2024セレッソ大阪オフシーズン展望
各クラブが新監督就任を次々と発表する中で、依然として一切の動きを見せない我が軍。パパス監督との交渉が破談したのではないかと心配する声も少しずつ聞こえるようになってきたが、もし破談となれば大岩剛のときのように報道が出るはずなので、大岩剛に続いてまたも事態が急転している、とかではないと思う。これは個人的な推察に過ぎないが、おそらく就任時に同時に発表するヘッドコーチ待ちなんじゃないか。
来シーズンは例年よりも早めにキャンプも始まるということで、監督発表以降は一気に編成が進んでいくと考えられる。長く続いた小菊政権が終わり、選手の入れ替えも少なくないだろう。新監督を迎えるにあたって非常に大事になる今オフのこれからを展望していきたい。
コーチングスタッフについて
おそらく発表を先延ばしする要因となっているコーチングスタッフの編成。小菊さんに続いて高橋大輔コーチと才野倭コーチも退団が濃厚ということで、まずはパパス監督を支えるヘッドコーチやアシスタントコーチを揃える必要がある。
まず考えられるのはFCゴア時代と鹿児島ユナイテッド時代、ブリーラム時代にアシスタントコーチやコンディションコーチを務めていたスケンデロビッチ ハースウィン。3クラブで共に仕事をしていることを考えると、彼がアシスタントコーチとして付いてくるのはほぼ間違いないのではないかと思う。
ここまでわかりやすい経歴が他にあろうか
とはいえアシスタントコーチ1人だけというのは心許ない話。なのでおそらくあともう1人、ポステコグルーがマリノスに呼んできたオーストラリア人を連れてくるのではないか。
ショーン オントン
ロス アロイージ
グレゴリー ジョン キング
他にもいたら申し訳ないのだが、元マリノス関係者で現在監督を務めていないのはこの3人。ショーン オントンは現在フリーっぽく、後ろ2人は上海海港でケヴィン マスカット監督と共に仕事をしている模様。ロス アロイージ以外の2人は全員マリノス時代の同僚で、オントンに至ってはマリノス以前のデンポSC時代も被っている。またセレッソは今季も怪我人が続出したし、フィジカルコーチを変えるという意味でもグレッグ招聘の可能性はありそう。呼んでくるとしたらオントンかグレッグのどちらかだろうか。
パパス監督の志向するサッカーについて
パパス監督時代のニューカッスルジェッツの試合を見てみると、ポステコグルー流派らしい235ビルドアップに挑戦していたことがわかる。GKのビルドアップ参加やIHとSBとWGの入れ替わりを駆使し、相手を引き出してからスピードアップを図る手法はうまくいくシーンもあれば、引っかかってカウンターを受けるシーンも多く見られた。
すでにアーカイブは見れないので鹿児島ユナイテッド時代がどうなっていたかはわからないのだが、4231でボランチを務めた中原秀人と野嶽寛也のヒートマップを見た感じはおそらく前者がアンカー気味、後者がIHとしてSBと入れ替わりを行っていたのではないかなと推察できる。ジェッツ時代と大まかな構造に変わりはないだろう。
配置に大きな変化が見られたのがジェッツ時代終盤。それまでは両SBは2-6移動がメインだったのが、2-3と2-7移動による325でボールを持つように。それに伴いSBの人選も大きく変わり、今までCBで使われていた選手がSBで使われる機会が増えていた。
保持時の陣形こそ変化はしているものの、基本的に狙いとしては相手を引き出してから盤面をひっくり返して擬似カウンターを狙う形で変わりなかったはず。保持志向を謳ってはいるがトランディションが激しく、ボールが行ったり来たりするのはまさにポステコ時代のマリノス。押し込んだ際にはハーフレーンに誰かが走り込む姿もよく似ていた。本家との違いは、よりローミング味が強かったところだろうか。
しかし、ブリーラム時代からは少し毛色が変わっていた。左WGのRamil Sheydaevが明らかにリーグレベルを超越しており、そこまでボールを運んで勝負させることがビルドアップの目的。右SBは初期配置や2-3移動が多かった一方で、左SBは内側に入ったりハーフレーンを突っ走ったりして左WGをアイソレートさせる役割。右WGは185センチの本職CFを配置することでよりクロスからの脅威度を上げる選手起用になっていて、左WGの質的優位から逆算してチームビルドが行われていた印象。ビルドアップや崩しの設計自体はかなり拙かったけども。
非保持は全てのクラブで442。問題になりそうなのはこの部分で、本当に非保持が壊滅的。ライン間がスカスカでディフェンスラインの高さも変に高かったり低かったりし、WGの選手は戻ってこないので実質42で守っている。というか守れていない。プレス局面でも撤退の局面でもいつの間にか中央から選手がいなくなっているのだから逆にすごい。中央で受ける選手にCBが釣り出されてスペースを与えて失点まで行くシーンはジェッツ時代もブリーラム時代も頻発していた。
セレッソでも非保持442に変わりはないだろうし、稚拙な守備組織であることにも変わりはないだろう。選手たちには根性で頑張って欲しい。保持時に関してはポステコ式なのか、選手の特徴に合わせたやり方なのかが読みづらい。ここはシーズンが始まるまでは様子見かなと。保持志向とはいえトランディション多めなのは変わらないと思うので、ロティーナ時代のような静的なボール保持を期待してはいけない。
選手起用に関しては、ほとんどの選手が色々なポジションで試されていた印象。中盤の選手がSBやトップ下で起用されるのは日常茶飯で、SBの選手がCBやボランチやWGで起用されているのもよく見た形。鹿児島時代には左利きのボランチであった170センチの田辺圭佑をCBにコンバートしていた。ユーティリティ性の高い選手はコンバートされる機会も多くなりそう。
選手補強について
報道ではまだ中村拓海しか具体的な名前は出てきていないが、もう既に補強には動いているだろう。人件費は昨年よりも減る気はしているが、手抜き補強では降格も見えてくる危ないシーズン。監督選びが雑なのはもうわかりきっているので、冬の補強くらいは頑張ってほしい。
ということで、個人的に考える各ポシションごとにあり得そうな補強の候補について考えてみる。
GK
現有戦力はジンヒョン、ハンビン、清水、上林。ハンビンはオファーが来るなら移籍だろう。もし上林がスタメンを奪った時にはベンチになるべく日本人キーパーを置きたいので、清水が移籍するなら補強推奨。ビルドアップ関与が求められるので、味方に時間と空間をプレゼントできるGKが欲しい。
北村海チディ(藤枝)
相手のディフェンスラインの裏にボールを届けるロングフィードが非常にうまい。ポステコ式では一気にWGが裏に抜けれると強いので適任だと思う。低身長ながらポジショニングがうまくセービングも水準以上。
白坂楓馬(マリノス)
鹿児島時代にパパス監督のもとでプレー。ACLで空振りしていたイメージしかないのだけれど、ポステコ流派でプレーしてきた選手なのでバックアッパーとしての獲得はあり得るのでは。
丹野研太(栃木)
今年で38になったが、この2年間で大活躍。セレッソで引退して欲しい選手の1人なのだが、もし清水が移籍するならベテラン枠として帰ってきて欲しい。ベンチキーパーとしても素晴らしい選手であることはセレッソサポーターが一番よく知っているはず。
CB
現有戦力は進藤、西尾、鳥海、舩木。右CBは田中もCBとして計算できるので優先度は低くないとして、鳥海に移籍の可能性がある左CBの補強は必須。ブリーラム時代は右利き左CBで詰まるシーンも多かったので左利き且つ配給力を求めたく、さらにライン間で受ける相手を潰し切ることや裏抜けのカバーリングも求めたいので、屈強で快速でビルドアップもうまい即戦力の外国籍左利きCBが欲しい。そんなもん日本にくるわけがないのだけれども、それくらいしないと攻守に機能不全になる思う。そういう監督を連れてきたのは自分たちなのだから、責任を持って探してきて欲しい。あとシンプルに頭数が足りないので日本人のバックアッパーの確保もできれば。
森昂大(徳島)
今季のJ2で最もめぼしいCB。今季は3バック中央がメインだったが、4バックのCBの左右でプレー可能。徳島がすでに山田奈央を獲得しており、おそらく森は移籍するのでは。
久保庭良太(千葉)
足が速くてカバーリングに定評のある大卒1年目。お隣が左CBの佐々木翔悟に気を取られている内に鳥海とトレードしましょう。能力は普通に佐々木より高いと思う。
Tymur Stetskov(クリヴバス)
運びとロングフィード、スピードを搭載したウクライナ人左利きCB。25年夏に契約満了となるが、契約延長を拒否し、9月以降干されてる模様。左利き外国籍CBなんて高いに決まってるのだから、こういう選手は狙い目ではありそう。
右SB
現有戦力は奥田のみ。阪田はWGで計算したいので、奥田と争える即戦力は必須なのだが、SBの人選はなかなか難しいところ。パパス監督がSBをどのように配置するのかが現状わからないので、プレス回避が得意なSBか、2-6移動に長けたSBか、2-7移動に長けたSBか、はたまた CBと兼務できるSBのどれを獲得すればいいのかが微妙。できればさまざまなタスクをこなせるSBを獲得したい。
中村拓海(横浜FC)
日刊にて加入濃厚報道済み。プレス回避に優れたSBで、キックの蹴り分けがうまい。横浜FCではWBやHVでもプレーしていたため、万能性も評価されたか。
鈴木淳之介(湘南)
JSP所属。多分J1で最もコンドゥクシオンがうまい選手の1人で、元々ボランチなので2-6移動への順応も期待できそう。CBでやっていく非保持性能はないので、SBとしてやっていった方が天井も伸びる気がする。
原田亘(鳥栖)
JSP所属な上に近年繋がりの深い鳥栖所属で、HVとWBにも対応可能。リクルート条件には当てはまりそうだし何より降格するチームのJSP所属だしで狙ってそう。
左SB
現有戦力は登里、髙橋。登里はシーズンフル稼働で計算するのは難しく、髙橋はまだ戦力として数えるのは難しいか。為田が残ったとしてもSB起用はなかなか厳しいので、補強の優先度は高め。とはいえ左SBのスペシャリストを取ってしまうと髙橋の成長の阻害にも繋がってしまう可能性もあるので、他のポジションでもプレーできるユーティリティプレーヤーであればベスト。
野嶽寛也(鹿児島)
2021年のパパス政権下でボランチのスタメンを確保も、退任後に出場機会減。昨年からSBとして主力に躍り出た。2-6移動とサイドフローのタイミングが巧みで、ポステコ式にフィットしそう。
鈴木喜丈(岡山)
J1昇格の立役者の1人。左HVとしての性能が総合的に高く、非保持の強度も申し分ない。CBでも計算できそうだが、おそらくSBの方がやれる。ワンツーでスルスル抜けていくのも得意。
米田隼也(長崎)
サイドならなんでもござれ。2-7移動も得意だけど、2-8移動のスムーズさも見逃せない。WGと連携して崩しにも関われるのも特徴で、保持時における性能はかなり高い。もうすぐ30になるけど、今からでもネクスト毎熊を目指そう。
ボランチ
現有戦力は田中、奥埜、喜田、香川、平野。後ろ3人が怪我がちで、田中はCBとしても計算したいと考えると、優先度は高め。スカスカの守備を支えてもらわないといけないので、高い非保持性能を求めたい。それでいて保持時ではアンカー役としてもIH役としてもプレーできそうな選手を獲得できれば。奧埜が仙台に帰るという事態が発生するのであれば色々と話は変わってくるけども。
樋口雄太(鹿島)
鹿島移籍時にセレッソもオファー。右足のキックは日本一なのに左足のキックもスーパー。鳥栖育ちもあって守備範囲は広め。最適性はIHだが、アンカーにも適応可能。
山下優人(いわき)
アンカー、IHから左SBまでどこでもハイクオリティで、左足のキック精度が非常に高い。ずっとコンビを組んでいた宮本英治のように一気にブレイクできるはず。
山口蛍(神戸)
仲間になりたそうにこちらを見ている...のかは知らないが、帰ってくるとしたら今オフしかないだろう。非保持でのリクルート条件にも合致。神戸であと37試合出場すれば神戸での出場試合数がセレッソ時代を超えるらしい。
右WG
現有戦力はルーカス、柴山、阪田。始まってみないとわからないが、おそらく大外での役割を課されると思う。枚数も選手の能力も充分なので補強はいらないとは思うが、ルーカスが左、柴山がトップ下、阪田がSBという兼任ポジションで計算されるのなら可能性もなくはないか。
島村拓弥(柏)
よくここまで成り上がってきたと思う。林陵平が和製ベルナルドシウバと呼んで物議を醸していたが、それだけの存在感を放っていたということ。リカロド体制では重宝されそうな予感。
藤井智也(鹿島)
鹿島式4222では出る場所が無い。できることは少ないが大外に張り付かせておけば対面はぶち抜いてくれるので他クラブでは需要はあると思う。細かい足下の技術は皆無なので鬼木体制でも出場機会は少ないのでは。
近藤友喜(札幌)
多分個人残留すると思うが、ミシャ式を経験してしまったことがどう響くか。対面をぶち抜ける順足WGなので菅大輝より全然需要あると思う。これ以上札幌から抜いたらそろそろサポーターに殺されそうだけど。
左WG
現有戦力は為田とカピシャーバ。カピシャーバが清水移籍ということで補強必須。CBに外国籍選手が必須だと思っているので、外国籍WGを取るとしたら枠が圧迫される。日本人で主力として計算できるWGを獲得できればベストだろう。個人的には為田も退団し、外国籍WGと日本人WGの2人を獲得するのではないかと予想している。
松澤海斗(長崎)
もうそろそろバレてきているので早めの確保を。ずっとスーパーサブで使われているのは何らかの弱点を抱えているからかもしれないが、それでもあの打開力は魅力的。
小原基樹(広島)
3421では出る場所が無い。国内では珍しいちゃんとしたWGなので、出れるところに移籍しよう。広島への愛着もないと思うので、引き抜いたとしてシーズン途中に帰ることはないはず。
中島翔哉(浦和)
知ってます?中島翔哉ってミズノのブランドアンバサダーなんです。しかも強化部長の趣味とも被ってますよね。怖いので浦和さんは早めに契約更新しといてください。
トップ下
現有戦力はブエノ、北野、上門。レンタルバックの可能性がある中島と西川もこの位置での計算が濃厚で、上門に関しては移籍の可能性もありそう。ライン間で受けてスピードアップを図る、マリノス時代のマルコスジュニオール的な役割が求められるはずだが、現状最も適性の高いのは中島なのではないかと思う。それ以外の選手たちの弱点を鑑みて補強に動く可能性もなくはないのかなと。
長倉幹樹(新潟)
梶野お得意のボコボコにされた選手獲得を期待したい選手の1人。ライン間で受けて前を向くうまさは日本一で、前を向いてからのプレー選択も素晴らしい。セレッソで優勝して雪辱を晴らそう。
平戸太貴(京都)
暴れまくるエリアスの裏で暗躍した京都の軌道修正の立役者。福岡慎平とかもそうだけど、曹貴裁体制の中でなかなか評価されず苦しんでいた選手たちにはもっと報われて欲しい。平戸に祈る🙏
池田昌生(湘南)
少し毛色は異なるが、フリーランで味方にスペースと時間を与えるのに長けたセレッソアカデミー産。彼のスペースメイクから他の味方が引き取るような形を作れれば非常に有効だと思うし、田中聡の脇スカスカ問題をカバーシャドウの質でなんとかしてきた選手でもあるので。
CF
現有戦力はレオ、山﨑、古山、山田。山田は鳥栖移籍報道、渡邉もおそらく帰って来ないだろう。基本的にはサイドに流れず中央で構え、ペナルティエリアでグラウンダークロスを待つことになるが、レオはポステコ本家を履修済み。古山も適性が高そうなので、この2人でCFの枠は争うことになりそう。補強があるとすればレオが抜かれた場合か、スーパースターの獲得かのどちらかだろう。
石川大地(熊本)
みんなが小森飛絢に気を取られているうちに一本釣りを狙いたいジェネリック小森飛絢。デスマルケの達人で、シュート精度も高い。仙台戦のゴールは素晴らしかった。
矢村健(藤枝)
新潟所属のゴラッソメーカー。ゴラッソの幅も広いが、それでいてオフザボール全般も優秀。ただ難しいゴールを決めるだけのCFではないのは評価できるところ。新潟には帰らなさそう。
柿谷曜一朗(徳島)
多分割と真面目に仲間になりたそうにこちらを見ていると思う。サポーターも乗り気っぽいので、あとはフロントがGOサインを出すかどうかになるのでは。
最後に
正直、過去に率いたクラブでのピッチ内の現象もそこまでポジティブなものではないし、交渉に至るまでの流れなども考えても不安が募る人事なのは間違いない。まだ就任が発表されたわけではないが、それでも発表された暁にはもうその道を進んでいく他ない。
来季の開幕戦は大阪ダービーであることが既に発表済み。新監督を迎える初っ端がダービーというのは難しさもあるだろうが、相手からしてもこちらがどう出るかは読みづらいはず。シーズンは長いので開幕ダービーを意識しすぎることなく、まずは1年間を闘い抜くための準備を期待したい。