てやすい。

それでも抜き切ってしまうあたりは流石なのだが、本来ならば身体的に無理のある抜き方をしてる分体勢が悪かったりスピードが早すぎたりするため、抜けたとしてもクロスがなかなか合わない。報道で退団の見込みと言われるのも、プレーの幅が効かない上最後の精度を保てないのであればWGとしては未熟、と言われれば納得できる(得点が少ない云々が理由ならば、そういうキャラではないだろうとは思うが)。

アシストのほとんどは余裕を持ってクロスを上げたシーン。無理やり打開した場面で得点に繋がったことはほとんどない


とはいえ、札幌戦以降で見せた内側での仕事は見事だった。昨シーズンと同様にボールを運べないチームの中での単騎前進をインサイドレーンでも見せるだけでなく、ポストプレーヤーとしても機能。カピシャーバはWBに置けと皆が言う中、シャドーでもなんとか仕事できるよ!と証明してみせたのは素晴らしいの一言だった。

ちなみに自分もカピシャーバを一度WBに置いてみて欲しかった派の1人。ただ理由は保持時ではなく、非保持の弱点を消せる可能性があると考えたからである。

守備が苦手、というにも色々種類はあるが、カピシャーバの場合は適切にSHとしての立ち位置を取れないこと。これにより相手に前進の機会を与えてしまうシーンは多々あった。ただ、逆に対人守備は結構得意。持ち前の身体能力を活かして普通にボールを奪い切れるので、しっかりステイするタイミングとCBとの関係性を教え込めればそこら辺のSBよりもちゃんと機能するんじゃないかなと個人的には思っていた。実際どうかは知らない。

まだ退団するかどうかは決まっていないし、ここから急に残留路線に切り替わる可能性だって充分にある。いいキャラしてる選手だし、唯一無二のものを持ってるのは間違いない。退団したとてカピシャーバ以上のWGを連れて来れるかもわからないし、来季も残ってくれれば嬉しいところ。神戸には行かないでね。


#48 柴山 昌也

今季のファイヤーフォーメーション点火役。シーズン通して基本はスーパーサブとしての出場だったが、ここまでサポーター間で酷評派と擁護派で二極化するのは珍しいなという感じだった。

酷評派の中でも声が大きかったのが、チャンスを全く決めれないというところ。柴山の決定率3.2%は今季Jリーグでシュート30本以上放った選手の中では11番目に低い数字。決定的なシーンで決めれない、左足でしか打たない(シュートの83%が左足でのシュート)ところなどが槍玉に挙げられることが多かった印象だ。

シュート練習を見てもらえればわかるかもしれないが、柴山自身はそこまでシュートが下手というわけではない。練習時によくやる短い振りからファーサイドに打つ形(久保建英が得意な蹴り方)は結構な決定率を誇っていると思う。なので、あとは如何に相手のプレッシャーに打ち勝てるか、そしてプレースピードを落としたり減速を挟んでから落ち着いてシュートを打てるかだと思う。

個人的には決めきれない問題はそこまで気にしていなくて、問題視してるのはポジショニングのところ。ファイヤー点火でカオスを創出するという意図で柴山をフリーマンとして投入してると思われるが、それにしても動きすぎ、ボールに近づきすぎである。リポジを怠らないのは確かに偉い。ただ、その過剰な移動によって味方のスペースと時間を消してしまっているのはいただけない。そして、内側でボールを受けても運んで相手に影響を与えれるシーンは少なく、配球がうまいわけでもない。インサイドキックでのキック力が不足しているので、そもそも中央での適正が低い。小菊さんは柴山(と上門)をボランチで起用しがちだったが、それが機能したことは最後まで一度もなかった。

今季の柴山のヒートマップ。相手の手前でしか受けれていないシーンがほとんどだということがわかる


キックモーションが久保建英に似てると上述したが、柴山と久保は他にもインサイドでのプレーぶりやドリブルの仕方、身体の動かし方などが酷似している。そしてそんな久保はラリーガではWGとして活躍しながらも、日本代表でシャドーやトップ下で起用された際になかなか満足のいくプレーができていないのは周知の事実。久保も柴山も、変に内側でプレーさせずに大外でプレーした方が輝ける選手なのである。

ただ、柴山はWGで起用されているにも関わらずどんどん内側に入ったり下がりすぎたりしてしまう。しかも奥田が内側に絞っているシーンでも関係なしに下がってくるので、大外レーンの選手がいなくなってしまう。見兼ねた奥埜や山﨑がサイドに流れて穴を埋めるシーンはよく見られた。アウェイ札幌戦やホーム福岡戦では大外でプレーしようという意思が垣間見えていたのだが、鹿島戦では元に戻ってしまっていたのが残念でならない。大宮時代はここまで露骨ではなかったと思うので、IHやボランチ起用が悪影響を及ぼしたのか、それとも監督からそういう指示を受けているのか。どっちにしても、勘弁して欲しいところだ。

個人戦術のところを修正できれば一気に化けるポテンシャルがある選手であると思うし、WGとしてブレイクする予感は定期的に示してくれた。右WGはルーカスや阪田も控える激戦区だが、IHに逃げることなく、切磋琢磨して頑張ってほしい。


#77 ルーカス フェルナンデス

今シーズンJ1アシスト王、ラストパス数、チャンスクリエイト数およびこぼれ球奪取数2位。移籍初年度ながら、文句なしでJ1ベストイレブン級のスタッツを残してみせた。


セレッソ大阪でアシストを10まで乗せたのは2017年の丸橋祐介以来。10アシストのうち7つはセットプレーでのアシストであり、浦和戦で決めた直接FKは2019年大分戦のソウザ以来。近年のセレッソのセットプレーキッカーの象徴である2人に肩を並べる選手がついに現れた。札幌時代はそこまでキックがうまい印象はなかったので、まさかここまでアシストを積み重ねるとは想像もしなかった。ごめんなさい、そしてありがとう。

個人的に札幌時代からすごいと思っていたのはやはりドリブル面。技術力がとんでもなく高く、どんな状況からでも対面を抜き去ってしまう。順足WGで逆足も使えないのはカピシャーバと同様なのだが、ルーカスの場合は正対して相手を止めてからのヌルヌルドリブルで内側に切り込んでいけるのも特徴。「動」だけでなく「静」の状態からでも勝負できるので、保持型のチームのWGとしては今のJリーグの中でもトップである。

3バック採用時には左シャドーとしてもプレー。来日以降ずっと大外でのプレーだったので内側の印象はなかったが、思いの外そつなくこなしていた。縦パスを受ける際にワンタッチで相手を剥がすシーンがよく見られ、まああれほどうまければ当然内側でもやれるよなとは。とはいえ大外の方がストロングを出しやすいのは確かなので、カピシャーバの時もそうなのだが、WBとシャドーの入れ替わり(Euroでのスイス代表みたいな感じ)を実装できればよかったなと個人的には思っている。

弱点としては、判断を間違えるのが多いこと。そこは一旦パウサを挟めれば...という状況や、ボールロストしたくない状況でも突破を図ろうとするシーンはよく見られる。ただ、それでも大抵は抜き切ってしまうからとんでもないし、本人も自分の技術には相当な自信があるのだろう。

あとチームとしてうまくいっていない時には結構露骨に苛立ちが見えるし、それに伴いルーカスのパフォーマンスの質も下がる。夏場のとことん勝てなかった時期は特に顕著で、さすがに交代した方がいいのではないか思った試合がいくつかあった。小菊さんがビハインド時にルーカスを交代させることはほぼないのだから心配しても意味ないのだけど。

報道によると来季も残留濃厚ということで、来日してから7年目を迎えることになる。これで、プロキャリアをJリーグで過ごした期間がブラジルでの期間を超えることとなった。これだけの結果を残した外国籍助っ人をプロテクトできたことは非常に大きい。守備でもミシャ式マンツーマンで鍛えられた走力で頑張ってくれるので、パパス政権になっても重宝されるだろう。複数シーズン連続で2桁アシストを記録すれば、中村憲剛以来の快挙。歴史に名を刻むべく、来季も頑張って欲しい。


FW

#9 レオ セアラ

今季21得点1アシスト。得点王も視野に入っていたが、元同僚のアンデルソン ロペスがシーズン終盤から得点を量産。最終的に追い抜かれてしまい、得点ランキング2位でシーズンを終えた。

6節から11節では黄善洪の記録を塗り替える6試合連続ゴールを記録し、22節時点で16ゴールと得点ランキングトップを快走。特に6節〜14節間のセレッソ大阪のスコアラーは全てレオセアラであり、チームにおける得点のリソースが全て1人に割かれていたという稀に見る異常事態が発生していた。

ゴール関与率51%はオルンガでも成せなかった驚愕の数字

ただ、個人の力に依存していた得点というのは長くは続かない。シーズン終盤からはさすがに無理が効かなくなり、あわやというシーンを決めきることができなくなった。最終節の監督コメントにて「決定力のところ、今、私たちが抱えている課題が出た」と語っていたが、むしろ今季どれだけレオセアラの決定力に助けられてきたか。本来ならシュートまで持っていけないであろうシーンを無理矢理決定機まで持って行って尚決め切るのを1年間続けろというのであれば、ハリーケインでも連れてこいという話である。

その上ポストプレーでもこれ以上ない貢献をしてくれた。完全に孤立している状況下でも鍛え抜かれた肉体で時間を創出し、チームの前進を繋ぎ止めていたことはもっと評価されるべきだと思う。そもそもチームの前進ルートが、詰まってからのロングボールのこぼれ球を奥埜が回収するくらいしかなかったのだから、今季のセレッソは得点も前進も全てレオセアラに委ねていたと言っても過言ではない。FCレオセアラと言われてもぐうの音も出ない。

セレッソ大阪の選手が20得点以上を記録するのは近年だと2013年の柿谷曜一朗や2017年の杉本健勇以来となるが、この2年と今季の大きな違いはチームとしての得点パターンの確立。2013年はクルピ時代らしい崩しに加えて柿谷の裏抜けが戦術的に組み込まれており、2017年は入念に仕込まれていたであろうセットプレーと両SBによるクロス爆撃という明確なパターンで得点を量産した。前者はチームとして53得点、後者に至っては65得点を決めており、シーズン通してどうやって点を取るのかが定まらなかった今季の43得点とはかけ離れている。そう考えると今季のレオセアラの21得点はあまりにも異常であり、間違いなく近年のセレッソ大阪最高のストライカーであると言えるだろう。

報道によると来季も残留が濃厚とのこと。愛想を尽かされても何も文句は言えない状況だっただけに、残ってくれるのだとしたら本当に感謝しかない。新監督パパスとはマリノス在籍年が被っていないとはいえ、ポステコ式を知る選手としても非常に大きな存在になるはず。来季こそは得点王を。


#29 山﨑 凌吾

レオセアラ以外の得点源が皆無ということを受けて、7/12日に完全移籍加入。以降は試合終盤のターゲッターとして磐田戦以外の全試合に途中出場した。少ない時間ながら得点も1ゴール決めるなど、充分な貢献をしてくれたと思う。

レオセアラも空中戦自体はそこまで強いわけではないので、電柱役としては間違いなくチームトップ。後方からのボールのため、どうしても空中戦はCBよりは不利になってしまうCFながら、空中戦勝率は56.4%を記録。今季空中戦40回以上勝利したCFの選手の中で、この数字を上回ったのはウェリントンとオセフンのみである。

ただ、山﨑の特徴は空中戦だけではない。むしろ元々は「裏に抜け出すプレーが多く、収めたり、ヘディングは得意ではなかった」(公式ホームページより)選手だった。今でも足技にはなかなかな自信を持っている様子で、結構な頻度でノールックのおしゃれフリックを披露している。そして失敗してカウンターを食らうまでが様式美である。

敵陣パス成功率が堂々のチーム最下位。
おしゃれフリックやめましょうよ


オフザボールに関しては非常に気の利く選手であり、これは徳島時代にリカルドロドリゲス監督の元でプレーした経験があるのも大きいのだろう。味方にスペースを与えるランニングをしたり、歪な配置をカバーすべくポジションを埋めたりなど、奥埜的な役割をこなすことができる。柴山が出張していった代わりに大外に張っていたシーンは何度か見た光景である。ここに関してはありがたさしかない一方で、なかなかゴール数は伸びない理由もこうしてバランサーに回っているから、という要素もあるのかなと思ったり。

ここは厳しい目で見るが、山﨑はそもそもストライカーとしての決定力やデスマルケがJ1レベルではない。札幌戦のゴールは個人的にとても山﨑らしいゴールだと思っていて、というのも山﨑のJ1でのゴールのほとんどはこぼれ球を詰めたごっつあんゴールなのである。こぼれ球に詰めれること自体はいいのだが、もう少し相手DFを剥がす動きを身につけないとゴール数は伸びないのかなと。そうした弱点に加えて、上記のバランサーとしての役割や献身的なプレッシングも並行して行なっているため、そもそもスコアリングのところに注力できない。J1でシーズン6点以上取ったことがないのも当然なのだと思う。

山﨑がブレイクしたのはリカルドロドリゲス監督の元でポジショナル&保持志向に取り組んでいた2017年。それ以降はほとんどが曹貴裁の元でのプレーであり、もしかしたら徳島でプレーを続けていたら彼のキャリアの天井はより高かったかもしれない。ただ、曹貴裁だったからこそ今の空中戦性能があるのも事実。たらればを言っても仕方ないので、今の山﨑の強みを来季もチームに還元して欲しい。さすがに半年で退団はないと思うので。


#34 山田 寛人

2度目の仙台からレンタルバックで帰ってきた今季はリーグ戦スタメンが2回のみ、プレータイムは279分と、プロ契約を果たした2018年以降で最も短い公式戦出場時間となってしまった。

名前を間違えられたり、スコアラー欄に+1名と記入されたりと色々不憫な男であるが、今季もその不憫さは健在だったなと。スタメンで迎えたアウェイ町田戦でゴールを決めるもオフサイドでノーゴール、久々の出場となった磐田戦で頑張って競り勝った流れで得たPKをレオセアラが外してしまうなど、少ない時間でも爪痕を残しかけていただけに、全く結果に繋がらなかったのは可哀想だった。

スタメンの2試合こそCFだったものの、今シーズンの主戦場は左WG。2021年の小菊体制での初出場も左WGであり、小菊さん的には山田はWGの選手としての側面も強いのかもしれない。

実際、山田はどこで使えば1番いいのかがわからない。ここまでずっと万能型ストライカーとして通ってきたが、むしろ山田が持っている能力の中で最も低いのがフィニッシュ能力なんじゃないかと思う。正直CFならフリーのシュート練習くらいはほぼ全て枠内に入れて欲しいのだが、これがなかなか枠に飛ばない。

シュートまでは全然いいのだ。デスマルケもボールの置き所も普通にうまい。ただ、シュートだけが絶望的に入らない。2022年にプチブレイクしかけた時にはリーグ戦とルヴァン合わせて3試合で4ゴール奪っており、何かきっかけを掴めれば爆発する可能性は秘めている。が、基本は決まらないのでどうしてもCFとしての評価は下がってしまう。

一方でフィニッシュ以外は非常に器用な選手なので、ポストプレーやドリブル、パスレシーブから裏抜けまで基本なんでもできるし、雑にWGにおいてもそこそこのプレーは見せてくれる。しかし突き抜けた能力があるわけでもないので、WGとしてポジション争いに勝てるわけでもない。

ということでCFとしてもWGとしてもいまいち中途半端であり、所謂器用貧乏な状態になってしまっているのが今の山田。山﨑に似てなくはないのだが、山﨑の場合は空中戦もあるし山田よりも気が利くので、山田の方がデスマルケやターンなどはうまいとはいえ、2人で天秤をかけると山﨑の方が優先されるだろうなというのが今シーズン中盤以降である。

クラブとしても長い間期待してきたアカデミー育ちであり、個人的にも何気に1番好きかもしれない選手なのだが、今オフは2022年に結んだ3年契約が切れるタイミング。ここまでの成績や年齢、古山の来季加入やレオセアラの残留濃厚などに加えて、ホーム最終節のコメントの内容を考えても、契約延長の可能性は低いんじゃないかと思う。もちろん残ってくれたら嬉しいのだけど、本人的にも他のクラブで出場機会を得た方が成長に繋がるだろう。自分としてはもうすでに別れの覚悟を決めている節があるが、いずれにしても頑張って欲しいところだ。

小菊セレッソの最大瞬間風速


#35 渡邉 りょう

天皇杯では2得点を奪うもリーグ戦にはほとんど関与できず、クルークスを追いかけるようにジュビロ磐田へレンタル移籍となった。

まともに試合に出てないのにここまで人気な選手も珍しいのではないかと思う。渡邉のチャントの時だけやけに声が大きくなる印象が強く(ゴール裏にいる人間なので、客観的に聞いたら違うかもしれないが)、ネット上でも何度か待望論を目にした。来季のレンタルバックを望んでいるサポーターも多いだろう。

ファンサービス精神が旺盛で、いつもインスタグラムのストーリーがとんでもない量になっているし、移籍コメントなどもとても丁寧。色々と似たようなステータスの藤本憲明もそうなのだが、こういう選手たちはなぜかCFの選手に多い気がする。


セレッソでなかなか試合に出れなかったのは、まずはシンプルにチャンスで決めきれなかったからかなと。出場した時には結構な頻度でチャンスを迎えていて、川崎戦のPK以外でも2点は決めれたはず。昨季のFC東京戦の裏抜けや鹿島戦のボレー、今季の磐田戦のヘッドなど、得点を取れる場所にいたことは素晴らしかっただけに惜しかった。

あとは個人的にセレッソ加入前から評価していた彼のストロングポイントの一つが、速攻時に中央で運ぶ味方に対して角度を作りながら裏抜けするデスマルケ。J3時代からこの動きはうまかった印象なのだが、セレッソでは中央のライン間で受けてから運んでスルーパスを出せる人がなかなかいなかった。よってこうした動きをあまり見せられなかったこと、そしてむしろ自分がストライカーワーク以外に回ることも多くなったことも彼がアピールしきれなかった理由の一つだと思う。

磐田に移籍後はシャドーでもプレー。2得点は共にクロスにワンタッチで合わせており、まさに渡邉が量産してきた得意の形だった。非保持でも磐田のCF陣の中では最も守備性能が高く、保持時もそこまで適正があるわけでもないシャドーで充分存在感を放っていたのではないか。

来季帰ってくるか帰ってこないかはまだわからないが、確実にジャーメイン良は引き抜かれるであろう磐田側はおそらく渡邉に完全移籍のオファーを出すと思う。セレッソ的にはシーズン中にレンタルに出した中堅以降の選手が帰ってきた試しはないので、あとは彼がどうしたいかになるのではないか。そもそも来季の契約が残っているのかもわからないけども。


#38 北野 颯太

昨シーズンに負った大怪我のリハビリから始まった今シーズンは7月にオランダ留学すると、8月はビハインド時の劇薬として存在感を発揮。9月以降はプロキャリアの中で初めてスタメンに定着することになった。

元々は天才肌のアタッカーとしてスピードとテクニックが評価されていた選手だが、現時点での強みはむしろボールプレー以外のところ。愚直に裏抜けを続けることで相手のディフェンスラインを押し下げ、適切なタイミングでの列落ちでビルドアップの出口に。落ちた後に柴山のように駐在するのではなく、しっかりと本来の持ち場に戻れるのも好印象だ。

そして非保持における守備性能の高さは上門がコンバートされた今、チーム内のCFで1番と言っても過言ではないだろう。カバーシャドウからプレスバック、アンカーの監視まで、ある程度の技術の伴ったプレスを自慢の快速で敢行できるのは大きな強みで、今季北野がスタメンだった試合は9試合5勝2分2敗というのはただの偶然ではないはず。結局小菊政権における生命線はアタッカーによるプレッシングだったのだから。

対して課題になっているのがオンザボール。天才的な技術を持っているのにも関わらず、スピードを上げすぎてしまうが故に、ドリブルで1人抜きかけても2人目に回収され相手ボールになってしまうシーンが多い。長距離を走り続けるのでフィニッシュの局面まで体力が持たず、シュートシーンでうまくミートできない。走力自体は北野の持ち味でもあるが、一方でプレーの精度を下げることにも繋がってしまっていた。

とはいえ、今季は少しずつ改善の傾向も。元々はスペースに突っ込んでいただけのシーンでも相手に向かってドリブルするシーンが増え、引き付けてからリリースする意識が高くなっているのも伺える。ある程度の余裕も出てきたのだろう。ユースの時には結構見られた超ロングシュートも湘南戦で放ったり、かつての天才OBたちを彷彿とさせるテクニックを披露することも増えた。

残された改善点はプレースピードや、ステイしてくる対面の相手にどう振る舞えるか。両者ともに懐でボールを持つことを意識するだけで変わるきっかけになるはずなので、ここの改善にも期待したい。

元々の長所、改善されたところ、現状の課題。今の北野颯太の全てが詰まった一連のプレーであるように思う


来季は頭から主力として計算されることになるだろうが、それならシーズン2得点というのは満足できない結果。もっと得点を重ねる必要があるし、このままなら夢の海外移籍も実現しないだろう。素晴らしい才能とポテンシャルを秘めているのは間違いないので、試合に出続けて本格ブレイクのきっかけを掴んで欲しい。ポステコ一派はオープン推奨なので、来季も先述の課題が改善される可能性は低いのだけど。


#47 古山 兼悟(特別指定選手)

昨シーズンに続いて登録こそされていたものの、今季もセレッソ大阪での公式戦の出場はなしに終わった。関西学生サッカーリーグでは今季11得点で得点ランキング3位。2度目の得点王獲得とはならなかったが、2年次から3年連続となる優秀選手賞を受賞するなど、関西圏大学No. 1ストライカーの肩書きに偽りはなかった。

とにかく得点を取ることに特化したCFで、相手DFの視界から消えるのが非常にうまい印象を個人的には持っている。クロスボールにファーサイドから入ってきてフリーで合わせるのは何度も見た形で、背丈はそこまで高くないもののヘディングでのゴールも多い。身体も強いので、先にポジションを確保できれば当たり負けすることもない。

味方がシュートモーションに入った際にはほぼ確実に相手GKに詰めに行くのも特徴で、こぼれ球を詰めることが多いのも偶然ではないなと。先述の得意パターンといい飛び道具を持った選手がいると活きる選手なので、ブエノや中島元彦らとは相性がいいかもしれない。

フィニッシュ局面以外のシーンではボールを受けに列落ちしたりサイドに流れたりというシーンはあまり見られず、基本的には中央で相手DFと駆け引きを続ける。これは下がって受けたとてあまりできることも少ないことにも起因しているのだろうけども、実際そうして駆け引きを続けることで相手のディフェンスラインを押し下げれるし、落ちすぎて味方のスペースを潰すこともないのでありがたいよりほかない。

ポストプレーでもめちゃくちゃ身体を使ってスペースを作ってくれるので、2列目の選手たちを活かすこともできるのではないか。もはやボール関係ないやんけ!というほどに相手とぶつかり合うのだが、プレーモデルが林大地だと聞いて納得。確かに似ているし、そういえば林大地は大体大のOBで、当時田中駿汰とチームメイトなのだった。

懸念材料としてはレオセアラとの兼ね合いのところだろうか。ポステコ式アタッキングフットボールでストライカータイプを2名同時起用しているイメージはあまり湧かないし、レオセアラの牙城を崩せない限りは出場機会は少なくなるだろう。大体大→セレッソということでどうしても澤上竜二が脳内にチラついてくるが、そうした悪いイメージを払拭する活躍を見せて欲しいところだ。



#55 ヴィトール ブエノ

2億円だか5億円だかと言われる高額な移籍金で加入した今季の目玉補強だったものの、シーズン通して公式戦985分の出場と、残念ながら移籍金に見合う活躍はできなかった。

唯一無二の才能があるのは間違いないと思う。今季決めた4ゴールはいずれもゴラッソであり、ブエノ以外ではゴールに繋げることはできなかっただろう。アシストも5回を記録しており、1000分以下の出場にも関わらず9ゴールに直接関与。90分平均得点関与数はチームトップの数字であった。

評判通りキックの質はとんでもないもので、左右の足問わず強烈で正確なシュートを放つことができる。広島戦のFKでロベカル風の蹴り方をして加藤陸次樹の足を粉砕していた記憶があるが、あれは痛そうだった。

ただ出れない理由も明確で、やはり非保持のところは足を引っ張った。立ち位置も悪ければカバーシャドウも苦手で、頑張ってプレスバックできるわけでもない。レオセアラも正直守備はうまくないので、442の前線がレオセアラとブエノになってしまうと相手に全く制限をかけられないという442で最もダメな現象が起こってしまう。不動のレオセアラと組むことができないのであれば当然出番は失われるわけで、今シーズンは如何に非保持を改善するかという課題に直面し続けた。

またこれは柴山も同様なのだが、ボールを受けに下がってきてしまうのも難しいところ。ライン間のレシーバーが不在になるとレオセアラが孤立してしまうので、レオセアラが頑張ってキープするしかなくなるし、裏抜けも担保できなくなる。

スルーパスは常に狙っているのだが、これもなかなか通らない。想像と異なるタイミングで出すことが多いので味方と合わなかったり、シンプルにパススピードが遅かったりで、スルーパスの成功率は27%に留まっていた。決定的なシーンには関与できるものの、それ以外の精度と非保持の収支が合わなかったことは小菊さんにとっても頭が痛かったのではないか。

非保持の課題を隠すべく、左WGで起用されることも練習試合ではあったが、やはり大外のプレイヤーではないなと。ドリブラーではないしゴールからも遠ざかってしまっているので、特に効果的なプレーができていたわけではなかった。サイドで使うならロティーナ期の清武のようなタスクが1番だろうが、その場合は現スカッドの左SBとの相性がすこぶる悪いのも問題になりそうだ。

来季はレオセアラとブエノが共に残留するという報道が出ている。このままトップ下もしくはIHでプレーするのであれば、またレオセアラとの噛み合わせの部分で苦しむことになるだろう。天才的なフィニッシュ性能やその他諸々の特徴を考えても、ブエノはCFとして最前線に固定させた方がいいのではないか。今季変えようにも変えれなかったレオセアラとはまた違うアクセントを加える対抗馬として最適だと個人的には思う。

11/22に、ヤンマーの公式サイトからブエノ夫妻の記事が投稿された。まだ読んだことのない人はぜひ読んでみてほしい。来季こそセレッソで活躍して欲しいと、きっとそう思えるはずだ。



ON LOAN

#23 大迫 塁(いわきFC)

4月と5月に左WBのスタメンの座を掴むも、夏場以降は行方不明に。序列だったのか怪我だったのかはわからないが、最終節にてようやくベンチ入り。30分の出場を得てシーズンを終えた。

セットプレーキッカーとしての序列がチーム内でキャプテンの山下優人に次ぐ2番目か、もしくは同率1番目くらいの地位を確立しており、直接FKでプロ初ゴールも記録。速いボールをピンポイントで届けることができ、流れの中でもそのキックの質を活かせていたと思う。

特徴的だったのはボールを持った時にとにかくクロスを上げようという素振りを見せていたこと。敵陣でパスを受ける時に相手の寄せが甘ければ必ず左足の前にコントロールし、アーリークロスを上げるか斜めの楔を入れるかを常に狙っていた。選手権でのイメージ的にキャリー能力もあるはずなので、キックをチラつかせながら縦に運んだり内側に切り込むシーンも見せれたら尚良しだったと思う。

非保持もポジショニングの部分は試合を重ねるたびに良くなっていた気がするし、ハイプレス時の出ていくタイミングやコースの切り方もうまかったと思う。対して対人守備はまだまだで、両足が揃ってしまうシーンや、味方がダブルチームを組みに来た場面でも縦を切れないシーンが見られたのは課題かなと。ここはまだSB/WBにコンバートしたばかりなので少しずつ仕込んでいきたい。

とはいえ本人はボランチを希望していたそうなので、今後も本格的にSBでやっていくかどうかはわからないところ。個人的にも今季唯一ボランチとして出場したらしいFC大阪戦を見れてなくて、ボランチとしてどこまで成長できているかを把握できていないので、一度はボランチとしてプレーしているところを見てみたい。

また、SBをやるにしても、今季はWBだったのでまた話は変わってくると思う。いわきは316 or 325ビルドアップにかなりこだわっていたので、大迫が低い位置取りで配球に回ることはほぼなかった。また内側に絞るシーンも少なかったので、SB位置での配球やプレス回避、絞るべきタイミングなどの指導も受けたいところだ(一度だけIHに対してレイオフを受けて綺麗に前進したシーンがあった。そういう場面で大抵前に急いでしまうのは課題だが、こういった前進は再現性を持てるようにして欲しい)。

視野とキックレンジの広さや豊富な運動量、スピードなど、SBとしてもボランチとしてもスターを目指せるポテンシャルを持っている選手。相方の福田師王も頑張っているようなので、ともに切磋琢磨して頑張って欲しい。

神村時代は1試合で14キロ走っていたらしい。西村拓真かよ


#23 木下 慎之輔(ガイナーレ鳥取)

鳥取にレンタル移籍も、出場は14節と16節のラスト10分のみ。この2試合以外は全てベンチ外であり、プロ2年目で大きな挫折を味わうことになってしまった。

鳥取のCFは補強必須のポジションではなかったので、おそらく433の左WGを務める小澤秀充のバックアッパーとしての加入。出場した2試合もその小澤との交代で左WGの位置に入っていた。その後シーズン中盤からチームは3421を採用。このあたりからは一切の音沙汰無しだったので何もわからないのだが、多分練習では前線3枚のどこかでプレーしてたんだと思う。WBやってた可能性もないわけではないけど。

WGやってた頃の記事よると、守備面で背後を取られてしまうシーンが多いことが課題として指摘されていたとのこと。要するにカピシャーバみたいに相手の前進の起点にされていた感じなのだろう。カピシャーバや為田を見る限りセレッソではここを指導してくれることはないので、こうして非保持の指導をしてもらえているのは大きいことなのではないか。

そもそもユースのときから仕込んでおいてくれよ!という感じなのではあるのだが、風間革命に守備を求めても仕方がない。ブラジル留学したとしても、一か八かの守備が横行しプレスバックが皆無なブラジルリーグだと非保持の特訓にはならないのもネックかなと。北野颯太以降、ユースのアタッカーの選手の守備の質が下がっていっている気がするのは個人的には結構気掛かりなポイントの一つなのでなんとかして欲しいところだ。高卒プロを狙えるであろう素晴らしいポテンシャルを持った選手も何人かいるので、木下のように守備が足を引っ張る展開は避けたい。

とはいえ木下の場合は風間革命の恩恵を最も受けた選手。最大の特徴であるデスマルケがうまくなったのは風間式「外す・受ける」の指導を受けることができたのが非常に大きく、その質は高校年代の中では群を抜いていた。コケまくっている風間革命も悪いことばかりではなかったのかもしれない。

木下得意のデスマルケ

もちろんそれ以外の個人戦術が不足しているのは事実なので、そこら辺は試合に出続けて覚えていくしかないのかなと。天性のスピードと恵まれたフィジカル能力を持っていて、非常にポテンシャルが高い選手なのは間違いない。来季は再びJ3か、もしくはカテゴリーを落としてJFLにレンタルとなるだろうが、なんとか手応えを掴んできて欲しい。


#22 石渡 ネルソン(愛媛FC)

開幕戦でいきなりフル出場し勝利に貢献、その後はしばらく苦労したものの、夏以降からはコンスタントに出場機会を得ることができていた。ゴールやアシストも共に芸術的なものであり、非常に有意義なシーズンだったのではないかと思う。

秋田戦のみシーズン2試合ともスタメンだったあたり、主に起用の意図になっていたのは空中戦だと思われる。愛媛で主力を務めたのは谷本駿介と深澤佑太のセレッソアカデミー育ちのボランチコンビだったが、この2人は身長173センチと172センチ。ネルソンの185センチというのは大きなアドバンテージになっていたし、出場したほぼ全ての試合でミドルサードでの制空権確保に大きく役立っていた。

保持面では特に成長したなと思うのが持ち運び。元々ストライドの大きさを活かしたスペースへのドリブルは得意だったのが、ゆっくり正対を挟みながら前進させることもできるようにもなっていた。そしてその体格を活かしてキープすることで時間を作ることも可能。オフェンシブなボランチのみに集中させるべきだと思っていたが、今の成長具合ならアンカーとしての道も考えられるのではないだろうか。

ナチュラルに相手3人を無力化している

現時点での課題というか来年に向けての注文にはなるのだが、長い脚を活かしたキック力はもう少し売りにしていけるレベルに上げていきたいかなと個人的には思っている。ネルソンの脚の長さならきっと球足が伸びるフィードやシュートが蹴りやすいはずなので、なんとか挑戦してみて欲しい。

来季に向けての選択肢としては、安牌なのが愛媛へのレンタル継続。愛媛は谷本は確実に引き抜かれるだろうし、深澤もその可能性がある。計算できることがわかっているネルソンは愛媛側からしても残したいだろうし、本人にとってもより成長を見込めるのではないかなと思う。

次点でいわきFCへのレンタル。まだまだ身体の線は細いのでフィジカル強化&スプリントのコーチングを受けれるのは大きいはず。また、いわきはここ数年だけで宮本英治、山下優人、山口大輝、下田栄祐、柴田壮介ら優秀なボランチを数多く輩出している。特に下田と柴田はレンタルの選手だが、揃ってアンカーとしてのポジショニングを習得することができていた。ネルソンがアンカーワークをマスターすることができればそれは日本人待望の高身長アンカーの誕生を指すので、身体面とポジショニングの部分を仕込んでくれそうないわきはいいレンタル先になるのではないか。

他にもレノファ山口で志垣良監督の教えを受けに行くのもありだが、なんにせよレンタルバックの択はないだろう。高身長なところを買われて秋田にレンタルとかは絶対にダメなので、慎重にレンタル先は考えて欲しい。


#6 岡澤 昂星(FC琉球)

怪我でベンチ外となったリーグ戦1試合と契約上出れなかったルヴァンセレッソ戦以外の全試合に出場。シーズン通して総プレータイムは3200分超えと、レンタル選手ながら絶対的な主力としてフル稼働した。

U-23や去年のプレーでJ3では全然やれることはわかっていたので、今季の活躍は想定通りというか、これくらいはやってもらわないと困るくらいだったのかなと。ポジションとしてはツーボランチのみならず、3142のアンカーとIHでもプレー。チームとして中盤の構成や選手が最後まで定まりきらなかった中で、どの役割を与えられても仕事を全うしていた。

プレースタイルとしては典型的なボックストゥボックスで、ピッチのどこにも顔を出すのが特徴。ピボーテ役として中央で振る舞うだけでなくライン間のレシーバーからサイドフローまで色々な位置でボールを受けれるが、そのいずれでも余裕さえあればしっかりと前を向けるのが好印象で、前を向きさえすればドリブルやスルーパスで前進することができていた。

中心選手なのもあって結構味方から責任を押し付けるパスが来るのだが、それを見越して岡澤をプレッシングの取り所に設定しているチームも。身体を入れてキープするのもうまいので大抵なんとか繋げるのだが、ロストしてカウンターを受けるシーンもいくつか見られた。正直岡澤は悪くないのだが、他責せずに自分にベクトルを向けている様子が見られたのはシンプルにすごいなと思う。

セレッソユース産、キープ力高くなりがち

非保持でも獅子奮迅で、ベテランのテクニシャンも多い構成もあって強度が足りないチームの中でボールを狩っては回収しまくっていた。こぼれ球奪取数はリーグ8位、タックル数は10位の数字を記録。ある試合で試合終盤に相手がオフサイドにかかったシーンで1人だけ猛ダッシュで戻っていたシーンがあったのだが、レンタル選手が1番気持ちを見せていたのは嬉しい反面やるせなさも感じたり。

とはいえ、その守備自体はまだまだ改善が必要。ワンサイドカットができていないシーンやポジショニングがよくないシーンがいくつかあったので、ゾーナルディフェンスに対する理解度とかは上げていきたい。

もう今季限りでJ3は卒業、来季はJ2にレンタルが既定路線だと思うのだが、ボランチの補強の進捗次第ではレンタルバックもあり得るのかなと思っている。そうなると出場機会の面は厳しくなるかもしれないが、シミラープレイヤーとしてのお手本である奧埜とともにプレーできるのは大きいのではないか。レンタル継続なら志垣監督の山口かブライトン式に挑戦している愛媛あたりを希望します。


#7 西川 潤(いわきFC)

プロ5年目にして初めてカテゴリーを落とす決断を下した中で、38試合中31試合にスタメン出場。ゲームキャプテンも何度か務めるなど、主力としての地位を確立した。

複数の記事の内容を合わせて考えると、どうやら本人が自らいわきへのレンタルを希望した模様。怪我しがちだったことやフィジカルレベルの不足が気になっていたことが決め手になった様だった。そして実際に怪我することなくシーズンフル稼働、最高時速も上がったというのだから改めていわきのメソッドは素晴らしいなと改めて。おそらく今後もいわきが有望選手を獲得する流れは続くだろう。

今季のいわきは主に保持時3142 or 3421、非保持523の形を採用。西川は右IH/右シャドー。保持時左IHの山口大輝がピッチを縦横無尽に走り回ったり非保持にボランチ化する役割だったのに対し、西川はあまり列落ちするのではなくてライン間に留まるというタスクを与えられていた。

最も成長を感じられたのは五分五分のシーンで競り勝てるシーンが増えたところ。鳥栖時代から意識変革の様子は伺えたが、今季で踏ん張りの強さは増したのではないかと思う。他には元々特徴として持っていた長距離キャリーをより前面に押し出せるようにもなっていて、ここは体幹だけでなくスプリント能力が向上したことも大きいのだろう。スペースがあればぐんぐん運んでいくことができていた。

依然として課題になっているのは、アタッキングサードでの持ち味がスルーパスかミドルシュートくらいしかないこと。正対はできない上に敏捷性も不足しているので対面の相手を剥がすことができず、プレーの選択肢が狭い。西川がWGとして起用されないのはシンプルにドリブラーではないからである。抜ききらずにシュートを打てるなどの特徴があれば話は変わってくるのだけど。

ということでロティーナも小菊さんもCFで、そしていわきの田村監督もIHで起用していたわけだが、IHとしてやるには細かいポジショニングが未熟なのと、そこまで繊細なコントロールができるわけでもないのが厳しいところ。あまりボールには絡めず、試合から消えている時間が長くなってしまっていた印象だ。3ゴール2アシストというのは自他の決定力の下振れも結構あったとはいえ、そもそもチャンスに絡むシーンはもう少し増やしたかった。

来季は4季ぶりの復帰の可能性があるとのこと。セレッソは18番を空番にし続けているのを見ても相当な期待を西川に掛けていることが伝わってくる。まだまだ弱点は残っているし結果も残したとは言い難いシーズンだったが、戻すなら監督の変わる今季だという判断だろう。ポステコ流派ならおそらくトップ下 or IHで起用されると思うが、なんとか爪痕を残して欲しいところ。


#20 松本 凪生(モンテディオ山形)

ルヴァン、天皇杯はスタメンだったものの、リーグ戦はスタメン1試合、プレータイム179分のみ。直近3年間J2での存在感は年々増していた中で、ここにきて大きく苦しむシーズンとなってしまった。

これは報道が出た時点で思っていたことなのだが、正直今回は移籍先を間違えてしまった。今季山形でツーボランチとして絶対的な地位を築いたのが髙江麗央と小西雄大、ベンチ入りを争ったのが南秀仁。この3人は間違いなくJ2トップの選手たちであり、スタメンの2人に関してはJ1でも主力としてプレーできる選手たち。その全員が昨季以前から所属しており、4番手スタートなのはわかりきっていた。彼らと争うくらいなら、セレッソに残っていた方が出場機会を得れたんじゃないかと個人的には思っていたのだが、案の定松本は序列を覆せなかったし、セレッソは逆にボランチが枯渇した。

出た試合ではプレーも良くて、いいアピールができていたと思ったのだけど


気持ちはわからなくもない。甲府での2年間を得て間違いなくJ2屈指のボランチに成長したと思うし、山形でも出れるという自信はあったはず。山形側も藤田息吹の後釜として熱心に誘ってくれたのだろう(そもそも藤田が立場を危ぶまれた山形ボランチ陣、普通にやばすぎる)。この決断を頭ごなしに否定はしたくないので、せめてこのレンタルでなにかいい収穫や手応えを掴めれてればいいのだが。

特に小西と髙江のビルドアップ時のポジショニングや関係性はいい教材だったのではないかと思う。技術面やキックレンジの広さは引けを取らないと思うので、ポジショニングに意図を加えること、認知や判断の質、速さを上げれればより良くなるはず。

非保持に関しては、個人的に弱点だなと思っているのは1発でいきがちなこと。デュエルの強さは相当なので大抵奪い切って問題にはならないのだが、身体を倒しながら奪いにいく癖があるのと足が速くないので、抜かれた際に独走を許してしまう。あとコースの切り方がバグるシーンがあるのも修正したい。

今シーズンのレンタルはなぜか育成型ではなくなっていた。これが山形側の意向なのかセレッソ側の意向なのかはわからないが、少なくとも今回のレンタルは去年までとはまた違う意味が込められていたはずで、それに応えれたかというと少し厳しい。昨シーズンの活躍でもレンタルバックされなかったことも鑑みると、少なくとも今オフの帰還の可能性は限りなく低いだろうし(2022年舩木のパターンもありえるが、さすがに欲しがるチームはいくつかあるはず)、完全移籍の可能性もチラついてくる頃合いに入ってきている。セレッソで試合に出ているところを見たい選手なのだけれども、どうなるか。


#7 中島 元彦(ベガルタ仙台)

黄金を纏う杜の都の王。今季は自己ベストとなる13ゴールも決め、名実ともに問答無用でJ2最高の選手だったと思う。

中島が仙台に期限付き移籍したのは2022年の4/6から。小菊セレッソではボランチとして計算されており、仙台での初年度もボランチでの出場がほとんどだった。その後シャドーやCFでのプレー機会が増え、今シーズンから完全にCFに。3年間でアンカーより前のポジション全てでプレーしたが、その全てでJ2トップクラスのパフォーマンスを見せ続けた。

持っている全ての能力がJ2のレベルを超越しており、両足からとんでもない威力と精度のキックが飛んでくるし、狭いスペースも苦にしないし、1on1ならほぼ抜けるし、天才的なスルーパスも定期的に見せる。

ならテクニシャンなのか?と言われればそうではなく、むしろフィジカル能力が真骨頂だったりする。171センチなのになぜか空中戦も勝てるし、五分五分のボールは確実にマイボールにするし、囲まれても持ち前のテクニックも相まってゴリゴリに前進できる。そもそも身体付きがレオセアラのちょっと背が低くなった版だし、普段から筋トレ頑張ってるんだろうなと。さすがに以前まではここまでムチムチではなかった。

プレッシング時も適切なカバーシャドウとワンサイドカットが伴っており、保持時もライン間で受けたりサイドフローでボールを引き出したりなど、オフザボールも優秀。そして何よりもアツい漢であり、誰よりも闘志を燃やして闘い続けるのは最大の魅力。これがなければ仙台でここまで愛されることもなかっただろう。仙台が7番を託すというのはセレッソでいうと8番を継承することと同義。もしセレッソでレンタルの選手に8番渡しますなんてことになれば批判殺到だろうし、それだけ中島はベガルタ仙台というクラブにとって唯一無二の存在だったのだろう。

2022年に中島に与えられた背番号13は今季清武が背負い、清武の退団によりまた空番となっている。かつてこのクラブを代表する選手たちの出世番号となっているこの13を背負うのは中島元彦しかいない。巷では背番号8を、という声も聞こえるが、それはあくまで段階を踏んでから。

昨季に中原輝がヴェルディ移籍後に無双したように、J2では何をしてもトップクラスだった選手がJ1では飛び抜けたものを出せないという事例は多い。新潟からレンタルバックした際の中島元彦もそうだった。気負いすぎると空回りし、ベクトルが過剰に前向きになりすぎる悪癖は今も治っておらず、来季帰ってきたとて、本当に活躍できるかどうかはわからない。8番を託せるのは、あくまで中島がセレッソ大阪の象徴として、セレッソ大阪で活躍できることを証明できたタイミングである。

ここまで所属元に愛され、所属先に愛され続けた選手は他にいないと思う。結局は選手がサポーターに応援してもらうという構図は変わらないスポーツにおいて、これ以上の才能は存在しない。来季は桜を纏う元彦として、愛するクラブの歴史をつくろう。

藤尾の二の舞だけは許されない。クラブは中島元彦という1人の選手としっかり向き合うこと



引用サイト

transfermarkt(https://www.transfermarkt.jp/)

Football LAB(https://www.football-lab.jp/)

FotMob(https://www.fotmob.com/ja)

Sofascore(https://www.sofascore.com/)

Jリーグデータサイト(https://www.jleague.jp/stats/)


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