思考力改善トレーニング ~クリティカルシンキングを身につけよう~ #MARPS
今までの経験の中で意思決定をした時に、合理的に物事を決めたはずなのにうまくいかなかった経験はないでしょうか。
人間の脳は、時折誤った決断をしてしまう働きをしてしまう事があります。そのような物事を考える上での「頭の落とし穴」について学び、理解することが正しい意思決定を行う上で重要になります。
今回の記事は、具体的な「頭の落とし穴」について学び、今後意思決定を行う際にその「落とし穴」にハマってしまっていないか省みる力を養う事が目的です。
この記事がおすすめなひと
・「思考力」を鍛えたい人
・物事を批判的にみる力(クリティカルシンキング)を養いたい人
・考える際の引き出しを増やしたい人
この記事を読んでわかるようになる事
・人間の頭にはさまざまな弱点があること
・時に、人間の脳は物事の因果関係を見誤ってしまうこと
・思考をきちんと進めるためには、「思考ツール」を身につける事が大切であること
はじめに
今回、講師をしていただいたのは「思考力改善ドリル」の著者である植原亮先生です。植原先生は、大阪府高槻市にある関西大学総合情報学部で教鞭を取られています。
講座の内容
1:スキーマとその呪縛
「スキーマ」とは、問題を効率的に解決するための枠組みのことです。
日常生活でも無意識にこの「スキーマ」を活用することで容易に物事を解決しています。
例えば、レストランでの一連の行動です。私たちは、レストランに入ってから、メニューを開き、注文をし、料理をすませ、会計をするということを難なく行っています。これは、レストランでのスキーマが身についているからです。いちいち、何のためにメニューがあり、どうやって注文や会計を済ませるのか考える人はいないでしょう。
しかし、「スキーマ」は人の思考をさえぎり、ものの見方を制限してしまう働きもします。下記の例題を確認してみましょう。
皆さんはどのように考えたでしょうか。
この問題を考える上で、一番大切なのが一番もっともな理由つまり合理的な理由である事です。
中には、「満員電車で譲れる状況じゃない」や「みんな疲れていて譲る気になれない」等の回答もあると思います。
ここでの一番もっともな理由は「席が空いていたから誰も譲ろうとしなかった」です。また、「指定席だったから」という回答もあげられます。
この例題を見た際に、頭の中で勝手に混雑している車内の状況を想像してしまうことを「スキーマ」といいます。一旦、「スキーマ」にハマるとそれ以外の考えが浮かびづらくなることが理解できましたでしょうか。
2:利用可能性バイアス
続いて、下記の例題を一緒に確認してみましょう。
直感的に連想しやすい屋外(川辺での溺死)を想像した人も多いのではないでしょうか?
正解は、屋内(お風呂での溺死)になります。
なぜ直感的に川辺での溺死を思い出しやすかというとニュース等でよく見かけるからです。実際には、お風呂での溺死の方が件数的には多いのですが、ニュース等で見かける機会が少ないためこのような誤認をしてしまうケースがあります。
このように、ニュース等で直感的に思い出しやすいことを多く見積もってしまうこと「利用可能性バイアス」といいます。
他にも「利用可能性バイアス」の影響が多く出た事例として世界同時多発テロ後の移動手段の変更があげられます。
世界同時多発テロ以降、飛行機に乗るのは危ないという心理が働き飛行機の利用者は減り、代わりに車を移動手段として使う人が増えました。
本来は、飛行機での移動より車での移動の方が死亡率は高いのですが、政界同時多発テロのような大規模なニュースにより危険性を車より大きく見積もってしまった事例です。
3:因果関係
そもそも、因果関係とはAが原因でBという結果が起こる関係のことを言います。
人間は因果関係を見出すのが得意ですが、得意ゆえにほとんどどんな事象に対しても因果関係を見出してしまうという落とし穴がある。
因果関係を考える上で大切なのは、本当にAが起こらなければBという結果が起こらなかったのか確認する事です。下記の例題を見てみましょう。
皆さんはどう考えましたでしょうか?
テレビの視聴時間と肥満の関係には一種の相関関係はあるかもしれませんが、因果関係があるとは言えなそうです。
というのも皆さんの周りにもテレビの視聴時間は多くても痩せていて健康的な人はいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、テレビの視聴時間が長い→夜更かしの頻度が多い→夜に間食をしている→太りやすいという傾向はあるかもしれませんが、直接的な因果関係を見てとることは難しく思います。
このように人間はある種の相関関係を因果関係として結びつけてしまう弱点があるので、「相関は因果を意味しない」という思考ツールを頭の中にとどめておく事が物事を考える上で必要になってきます。
4:対照実験
科学の重要な仕事の一つは原因を正しく突き止めることです。
この原因を突き止めるのに行う実験のことを対照実験と言い、条件として調べたい条件一つ以外は全て揃える事が大切です。
この状態で対照実験をした時に、結果が出た場合にのみ仮説を立証できることになり、対照実験は因果関係を特定する強力な「思考ツール」です。
お仕事の中で、因果関係を特定する際にA/Bテスト等を活用するケースも多いと思いますが、厳密には条件を全て揃えられているケースは少ないのではと思います。
結果を見て因果関係を決めつけるのではなく、本当に因果関係があるのかという批判的思考(クリティカルシンキング)で見てみることで気づいていなかった新たな因果を発見できることもあります。
まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございます。
例題を通して知らないうちに脳の「落とし穴」にハマっている感覚を少しでも理解していただけたら幸いです。
「落とし穴」を理解し、物事を適切に判断するための「思考ツール」を活用する事で一緒にいい選択を行なっていきましょう。