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経験した武道、武術について4

八極拳の自主トレ中止後、私はしばらく武道・武術と縁のない時間を過ごした。

新たな高校生活はそれまでの徒歩圏内の中学生活と比べると、自転車通学で行動範囲が広がり、新たな友人も増えたし、勉強することも増え、なかなか忙しかった。
ただ、じっくり武道武術のことを考えられずにいた。
別に武道・武術への興味が無くなった訳ではない。
何の武道・武術をするべきか悩んでいた。
当時はまだ強くなることを目標としており、練習したかったが、独学我流の限界を感じた後だけにお金もなく、近くに八極拳の道場もなく、どうしたら良いかが分からずにいた。

そんな時にまた新たな出会いが起こる。
人に運命というものがあるなら正にこの出会いも運命なのかもしれない。

ある日、自転車で学校から帰る途中、郊外型の大きな本屋に行った時のことだ。
普段関心のない小説のエリアに敢えて足を踏み入れたのだ。
単なる気の迷いだろう。
ブラブラ小説を手に取るでもなく、眺めて歩いていたら、目に付いた表紙があった。
別に好みの絵でもない。
タイトルが気になったのだ。
『孤拳伝』

明らかにカンフーぽい。
著者の今野敏先生のことも知らなかった。
今では警察小説の大家もこの頃はまだ武術などのアクション小説が多かった。
今野先生は空手家であり、技などの描写は実体験並びに非凡な文章表現によりワクワクさせるように読ませることが得意であったように思う。
武道・武術好きで今野先生ファンはかなり多いだろう。

さて、中を見るとカンフーを学んだ主人公の活躍の小説だが、ひかれたのはその武術である。
主人公朝丘剛の使う武術は形意拳である。
これは正直何も知らない人は、ピンと来ないだろう。
私が八極拳を知るきっかけとなった漫画『拳児』にはこの形意拳が出てくる。
この拳法は何人も世に達人を輩出した流派なのだが、正直地味である。
『拳児』では八極拳の方がメインで、描写も震脚あり、吹っ飛ばしたりと派手なため、形意拳は目立たない。
『拳児』で主人公の友達が習った武術以外は外伝に少し出てくるだけだ。

ところがこの 『孤拳伝』は形意拳がメインで、実に様々な格闘技、武術の使い手が登場し、形意拳と他の格闘技、武術が戦うという話だ。
(この時は4巻位まで出ていた。)
ちょうど世はK-1の人気が出て、海外の強豪選手が沢山来日し、主宰の正道会館等人気流派の台頭など、日本の格闘家と海外選手の比較などが盛り上がっていた。
私も興味ある話だけに、主人公が世界中の猛者と戦うという話に非常にワクワクしたものだ。

また形意拳は五行拳を基本とし、太極拳や八卦掌などの気功や柔らかさを大事とした内家拳の1つで、豪快な技もあるなかなか魅力ある武術であることを知り、すっかり今野先生作品の世界観と形意拳という武術に魅了されてしまった。

八極拳も興味あったが、技の見た目のシンプルさに、深い哲学など内包されている、いわゆる玄人向きな形意拳に強く魅力を感じてしまったのである。

しかし、形意拳も簡単に習えないし、どこで学べるかも分からず、新たな悩みが生まれた。

この悩みが解決するのはまだ先の話だが、とりあえず、この後思いがけずに打ち込めるものが新たに見つかることになる。

それについては次で述べることにする。

→5に続く。


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