『マーケティングつながる思考術』連続講座③~動画を作れば売上は増えるのか?~
SNSが普及してからよく見かけるようになった動画広告ですが、動画広告は生活者の購買に直接影響しているのでしょうか?
今回は動画マーケティングにおいて起こるマーケティングの医療ミスの原因を解説させていただきます。
この記事がおすすめな人
・動画マーケティングでCPAを追い求めてしまっている人
・上司やクライアントから動画マーケティングでCPAが上がらないことについて叱責を受けた人
・マーケティングにおける動画の得意・不得意を整理したい人
この記事でわかること
・動画の得意・不得意について
・動画マーケティングにおけるCPAの考えかたについて
・動画マーケティングにおける正しい目的設定について
講座の内容
はじめに
マーケティングをやられている方は、「動画マーケティング」という単語をよく耳にすると思いますが、「動画マーケティング」とは一体何を指すのでしょうか?
動画はテキストや画像と同じように単なるコンテンツフォーマットの1つにすぎないため、「動画マーケティング」という表現は正確には正しくなく、マーケティング手法において動画を活用するという解釈が正しいです。
動画の「得意なこと」・「不得意なこと」
動画の「得意なこと」・「不得意なこと」を考える前に、映像と動画の違いについて整理しましょう。
皆さんは、映像と動画の違いを聞かれたらなんと答えますか?
正解は、インフォメーションパータイム(1秒当たりの情報量)の違いです。
映像はインフォメーションパータイム(1秒当たりの情報量)が少なく、動画はインフォメーションパータイム(1秒当たりの情報量)が多いと整理する事ができます。
続いて、動画の「得意なこと」・「不得意なこと」について整理していきます。
動画は、テキストや画像に比べるとリッチに情報を伝える事に長けています。また、生活者が受動的に情報を取得することができる点も強みです。
一方で、動画は見終わらない限り動画自体の評価を行う事ができなません。同じくコンテンツフォーマットの一種であるテキストや画像は、生活者が瞬時に情報の取捨選択ができる強みがありますが、動画はそうはいきません。
このことから、日常的に多くのコンテンツを消費している生活者にとっては、動画は視聴するリスクが高いと言えます。
SNSの普及により生活者は日常的に多くの情報を処理するため、人類がどんどんせっかちに進化してきています。そのため、生活者は映像ではなく短時間でより多くの情報を含む動画を好む時代が来ているということを理解しておきましょう。
動画マーケティングで「できること」・「できないこと」
「動画マーケティング」は、テキストや画像では伝えることのできない立体的な情報を短時間で伝える事ができる点が強みです。また、テキストや画像では世界観や良さがなかなかイメージが湧きにくいものに対して、興味を喚起したり理解を促進する事が可能です。
ですが、動画マーケティングを行えば必ず生活者の興味・関心を獲得できるわけではありません。
そもそも、生活者は興味がないものに対する情報を取得しようとしないので、視聴してもらうことができない場合もあるということを押さえておきましょう。
一方で、「動画マーケティング」はテキストや画像で作るよりも時間やお金等の制作コストがかかります。そのため、テキストや画像等のマーケティング施策と比較した際に、短時間で施策のPDCAを回して改善していく事が困難です。
動画マーケティングとCPAの関係
そもそもCPA(Cost Per Acquisition/顧客獲得単価)を下げる方法は大きく以下の3つがあります。
①投下費用を下げて顧客獲得数を維持する
②投下費用はそのままで顧客獲得数を増加させる
③投下費用を増やしてより多くの顧客を獲得する
前述したように、「動画マーケティング」は制作コストが高いためCPAが悪化してしまうことは明白です。
では、「動画マーケティング」はマーケティング活動に貢献しないのでしょうか?
マーケティングの目的は、「お客さまに買っていただくこと」であり、そのために行うマーケティングコミュニケーションの目的は「お客様の意識や態度を変えること」です。
本来、マーケティングコミュニケーションの目的を達成するために目標(認知度や理解度の向上)があります。
一方で、現場では目標(認知度向上)を達成するための手段(再生数の獲得)が目的化し、売上に直結しない目標が設定されているケースが多くあります。
ここが「動画マーケティング」において医療ミスが起こる落とし穴になります。
動画マーケティングで注目すべき効果について
上の図は、仮に動画が10万回(10万人)再生されたと仮定したとき、ファネルの各段階にどれだけの動画視聴者が進んだのかを表したものです。
CPAを評価する場合は、購入に進んだ100人について一人当たりの獲得コストで評価することになります。今回の場合、仮に動画を制作するコストが500万円だとしたらCPAは5万円になります。
しかし、動画マーケテイングの効果をCPAで評価していいのでしょうか?
図を元にすると、30,000人が商品を認知し、5,000人が興味を持ち、2,000人が商品特徴を理解し、500人の購入意向の向上に寄与したことになります。直近のコンバージョンには繋がらなくても、これらの意識・態度変容はブランド資産になり将来的にマーケティング効果に寄与するはずです。
動画マーケティングにおける注意点
動画マーケティングにおける競合とは何でしょうか?
また、動画の最大の生産者は誰でしょうか?
正解は生活者です。
このことから、動画マーケティングにおける競合は企業だけではないと言えます。
現代は、生活者1人ひとりが動画の生産者となり可処分所得を奪い合っています。その中で、どのように生活者に動画を届けるかという動線の確保が大切になっています。
まとめ
「動画マーケティング」は、テキストや画像より情報をリッチに短時間で伝える事ができるという強みがある一方で、制作コストが高くなってしまうという弱みがあります。
制作コストが高くなるので、テキストや画像と比較するとCPAが高くなってしまうのは自明のことですが、現実には「動画マーケテイング」を行えばCPAを下げる事ができると勘違いしているケースがよく見られます。
「動画マーケティング」に限らずマーケティング施策を行う上で大切なのは、目的を達成するために適切な目標が設定されているかという点です。ここの目的設定が曖昧だったり、売上に直結しない目標が設定されていたりすると正しくマーケティング施策の効果測定を行う事ができません。
それぞれの施策の「できること」・「できないこと」を正しく理解し、「できること」を活かした目標を正しく設定することで、マーケティング施策における医療ミスも減っていきます。