自分自身を主人公にして作ったお話。
あの子はいつも静かで人を観察している感じがする。でも、たまに友達と楽しそうにお腹を抱えながら笑っている様子を見ることもある。
いつも不思議なオーラを纏っている。
私は大学三年生。もう入学してから三年が経つのか。
私はあまり人と関わることが好きではなく、基本的に一人で行動することが好きだ。よく学校で見る大人数でワイワイ楽しそうにしている人達を見ても羨ましいとも思わない。あんな大人数で関わるなんて面倒だとすら思ってしまうくらいだ。なら一人で静かに自分とは違う人達の人間観察をしたり、本を読んでいる方が全然いい。
いつものように学校で周りの人を静かに観察してた時だった。
私とどこか似ている物静かな女の子を見つけた。私は普段他人に興味を持つことは無いのに、なぜだかあの子には気持ちをそそられるものがあった。 この日は、伏し目がちに校内を歩っていて、すれ違う先生に会釈をしていたくらいで特に友達と関わる様子はなかった。
次の日。またあの女の子を見つけた。この日は二人の同級生とみられる友達と楽しそうに話していて、昨日の様子とは全く違った。別人のように。
私は、自分にどこか似ているあの女の子の観察に夢中になっていた。
数日女の子の姿を目にすることがなく、一週間が過ぎたころ授業中に教室から抜け出す姿を目撃した。どうしたのだろうか。
でも私はすぐに理由が分かった。あの呼吸が乱れて苦しそうな感じ、あと手がすごく震えていた。そして手にはペットボトルの水。おそらくパニック発作だろう。私は、今は落ち着いているが、数年前にパニック障害を発症した。だから、あの様子を見る感じパニック発作だろうとすぐに分かった。
私はこの時間授業が無かったから、女の子の傍へ行ってみた。
女の子は初対面の私に少し驚いていたけれど、大丈夫?と声をかけると何かを察してくれたように自分のことを話してくれた。
高校二年生の時にパニック発作を起こしてから、今でもたまに発作が起きること。
大学一年生の時に社交不安障害の中の視線恐怖症だと診断されたこと。
誰も見てないと分かっていても、視線を感じてしまい恐怖感に襲われること。
そして、とても繊細で感受性が高く相手の目を見ただけで気持ちが分かってしまうから、少ししんどい時があること。
私が症状に苦しめられていた時と全く同じことを伝えてくれて、やっぱり初めて見たときの自分と似ていると感じたのは外れてなかったのだ。
学校での長い授業、プレゼン、グループワークなど不安要素がたくさんある学校はとても心身が疲れるとも言っていた。
でも、アルバイトは大変なこともあるけれど温かい人たちに囲まれてすごく楽しく働けているという。
私はその話を聞いたとき確信した。
あの子は誰よりも優しくて、その分傷つきやすくて、本当は人と話すこと、笑うことが大好きなんだと。
パニック障害、視線恐怖症の症状がいつ起きるか分からない不安を抱えて過ごしているから一見物静かに見えるだけ。
私はそれから女の子と定期的に遊んだり、深く話し合うくらいまで仲良くなった。
私自身が女の子と似ている部分が無ければ、仲良くなることも女の子の姿が目に留まることはなかったはずだ。
この出会いは奇跡的だと思っている。
お互いに似ている部分があることを理解し合い、協力しながら学校生活を送れていることがすごく嬉しい。
私はこの女の子に出会って生活がパッと明るくなった。
女の子の日々の生活に私が彩りを与えられていたらいいな。
と、自分自身の経験を女の子に例えて作った短いお話。