金融庁の資産運用シミュレーションの大ウソ 積み立てNISAは大丈夫なのか!?
日経平均株価がバブル時の最高値を更新して2,3日後に昼の情報番組を見ていたら積み立てNISAの特集をしていました。
高名な経済評論家の方が積み立て投資の重要性を説いておられました。
ここまでは良かったのですが、番組で紹介された金融庁の資産運用シミュレーションを見て唖然としました。
noteを始めようと思ったきっかけは、実はこの資産運用シミュレーションです。
このHPに隠された大問題を解き明かす前に、まずドルコスト平均法について解説します。
ドルコスト平均法
今まで様々な投資手法が提案されてきましたが、最も有名な投資手法のひとつが、このドルコスト平均法です。
たとえば、日経平均に投資することを考えてみます。
投資家としては、できるだけ安く買いたいわけですが、日経平均株価は日々変動するので、どこが安値かわかりませんよね。
そこで、毎月同じ金額、たとえば10万円ずつ日経平均を買っていきます。
この場合、「毎月同じ金額」というのがミゾで、株価が安ければたくさん買えて、株価が安ければ購入する株数は少なくなります。
結果として購入する期間の平均的なコストで購入できることになるわけです。
投資期間において日経平均が右肩上がりであれば大きな評価益になりますが、右肩下がりであれば大きな評価損を抱えることになります。
ドルコスト平均法は魔法の投資手法ではなく、それなりの期間の間、株価が上昇することに賭ける投資手法であることに注意しないといけません。
実際に個人の方が投資するのであればETFを購入することになります。1321 NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信を月初に寄り付き、成り行きで購入することを考えます。
1321の株価は2024年1月4日34,240円、2月1日37,290円、3月1日40,810円、4月1日42,480円でした。
10万円で買える株数はどの月も2株なので手数料抜きでの投資額は68480円、74580円、81620円、84960円となります。
このように正確に10万円ずつ買えるわけではありません。
4か月間の投資総額は309,640円で持ち株数は8株です。今日、4月2日の終値は41,620円なので評価総額は332,960円、評価益は23,320円、評価損益率+7.5%、年率換算+22.5%となりました。
年初から日経平均はかなり上昇したので、大きな評価益を叩き出しています。
積み立てNISAではETFは買えない!
じつは積み立てNISAではETFは買えません!
SBI証券のHPには「国が定めた厳しい条件をクリアした長期投資に適している投資信託が対象」と書かれています。
日経平均の場合は日経平均に連動する投資信託を買えばいいのですが、任天堂のような個別株にドルコスト平均法で投資するには成長投資枠で購入する必要があります。
成長投資枠では国内ETFなどを含む日本株のほか投資信託やETFを含む外国株も対象になります。
証券会社にもよりますが、成長投資枠で買える投資信託は積み立て投資枠で買える投資信託の5倍くらいあります。
こういう「規制」をかけるの、日本のお役所は好きですね。
金融庁の資産運用シミュレーション
このページ、実は「NISAを始める前に」というところにあります。
毎月の積立金額と想定利回り(年率)と積立期間の3つの数値を入力すると最終積み立て金額が計算されるというものです。
もちろん、ページ上部に赤字で免責事項が書かれています。
【免責事項】
本シミュレーション結果は、ご入力いただいた項目に基づき算出した概算値です。手数料、税金等は考慮しておらず、実際値とは異なる場合があります。
本シミュレーションのいかなる内容も、将来の運用成果を予測し、保証するものではありません。
そもそも「将来の運用成果を予測」できないものは意味ないですよね。何のためのシミュレーションなの?と聞きたくなります。
単なる数字遊びでしかないということを金融庁は十分理解しているわけです。
金融庁の資産運用シミュレーションの大ウソ
このページに行くと毎月の積立額が5万円、想定利回り(年率)5%、積み立て期間 10年と初期値が入っています。これで計算すると最終積み立て金額6,987,071円、元本600万円、運用収益98.7万円となります。
100万円儲かりましたね!
本当に?
「最終積み立て金額」という言葉がミソなんです。
元本600万円が保証されています!
銀行預金なら元本は基本的に保障されています。日本国債もまずデフォルトしないでしょうから元本保証と言っていいでしょう。
日銀の「異次元緩和」は終了しましたが、金利はほとんどゼロ!
三菱UFJ銀行のスーパー定期10年物で年0.3%しかありません。5%の1/10以下ですね。
社債ならもう少し金利は高いです。たとえば光通信の第48回無担保社債であれば仮条件ですが、1.65%-2.25%です。
ただし無担保なので光通信が破綻するとほぼ全額、元本は返ってこないと思われます。金融庁のこのシミュレーションの前提とは異なりますよね。
それに毎月あるいは毎季節同じくらいの利率の社債が発行されないと積み立て投資にはなりませんし。
アメリカ国債ならもっと利率はいいです。既発債ですが、トレジャリーストリップス米ドル建 2045/2/15満期 ゼロクーポン債であれば参考利回り4.427%もあります。
日本と違って米国金利は変動しますが、まあ5%に近くなりました。
ちょっと待って! あなたは為替変動を忘れています!!
4月2日のドル円レートは151.63円。すごい円安ですね。
もし揺り戻しが来てドル円レートが140円になったとすると、米国国債の元本が100ドルで変わらなくても円ベースで8%も為替評価損になります。130円だと15%!
昔は1ドル100円なんて時代もありましたからね。
実現不可能な想定 = 大嘘
ということで、10年間元本が保証されて毎年5%の利回りで運用できる金融商品なんてない、というのが結論!
実現不可能な想定をしているシミュレーションって、大嘘といっても過言ではありません。
まさに、投資詐欺師がやるような手口。
このようなものをHPに掲載する金融庁も金融庁なら、それを無批判に紹介する経済評論家やテレビ局も詐欺師レベルということですよね。
本当はどうしないといけないのか
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