MAD SOXⅡ ~世紀末ヒャッハー会計士伝説~ VOL.3 J-SOX決定す
【この記事は事実を題材にしたフィクションです。特定の個人・団体とは関係ありません】
2004年日本
老舗監査法人X。もちろんビッグ4(米SOX法制定の契機となったエ〇ロン事件でBIG5の一角が崩れた)のアライアンスである。
「今日は最上席代表社員がお見えになる。各員、粗相のないように!」
「「ゼロ戦爺の来襲日だったか!」」
最上席代表社員は学徒出陣で海軍予備学生となり、特攻要員として終戦を迎えている。
本人は「確かにゼロ戦の操縦をしていたが、最後は乗る飛行機が無くなってしまった」と語る。
戦後は大学に復学、第一回公認会計士試験に合格している。
この第一回試験は合格率が低く、大蔵省を驚愕させてしまった。
米国公認会計士試験の合格率並を想定していた大蔵省は、公認会計士審査会と協議(諮った?)、
年2回の試験をおこなったものの、公認会計士の増加は鈍かった。
その補填というと語弊があるが、戦前の計理士制度(大学や一部の専門学校で会計学や商学、経済学を修めると取得できた)に基づく計理士を対象にした「特例試験」で公認会計士の員数を確保し、昭和26年から開始される財務諸表監査制度に対応させた、と、モノの本にあったようななかったような・・・。
このあたり、のちの昭和40年不況時の粉飾騒動に影響したとかなんとか・・。どこかの是理士さんが仰っていたような希GAS・・・。
「上席殿、こちらが改正商法関係になります」
「SOXを会社法がとりこんでくるとはな・・・。上場企業をターゲットにするなら証取法・・・いや、金商法になったか。当然そちらがメインだから金商法が先に出すと思っていたが」
「プレゼンスを示したいという法務省の執念でしょう」
「SOX法に相当する部分は362条4項6号で記述、施行規則で規定か。思ったほどではなかったか。或いは理解していなかったのか?」
「理解していないことは無いと思います。法曹界隈で有名なやり手検事が関わっているとの噂もあります」
「検事?刑法でなく商法に首突っ込んできたのか。それは良いとして、商法第二編会社をまるっと削除して、あらたに『会社法』か。条文も口語で整理してあるのは良いのだが・・・・ワシは『266条の3』とか条数で覚えているので、いまさら覚えなおすのはしんどいな・・・。そういえば会社の定義だった『営利社団法人』が消えているな?」
「『営利』について条文での直接言及はありませんが、営利性が否定されたワケでは無いと、パブコメに対するアンサーがあります」
「で、肝心の金商法だが、会社法に先を越された腹いせに、なにかトンデモないものを紛れ込ませてないだろうな?」
「経済界や我々監査業界の意見も容れて検討中ですが、グローバルスタンダートを標榜する政治的圧力もあるようで、固まっていない状態です」
結局のところ、会社法は2005年6月に成立、2006年5月より施行された。
通称で「内部統制システム」と呼ばれているが、条文上は「業務の適正を確保するための体制 」で、施行規則において整備すべき体制が規定されている。
遅れて2006年6月に改正された金商法に「内部統制報告書」制度が記述され、2008年4月1日以降に開始する事業年度から適用されることになった。これをいわゆる「J-SOX」と呼んでいる。
【続く】
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